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破滅した世界の内側で  作者: めーや
28/35

これから

「……アイツに借りができたな」


エネミーが蔓延る住宅地の一角で一人呟くアルラルト。

自身のステータスやインベントリ内を確認するが何一つ減っていないところを見るに、インベントリ外に保管していたアイテムで精算の肩がついたのだろうと息を吐く。


(あの危機的状況からの脱出ともなれば相応の対価が必要かと思ったが、まぁ払う対価は少ないに越したことがないか。それよりもここからどうするかだ。俺を逃した罪でアイツがどんな事をされるか少々気掛かりだが、アイツを助ける為にもやはりこれからのことを考えねばな)


天秤の力によって千咲の力の範囲外には逃げられたが、近寄れば直ぐに感知されてしまうだろう。そうなれば転移魔法で一瞬にして捕まってしまう。

幸い都市からそう離れた位置に転移していないところを見るに、都市全体の監視を行なっている間はそう遠くまで感知できないのだろう。

この程度の距離であればエネミーを狩に来たプレイヤーに伝言を頼む事ができるだろうが、問題はそれを読まれて息のかかった者がアルラルトに接触してくる可能性があると言う事だろう。


「いっそ、記憶だけ残して天秤の能力で体と魔力の性質を変えるのも良いが…そうなるとあの女を止める為の対価を用意できなくなるな…」


天秤の力無しに都市の運営は難しい、ともなれば状況を変えようとクーデター軍も動くだろうし恐らく残された時間は少ない。

しかしこちらから動くのは難しい。


「はぁぁぁ………。もどかしいが、仁が何かしてくれるのを待つしかないか。インベントリがいっぱいな以上価値を高めることもできんし……ちっ!どこまで行っても役立たずじゃないか!!」


自分の無力さを嘆き地団駄を踏むアルラルト。

役立たずと自分を罵る彼であるが、千咲を止められるのはアルラルトしかいないのだ。適材適所、今やるべきことがあるとすれば激昂したその脳を冷やすことだろう。




<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<



「そうか。まさか仁が運営陣に加わるとはな……」

「どーするんですか!超まずいですよ!!あの仁相手じゃ流石に__」

「黙ってロリコン!そんな事みんな分かってるから」


クーデター軍と合流した啓文、比代理、真衣はクラン[聖女ちゃん信仰隊]の本部へ訪れていた。


「仁君相手なら僕の機械人形は相性がいいし、何よりきっと真衣君を傷つける事はしないだろう。だから彼の対処は僕等に任せて欲しい」

「そうか。まぁあの賢者がそう言うのならばアイツの事は任させてもらおう。だが、本当に二人で平気なのか?」

「仁君が僕等の相手をしてくれるのなら大丈夫だと思う。ただ僕等を無視して別の人を狙われたらどうにもできないかな」

「それは桃華に任せよう。仁とこの二人を結界に閉じ込めるか、別の場所へ転移させるか。どちらか出来そうな方で彼等の支援をしてくれ」

「了解」


仁の対処に目処が立ち少々場の雰囲気が和らぐ。

だがこれでは何一つ状況は好転しない。仁の現状を伝える必要は無くとも、どうにかしてアルラルトと合流したい事と仁よりも強大な敵がいる事を知らせなくてはならない。


(仁君は監視されていると言っていたけど……僕等も常時監視されていると言う事なのかな?いや、どのみち運営陣がクーデター軍の事を知っていた事を考えるに恐らくここは監視されているんだろう。じゃあどうすれば…)


「大変です茜さん!!」


一人の男性がノックも無しに勢いよく扉を開け中に入ってくる。


「客人がいるんだぞ、せめてノックくらいしろ」

「すいません、でもそれどころじゃ無くて」

「すまないな啓文殿。少々この者の話を聞いて良いだろうか?

「構わないよ」

「感謝する。で、どうしたんだ?」

「それが!アルラルトが突然居なくなったみたいでエネミーを狩ってもお金をもらえないんです!!」

「はっ…?」「えっ?」「へ?」


アルラルトの失踪。その衝撃的な言葉に皆声を漏らす。

勿論アルラルトの失踪を知らない体でいなければならない啓文も初めてしったかの様に声を漏らす。


(そうか、価値の交換がある以上アルラルト君の失踪自体は直ぐに知らせることができたのか。でも唯の失踪では無く何かからの逃亡であると言う事は分からない。そして合流しなければならないという事も)


「どういう事だ?」

「詳しくは知りませんけど、兎に角アルラルトが居なくなったみたいです!運営の上層部も事態の把握ができていない様であたふたしているみたいでして。もしかしたら暗殺された可能性もあるとか」

