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破滅した世界の内側で  作者: めーや
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対抗策

「ごめん桃華、私、何もできなかった…」


夕暮れ、混乱するクランメンバーを宥め帰ってきた桃華に状況を説明する。


「アイツ相手なら仕方がないよ。だから今は悲観的に考えず茜ちゃん達を助ける事だけを考えよう?」

「助けるって、覚醒者三人が全く歯が立たなかったんですよ?一体どうやってアレを倒すんですか」


何もできなかった自分に苛立ちが抑えられず怒気を含んだ声色で言葉を吐き捨てる陽介。


「元から人の相手は啓文さん達がやる予定だったんだし、仁との戦闘の話は彼等が合流した後に話すしかないでしょ」

「彼等だって本当に仲間か分からないじゃないですか!!あの時茜さんはあの場に居なかったから分からないかもしれませんが、あの野郎人格が完全に狂人のそれでしたよ!?俺達と接触した時は全部演技だったんですよ!啓文さん達だってそうじゃない確証は無いでしょう!?」

「でも私達だけじゃ対処なんてできないじゃん。どのみち彼等に助けてもらうしか道はないんじゃないかな?」

「それは……!」


自分達だけではどうにもならない事態である事など頭では等に理解できている。しかし己の感情が、魂が中々その事実を受け入れようとしない。


「勿論警戒する必要はあると思う、でも彼等を信じるしかないの。お願い陽介君、思うところはあるでしょうけど今はどうにか飲み込んで」

「…琴音さんまで……分かりました、ここで駄々をこねるのも馬鹿みたいですからね」

「ありがとう」


渋々といった表情で了承する陽介。


「でも魔法が使えなくなるのは厄介だからねぇ、何か対策を考えないと仁君を抑えきれずにまたジリ貧って事になるかもしれないし……カラクリとか分かる?」

「多分、魔力の陣取り合戦だと思う」

「と言うと?」

「彼の魔力が私の体に流れ込んで来て魔法の発動が阻害される感じがしたから多分、そう言うことだと思う」

「成程ねぇ……」


理論的には実現可能な力技だが、正直それが実現できるとは思えなかった。

そもそも体内と体外では天と地の差がある程魔力操作の難易度が変わる。体内では80%魔力を自在に扱い効率的に使用できたとしても体外に出るとその使用効率は格段に下がる。具体的には使う魔法や個々人によって差があるが、桃華の場合単純な魔力の操作となれば体内で95%、体外周囲五メートルなら55%、そして二kmで50%と言った感じで体外に出た瞬間使用効率はガクと下がる。

その為他者の体内に魔法を送り込むのは相当困難な事になるばかりか、特に攻撃魔法等を使わず身体強化などしか魔法を使わない茜の様なタイプのものは皆そうじて体内での魔力操作が上手いことがわかっている。


故に勿論魔力のステータスがFの者であれば桃華でも同じことができるだろうが、茜達覚醒者の魔法を妨害できるとは考え辛い。


「となると、何か魔法の発動を阻害するアイテムがあるか魔法あるか。仁の魔力のせいで使えなくなったって言ってたし多分魔法の方かな?」

「隠しステータス、何て可能性もあるんじゃ無いですか?」

「でもそれじゃあ魔力ステの存在意義無くならない?」

「[魔力]は魔法の威力でそれ以外に魔法の操作技術のステータスがあるんじゃ無いですか?」

「確かに、それなら魔力のステータスが低い茜ちゃんが体内での魔力操作が上手いのも納得いくかも?」

「いいえ、もし仮に[魔力操作]の隠しステータスがあるのなら、茜の魔力操作が体内に限って異常に上手いのはおかしくならない?」

「それも確かに…」


体内と体外で魔力操作のステータスが別の可能性も考えられるが、その様な細かい設定になっているかは疑問が残るところだ。


「じゃあやっぱり何らかの魔法で_」

「いや、そもそも考え方ステータスに縛られ過ぎてるのかも」

「どう言う事です?」

「私は体外で魔法を頻繁に使って茜ちゃんは体内で頻繁に魔法を使ってたんだし、ステータスなんて関係なしにキャラコンが上手くなるみたいに体が段々と魔力の操作に慣れていったんじゃ無いかな?」

