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魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした  作者: 茜カナコ


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30.青のポーション

 昼の鐘が鳴った。


「メルヴィン、午後はどうする? このまま図書館にいる?」

「いえ、工房に戻って青のポーション作りに挑戦してみたいです。あ、でも僕、薬草を買うお金が……」

「お金なら心配しなくていいよ。僕の薬草を分けてあげる」

「そんな! これ以上迷惑をかけるわけにはいきません!」

 僕があわててビルを見ると、ビルは笑顔で首を横に振った。

「いいんだよ、メルヴィン。僕、メルヴィンが来てから弟ができたみたいで嬉しいんだよ」

「……ビルさん」

 微笑むビルを見て、僕は母さんから向けられた優しい笑顔を思い出した。


 広げたノートを片付けているとエイミーが声をかけてきた。

「帰るの? ノートの件、良い返事を待ってるわね。楽しみにしてるわ」

「……あまり期待しないでね」

 ビルはエイミーにそう言うと、図書館を出て行った。僕もビルの後に続く。


 工房に戻り、ビルと昼食をとった。食事の片づけをしてから、僕たちは調合の準備を始めた。


「僕、水を汲んできます」

 僕は井戸から水を汲み、作業所の水がめに注いだ。


 その間にビルがポーション二つ分の薬草を用意してくれていた。

 二つの窯に火を入れて、それぞれに鍋を置く。

 ビルと僕は並んでポーションの調合に取り掛かる。

ビルから薬草をもらい、僕は水の入った鍋にそれを入れた。

 

「ビルさんは青のポーションを作ったことがあるんですか?」

「ううん。一度挑戦したけど、上手くいかなかったよ」

「そうですか……」

 僕は無謀なチャレンジをしようとしているのかもしれないと不安になったが、やってみなければわからないと、自分を奮い立たせた。


 火加減に注意し、薬草と水の入った鍋に魔力を注ぐ。ゆっくりと混ぜていると鍋の中の湯が淡い緑色に染まっていく。


「問題はここからだね」

 ビルの鍋の中身も、淡い緑色になった。


 僕は魔力を注ぎ続けながら、鍋をかき混ぜ続けた。

 しばらくすると、ビルの鍋がゴポッと音を立てて、中身がはじけた。

「うわっ」

「大丈夫ですか?」

 僕はポーションに注入している魔力が途切れないよう注意しながら、ビルを横目で見た。

「うん、ちょっとびっくりしただけ。でも……青のポーションにはならなかったね」

 ビルの鍋の中には、濃い緑色の液体が残っていた。


 僕も失敗してしまうのだろうか? 少し不安になったけれど、頭を振って鍋に集中する。

 僕の鍋の中が、ぽうっと淡く発光した。

「メルヴィン! 成功だよ!」

「え……?」

 僕は魔力を注入するのをやめて、鍋を火からおろした。

 鍋の中身をろ過して、ビンに詰めた。


「……青いですね」

 僕はビンの中の液体を見つめた。ビルもビンに顔を近づける。

「たぶん、これ、青のポーションだよ。明日、父さんに確認してもらおう。……おめでとう、メルヴィン」


 ビルがこちらを向いた。こわばった笑顔から、すっとビルの表情が変わった。

「メルヴィン、ひどい顔色だよ!? 大丈夫!?」

「……ちょっと、クラクラします……」

 僕は台に手をついて、なんとか体を支えた。


「片づけは僕がやっておくから、メルヴィンは休んで!」

「でも……」

「いいから! また倒れちゃうよ!?」


 僕はビルの言葉に甘えて、自分の部屋で休むことにした。


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