「はぁぁ……面倒だな」

「天秤が無いとなると都市の維持そのものもできないんじゃない?」


その見解は正しく、クーデター軍が掴んでいる情報だけでも、都市に使われている大量の水、魔力、電気、劣化補強資材など様々なものが天秤の力によって支えられている。

これ等が無くなって仕舞えば作物を育てる事は愚か、数日と持たずに水がなくなり大量の死者が出る恐れもある。


「だろうな。どれ程運営がこの状況に対応できる物資を溜め込んでいるかは定かでは無いが、そう遠く無い内に暴動が起こる可能性もあるな」

「それに乗じてクーデターをするって事でいいんすか?」

「それでは成功しても結局皆死ぬ運命は変えられん。アルラルトが殺されていれば元も子もないが、生きていると信じて早急に探し出すしか無いな」

「あーその事なんだけど」


目をつむり薄紫色の髪が一切揺れる事もなく集中している桃華が桃華が言いづらそうに口を開く。


「何だ?」

「この都市に幾つか私の魔力が侵入できない場所があるんだけど、それ以外の場所には全くアルラルトの魔力が感じられないんだよねぇ……」

「では桃華の魔力が侵入出来ない場所を片っ端から当たれば見つかると?」

「いや、その侵入出来ないとこって運営直轄の場所なんだ。もし運営陣もアルラルト失踪に本気で動揺してるんなら、そこにもいない可能性は高いし、いたとしたら数日でまた現れると思う」

「つまり、アルラルトが死んでいる可能性が高く、そうで無くとも数日奴が現れなければこの都市には居ないということか?」

「そゆこと。あぁ後、仁君の家にも魔力侵入出来ないんだけど…居ないよね?」

「勿論。後で確認してもらっても構わないよ」

「悪いけど、確認だけはさせてもらおうかな」


(いいね。恐らく都市運営の誰かから逃亡していると言うのは間違いないだろうし、この町の運営直轄部に居ないとなると十中八九外にいるという事だろう。そしてそこは恐らく監視の届かない場所。もしアルラルト君を見つけることができれば仁君の事を話す事もできる)


「さて、では水と食料の確保を最優先に事を進めていこう。桃華は一応都市の外を探してくれ」

「了解」

「ああ、それなら僕も一緒に行って良いかな?僕の機械人形は空を飛べるから人探しにはうってつけだし、仁君と戦う事になるのなら人形を動かす練習もしたい」

「分かった。であれば外の捜索は桃華と啓文殿と真衣さんに任せよう。陽介は皆にアルラルトの件を知らせてこい。私はここで詳しい指令を書き起こす」

『了解』


クラン本部を出て、アルラルトが居るかどうかの確認の為に桃華と共に家へ帰る。

もう当分戻る事も無いだろうと思っていた為少しばかり変な気分になった啓文だが、この先何があるか分からない以上きっと事も上手く進むとポジティブな思考に切り替え暗い表情の真衣に話しかける。


「彼と戦うことになると思うけど、真衣君は大丈夫かい?」

「うん、それは大丈夫なんだけど…。どうして何も言わずに出ていっちゃったのかなって、私も連れて行って欲しかったなって思っちゃうんだ……」

「そっか。ごめんね、実は僕が仁君に真衣君と比代理をそっちに行かせるつもりはないって言ったんだ」

「え、どうして?」

「まだ彼と行動を共にしてそう時間が経つ訳じゃないんだけど、違和感を感じたんだ。良くも悪くも正直な彼が、いつに無く緊張しているというか、動揺しているというか。そんな彼の雰囲気にきっと彼が話していることは本当のことでは無いのだろうと思ってね。一緒に運営陣について欲しいって言わない以上、きっと彼としては僕等には別の事をして欲しいんじゃ無いかって思ってさっきの言葉を口にしたんだ。そしたら少し安心した様子で『そうか』って言ったから、何故自分の口で言わないのかは分からないけど、きっとこれで良いんだと思う。だから真衣君、僕と一緒に仁君を助けてあげてくれないかな?」

「私も仁お兄ちゃんを助けたい!」

「ああ、勿論比代理にも色んなことをお願いするつもりさ、みんなで一緒に仁君を助けてあげよう」


啓文の言葉に深く考えを巡らす。今持つ情報だけではその話に誤りがないか、正しくとも何をすれば良いのかも仁が大丈夫なのかも分からない。分からないが、考えるだけでは何もできない。