「魔法を初めて使った人に差が現れる理由は?」

「才能があるかどうかの差でしょ。現に魔法の解読は努力も必要だけど才能にも大きく左右されるし」

「そうね。私は回復魔法、桃華は空間魔法、それぞれ個性があるのは当たり前だものね」


正体の掴めない魔法を考えるよりもよっぽどしっくりくる答えであったが、納得した直後正体不明の魔法があるよりも断然に問題がある事に気づいた陽介は思わず声を上げる。


「ってそれじゃあどう頑張っても対策できないじゃ無いですか!!」

「はぁ…。君は本当に馬鹿だな」

「はあ!?」

「一対一の陣取り合戦じゃどうにもならなくとも他第一ならどうとでもなるでしょ?現に茜ちゃん、ロリコン、琴音の順に魔力の阻害を行ったんだろうし」

「あっ…成程、以下に努力しようと才能があろうと多人数を同時に相手するのは難しいと」

「魔力を広げる範囲が広がれば広がる程魔力操作が難しくなるし、恐らくあってると思う」

「なら仁君相手は大人数の方がいいってことね」

「んー」


確かに仁に完封される事を恐れて大人数で相手するのが建設的ではあるのだろうが、それだと犠牲者が増える可能性が高くなる。

琴音がいるからそれなりに無茶はできるとはいえ死後時間が経てば蘇生は出来なくなる。

勿論、仁との戦闘で蘇生をする隙などありはしないだろう。


「あそうだ。この話するならやっぱり啓文さん達居た方が良いでしょ。連れてくるね」

「そうね、お願い」

「危険を感じたらすぐ逃げてくださいね」

「わかってるって」


啓文ならば大量の人形を召喚する事で物量の問題を解決してくれると考えその場から転移する。


「おや桃華さん。ちょうど良かった、実はついさっきアルラルト君を見つけたところなんだ」

「え?マジ?」

「うん!私が見つけたんだよ!」

「凄いじゃん比代理!今日は何食べない?何でも好きなもの作ってあげるよ!まぁ作るの私じゃないけど」

「ハンバーグ!」

「よし!後で私が琴音に話をつけといてあげる」


完全に頭から抜け落ちていたアルラルトの件だが、思いもよらず良い方向に転んだ様で自然と声が明るくなる。

とうのアルラルトは桃華に警戒している様だが、安心した様な雰囲気が隠しきれていない。


「それで、天秤のアルラルト君、君はどうしてこんな所にいるのかな?」

「お前、時間はあるのか?こんな所で時間を使って怪しまれないか?敵は都市の内部を隅から隅まで監視している。直ぐに戻ると仲間に伝えているのなら怪しまれん様に今すぐ戻れ」

「ふーん。おっけー、じゃあここは啓文さん達を連れて戻るけど、逃げたらぶっ殺してやるからな?」

「俺とてここに留まる事はできない。が、この周囲には居る様にする。だから行ってこい。良いか?絶対に俺を見つけたなどと口にするなよ?さもなくばお前ら全員死ぬ事になるぞ」

「了解。それじゃあ行こか、みんな」

「ああ。比代理、良いかい?絶対にアルラルトを見つけたとは言ってはいけないよ?いつも通りに、見つからなかった体で過ごすんだ。隠そうと無駄に喋ってしまうのも良くない。分かったかい?」

「うん!仁お兄ちゃんを助ける為だもんね!」

「ああ。それじゃあ転移をお願いするよ」

「いっくよー」


クラン本部に戻り対仁の戦闘を想定した作戦を練っていく。

夜にアルラルトに会いに行こうと思ったがあの口ぶりだと相当慎重に動いた方が良いのだと考えやはる気持ちを抑え後日、【三日後、アルラルトを暗殺した叛逆者とその一味を処刑する】という紙をくしゃくしゃにして啓文達とアルラルトへ会いにいく。


瓦礫の海へと転移をして魔力を広げアルラルトを感知する。


「来たか」

「無駄話をするつもりはない、早く話せ。一応言っておくが私は今すげぇキレんだ、つまんねぇ話ししてくれんなよ?」

「勿論話してやるさ。何て、ちょうどあの日も仁に同じ事を言ったな」

「あの日?」

「お前達が仁と会食した日だよ。あの後俺は仁とこんなふうに密会した__」



そしてあの日の夜の事を話す。

仁に話した事に付け加えて千咲に全てバレた事も、自分を逃す為に仁が犠牲になった事も、現状では千咲を倒す事が難しい事も全て事細やかに話す。

話を遮って声を出したい気持ちを居ても立っても居られなくなり助けに行きたい気持ちも何とか堪えて皆アルラルトの話を傾聴する。

やがて話終わったアルラルトへ真衣が真っ先に口を開く。


「仁は、平気なんですよね?」

「ああ、俺と言う身内の裏切り者が出た以上契約魔法が何かで首輪をされているだろうが命の補償はされていると思う。最も、実は死んでいてお前の仲間を誘拐した仁は骸の人形という可能性もなくは無いがな」

