38.水晶のかけら
森の小道をエイミーと進んで行く。早朝の空気が木と土の香りをはらんでいる。
木の陰になっているせいか森の中では草の背が低かった。
「ここを右よ」
エイミーが、けもの道に入って行った。僕も後を追う。
しばらく歩くと水音が聞こえてきた。
「そろそろ着くわ」
森の木が途切れた先に小川が流れていた。
「この川の中や川原に時々水晶のかけらがあるの。上流に水晶の採掘地があるから流れてくるのね」
「そうなんですか」
僕はエイミーの説明に頷きながら、水晶のかけらを探し始めた。はだしになって川の中に入ると、思ったよりも水が冷たい。もう夏は終わったのだと感じた。
「あった?」
「まだ見つかりません」
中腰で水の中の石から水晶のかけらを探すのは、なかなか大変だ。
途中で立ち上がり、腰を伸ばす。
なんとなくエイミーに尋ねた。
「エイミーさんはなんで水晶のお守りが欲しいんですか?」
少しの沈黙の後、エイミーが答えた。
「……妹にあげるのよ」
「妹さんがいるんですか?」
「ええ。あの子、体が弱いから……」
エイミーはしゃべり過ぎた、という顔をして首を振った。
「そんなことより、さっさと探しなさい!」
エイミーと僕は、また中腰になって水の中の石に目を凝らした。
水の冷たさになれてきたころ、僕は透明なかけらを二つ見つけた。
「ありました!」
「私も見つけたわ!」
エイミーと僕は川原で足を拭き、靴を履いた。
拾った透明なかけらを、上りかけた太陽に向ける。
「うん。良い感じじゃない?」
「ありがとうございます」
エイミーは水晶のかけらを一つ僕の手に置いた。
「約束だからね。水晶のお守り、必ず作ってよ」
「はい。明日の昼間には渡せるようにします」
「じゃあ、明日の昼休みに工房に取りに行くわ」
「わかりました」
僕は三つの水晶のかけらを小袋に入れてカバンにしまった。
「帰るわよ。仕事に間に合わなくなっちゃう」
「はい」
僕たちは早足で森の入り口にもどると、そこで別れた。




