第22話 地底人の予言
瑞穂は頷く。
「本来、神官の力とは、
自らの体に流れる血に刻まれた記憶を読み取るもの。
だが――」
瑞穂は武器をそっと持ち上げた。
「もしかすれば、
“他者の血”からも、断片的な情報を引き出せるかもしれぬ」
レムは息を呑んだ。
「そんなことが……」
「やってみる価値はありそうだの。
容易ではないし、危険も伴う。
だが、今はそれしか手がかりがない」
瑞穂は深く息を吸い、
両手で武器を包み込むように持った。
「……始める」
レムは息を殺し、
イオリは静かに見守る。
やがて瑞穂の呼吸が変わった。
集中が極限まで高まり、
空気がわずかに震えるように感じられる。
「……ふむ……」
瑞穂の声はかすかに震えていた。
「この血……一部は、
地底の民のものに間違いない。」
瑞穂は眉をひそめた。
「彼らの心には、強い焦りと……怒りがある。
何かに追われているような……
あるいは、何かを奪われたような……
ともかく強い恐怖で満たされておる…
同士討ちのような…
地上への渇望…
そして、太陽への羨望…」
レムの背筋に冷たいものが走った。
「では……彼らは地上に……?」
瑞穂はゆっくりと頷いた。
「間違いない。
地底の民は、すでに地上へ出てきている。
その目的までは読み切れぬ。
だが――」
瑞穂は二人をまっすぐに見つめた。
「伝説の“すべてを取り戻す”という言葉を、
もしも力で叶えようとする者がいるのだとしたら……
地上を征服するという発想に至る者がいても、おかしくはない」
レムは息を呑み、
イオリは静かに拳を握りしめた。
霧の里の静寂の中、
地底の影が、確かな輪郭を帯び始めていた。




