37.水晶のお守り2
「水晶のかけらが拾えるの?」
「ええ。探せばたぶん見つかるわ」
「水晶の守りをエイミーにも作るって約束したら、水晶のかけらをひろえる場所を教えてくれるの?」
「そうよ。どうする?」
エイミーが僕の目を見つめた。
「わかった。作るよ。だから水晶のかけらを拾える場所を教えて」
僕は一生懸命エイミーに頼んだ。
「取引成立ね。そしたら週末に……」
慌ててエイミーの言葉を遮る。
「それじゃ困るんだ。週末よりも前に必要なんだ。できたら明日にでも」
「昼間は仕事があるわ」
エイミーは肩をすくめた。
「そしたら、早朝か深夜に」
「深夜は危なすぎるから……早朝なら良いわ」
エイミーがあきれたような目で僕を見た。
「ありがとうエイミー! それじゃあ、明日の早朝でもいい?」
「随分急ね。……わかったわ。朝日が昇るくらいの時間に、街はずれの森の入り口で待ってる」
「うん」
僕は水晶のかけらが手に入るかもしれないと分かり、両手を握りしめた。
「もう、昼休み終わるんじゃない?」
「あ! 大変だ、帰らなきゃ。明日、必ず来てね」
「ええ」
僕はインクを手に、工房へ向かって駆けだした。
「ただいま戻りました」
「遅いぞ、メルヴィン」
デニスのいら立った声が響く。
「おかえり、メルヴィン」
ビルがにっこりと微笑んだ。
「ビルさん、インクです」
「ありがとう。机の上に置いておいて」
「はい」
僕はインクを置くと、店の表を掃除し始めた。
***
夜になり、自分の部屋に戻る。
寝間着に着替えてから『世界の理』を開き、水晶のお守りの作り方を確認した。
水は井戸で汲める。月光の当たる場所で魔力を込めるなら、作業をするのは中庭がいいかな、と思った。
「明日は早いし、もう寝よう」
部屋の明かりを落とすと、ベッドで目を瞑った。
***
浅く眠っては目を覚ます。何回か繰り返して、空がうっすら青みがかった色になった頃、僕は部屋を出た。持ち物はカバンとナイフだけだ。
足音を忍ばせて、まだ眠っている町の中を進む。
町を出たところにある森の入り口についた。まだ薄明るい程度だ。夜明け前の空気を吸い込んで伸びをしていると、エイミーが現れた。
「まったく。こんな早朝に待ち合わせなんて……私もお人よしだわ」
「ごめん。来てくれてありがとう、エイミー」
「さっさと行くわよ」
エイミーは森の中に歩を進める。
僕もナイフを片手に、エイミーの後についていった。