「っ!そんな、事…」

「ああ、そんな事はあり得ないよ。如何に魔力を自在に操れると言っても偉業までは扱えないとなれば、仁君を殺した時に発動される偉業によって起こる大地の脈動が起こらない事の説明がつかない」

「は?あの初日の鼓動はアイツの仕業だったのか?」

「ははは、驚いたかい?」

「ああ。そうか、それならまだ助ける余地はあるな」


問題は、千咲の力を封じる為の対価をどう用意するかだろう。

処刑を阻止しようと仁を倒そうとそれだけでは意味がない。千咲を倒す術を持たなければどの道皆殺しにされて終わるだろう。


「クーデター軍で用意できる対価はどれくらいだ?」

「あるわけないでしょ、こっちはアンタが居なくなったせいでただでさえキツかった暮らしがもっときつくなったんだから」

「なら賢者はどうだ?お前のインベントリの中なら相当の価値になるはずだ」

「そうだね。君が確かに僕等の味方なら全面的な協力はやぶさかでないし、仁が君は仲間だと言っていた……けど、悪いけど僕は彼程大胆に生きれない。まだ君が的である可能性を疑っているんだ」


契約の魔法を使われたのなら仁のあの暗号でさえ嘘の可能性があるし、そうでなくとも変に人の良い仁がアルラルトに騙されている可能性もある。

何時もの朗らかな表情は何処へやら、冷たい笑みを浮かべた啓文はアルラルトへ手を伸ばす。


「ならばどうすれば証明できる?俺はこの都市を__」


トン……とアルラルトの額に指を当てる。

何をしているのか理解できず固まるアルラルトだが、啓文の協力が無くては千咲を打倒できないだろうと考え黙って彼を見つめる。


次第に、啓文の魔力が可視化されるほど濃く周囲には漂い始めその一切合切がアルラルトの額へ向かってゆく。


「[瞑れ、汝の身は今より意味を無くし汝の命運は今より我言葉となる_


「な、何を…!?」


述べよ、静かなる日々に別れを告げ騒々しき世界へ其の身を堕とせ_


「そうか…これがお前の_」


(俺の全てが暴かれていく感覚がする……あぁ…抗うことができない。人類の末代を暴いたこの男前では、自らを隠す事などできるはずもない………!)


開け、万物の流転より解き放たれ汝の魂は今より永久不変の鉄と…]っと、このくらいでいいか」


啓文の偉業、[機械仕掛けの終末期]対象の全てを暴きそしてたった一つの命令の下動く機械人形へとその体を改変するもの。

魔法完成の暁にはアルラルトの体はただ一つの命令を実行する為の機械となっていたわけだが、その詠唱を途中で破棄する事によってアルラルトの存在そのものを除くだけにとどめる。

しかし、それだけならば正直もう少し前の詠唱段階でやめても良かったのだが、この先アルラルトが考えを変えたり諦めたりしないようギリギリまで詠唱し一つの命令を脳裏に焼き付ける。


「ごめんね、僕はちっぽけで臆病な人形なんだ。だから事が終わればこの魔法の効力も完全に無くなるから、少し我慢してくれるかい?」

「ああ、だがその代わりお前には全面的に協力してもらうぞ」

「ああ良いとも」


(正直、アルラルト君が仁君を巻き込もうとしなければ彼が捕らえられる事も僕が人形を対価として差し出す事もなかったのだし、アルラルト君には良い感情は抱けない。詠唱を最後まで唱えようとも考えた。それでも恩人を助ける為に全力を尽くすつもりだけど……分が悪いと感じたら躊躇も容赦もするつもりは無い)


今まで気が緩みすぎたと自分を叱り魔力を高める啓文。

仁は三人の為に、桃華は茜の為に、アルラルトは市民の為に、啓文は仁の為に、千咲は__の為に。皆、目的の為に手段を選ぶつもりはいないらしい。


役者は大方これで揃った。

準備期間は残り三日。

誰が死ぬか、誰が勝つかは分からないが、三日後に全てが決まる事は確かだ。


少々ややこしいですが、偉業というクエストの名前が[末代の代弁]でそのクエストを達成する為の道筋が魔法や技能となったモノの名前が[機械仕掛けの終末期]でクエストを達成した暁の報酬の様なものが[賢者]という称号なので、偉業関係の文字列は一人三つあるものと考えてください。

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