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アーレンと仲間たちの旅は、へんてこな武器から始まった  作者: 凩冬馬


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第24話 霧の里にて

白雲山の神殿を出ると、

ひんやりとした空気が頬に触れ、

レムはようやく肩の力が抜けた。


「……すごい一日でした……」


思わず漏れた言葉に、

イオリがくすりと笑う。


「伯母上のお話は、いつもあの調子でござる。

なんだか心を見透かされるようで、

よこしまな考えを持つ者にとっては苦痛。

そうでなくても、慣れぬ者には、

少々刺激が強いかもしれませぬな」


「はい……正直、頭が追いついていません……」


二人は山道を下り、

ふもとの集落へ戻った。


友春の家に戻ると、

この陽気な叔父は二人の顔を見るなり、

ほっとしたように息をついた。


「無事に戻ったか。

イオリ、今日は泊まっていけ。

夕食の支度をさせよう」


「ありがとうございます、叔父上」


レムも頭を下げた。


「お世話になります……」


しかし――

友春の言葉が、当然ながらよくわからない。


(……あれ……?

さっきまで瑞穂さまの言葉は全部分かったのに……

東国語は……やっぱり難しいです……)


その違いに、レムはようやく気づいた。


(……あれこそが内響の力ですね……

瑞穂さまの思う“意味”がそのまま伝わってきていたから……

言葉じゃなくて、心で理解していたんだ……)


自分の中で、

“言葉”と“意味”の境界が揺らいでいく。


夕食は温かい汁物と山菜の煮物、

それに例の白雲名物の干し魚が添えられていた。


「レム殿、これは白雲の名物でござる。

瑞穂さまは苦手と言っておったが、

拙者は好きでござるよ」


「そ、そうなんですか……

(……けっこう匂いが強い!これは、まるで……)」


はじめて出会った味と香りにレムは戸惑った。

その様子をイオリと友春はいたずらっぽい目で見ていた。


イオリと友春は久々の再会を喜び、

昔話や近況で盛り上がっている。


レムは二人の邪魔をしないよう、

そっと席を立った。


「では、僕は部屋で少し整理をしてきます」


友春が穏やかな顔でレムをみた。

「うむ。今日は色々あったろう。

ゆっくり休むがよい」


用意された部屋に入ると、

レムは机に向かい、

今日の出来事を一つずつ書き出し始めた。


「……武器の由来……

地底人の歴史……

内響という魔法……

鬼の一族のこと……」


書けば書くほど、

頭の中が整理されていく。


(……残る謎は、地底人の本当の狙い……

どうして僕たちを襲ってくるんでしょう……)


これまで何度も襲撃を受けた事実を考えると、

敵対的な地底人が動いている可能性は高い。


(……瑞穂さまが言っていた“弱点”……

…光…音…匂い…

もしかしたら、地底人にも通じるかもしれません……)


レムは顔を上げた。

「……よし。

試してみる価値はあります。

道具を作ってみましょう……!」


その瞬間、

レムの中で“技術屋の血”が騒ぎ始めた。


(……考えているだけじゃ何も変わりません……

できることから始めないと……)


こうして、

レムの“個人研究”が静かに始まった。


しばらくして、

イオリが部屋に戻ってきた。

「レム殿、そろそろ――」


声をかけかけて、

イオリはふっと笑った。


レムは机に突っ伏したまま、

静かに寝息を立てていた。


「……よほど疲れておったのでござるな」


イオリはそっと布団を整え、

レムを寝かせてあげた。


「ご苦労でござった、レム殿」


灯りを落とし、

自分も床につく。


霧の里の夜は静かで、

何事もなく更けていった。

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