「うん、私も頑張る。とりあえずこのタイミングでいなくなったアルラルトって人が何か知ってそうだから」

「ああ、ひとまずはアルラルト君を探すのが最優先事項だろうね」

「私は何すれば良いのー?」

「比代理は後で双眼鏡を使って人を見つけて欲しいんだ、その都市の外でね。相当広く探さないといけないからきっと退屈だろうけど、できるかい?」

「頑張る!」

「そうか、ありがとう」

「話が終わったのなら早速外に行く?」


家の中の確認をとうに済ませて三人の会話を眺めていた桃華が声をかける。

彼女も啓文の話を聞いていたから仁がただ運営陣についた訳じゃ無いことは納得していた。


(でも、あの仁君が自由に言葉も喋れない状況ってのが引っかかるんだよなぁ。てゆーか、私が引っかかるんだから一緒に行動していた彼等もそう考えておかしく無い筈、となればパッと考えれる可能性は二つかな?一つは仁君そんなに強く無い説。でもこれは一度彼の戦闘を見た以上否定して良い筈。となるともう一つ、実は茶番説が濃厚かな?わざとこの話を私に聞かせて仁君が危機的状況である可能性を知らせたいんだとすれば、彼等がそこに引っかからない事も何となく理解できる。だけど、それだと仁君でさえも逆らえない存在がいることになるから結局否定したくなるんだよなぁ……)


「ああそうだね。何はともあれアルラルト君を探して出さないと何も出来ないから、急いで彼を探そうか」

「ええ、じゃあ飛ぶよ」


(ここまでアルラルトを探す出すのにやっけになっている所を見るにアイツが鍵なのかな?)


啓文の言葉全てに含みがあるものだと考えあるかどうかも分からない裏を読む。

その考えが的を射ているのだからこれから啓文もやりやすいだろうが…はてさて千咲が動くのが先かアルラルトを探し出すのが先か、見つけたところで千咲を殺せるかどうかは別問題ではあるが、見つけることがすら叶わなければ都市の滅亡は免れない。




<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<



「っはははははは!お前お仲間に振られた挙句にクーデター軍に行かれてんじゃん!!態々敵対しない様に忠告までしたのに聞いてもらえないなんて可哀想な奴だな!っはははは!あーダメ、笑い止まんないや」


様々な人体が飾られている悪趣味な部屋のベッドで笑い転げる千咲。

部屋の内装の割に悪臭がしないのはそう言った魔法をかけているからなのだろう。


「うるせぇ、きっとアイツも考えあっての行動だろ」

「へぇ?まぁいいわ。貴方には早速仕事をしてもらうつもりだから、さっさと体を本調子に戻しなさい。ペスティアの魔法を解いたとはいえ、病み上がりである事に変わりはないでしょうし」


今話に上がったペスティアの事について先程話を聞いたのだが、どうやら仁以外皆の魔法を解いたのちに引きこもっているそうだ。


「仕事って?」

「んー、まぁ誓いは立てさせたんだしこれくらいはいっか。誘拐と処刑。どつちも貴方にら簡単な仕事でしょう?」

「誰を?」

「クーデター軍の奴等が特に気に入っている子供をリストアップするからそいつ等を数人と、あの黒髪の覚醒者よ」

「何でまた。アルラルトから聞いた話じゃアンタは_」

「私のおもちゃの分際でアンタ呼びってふざけてるの?ご主人様って呼べよ」

「……ご主人様はクーデターを起こされるまで何もしないんじゃないのか?」


(ご主人様は言えて敬語は喋らねぇのかよコイツ…。いや、きっとこの馬鹿は敬語を喋る脳を持ち合わせて無いのね)


「状況が変わったのよ。あの天秤無しじゃこの都市は長く持たないの。物資不足で破滅何て味気ないにも程があるでしょう?だから多少見応えが無くなったとしても当初の計画を実行する為にクーデターを起こさせるのよ」

「んじゃあ何でよりにもよって脳筋戦闘狂を誘拐しないとなんないので?もっと簡単な手くらいいくらでもあるでしょ」

「あら?やっぱり女には手を出したく無いの?」

「そうじゃ無いけど、茶化さんといてよ」

「はぁぁ…普通に考えれば分かるでしょう?ゆっくり待っていたらアルラルトと合流して、何らかの方法で私を封じるかもしれない。そしたらあの女の馬鹿みたいに速い攻撃から貴方は私のことを守れるの?」

「無理っすね」

「アルラルトを近づけさせない様に紫髪の女でも良いかもしれないけど、足が無くなったらクーデター軍の動きも鈍くなりそうだから、あの女を殺すのが一番確実でしょうね」

「ただ殺すのもつまらないから、処刑日を伝えて公開処刑の準備を進めることで相手の逆鱗を逆撫ですると」

「そういうこと。っともうこんな時間…!私はお父様の所に行ってくるから、貴方はこの部屋で大人しくしていなさい」

「了解」


急いだ様子で出て行く千咲を見送り黒い高級感のあるソファーに深く座り思考を巡らす。


(俺にできることは何だ?今は何もできんだろうが茜達を誘拐すると時にアイツ等と話す事はできる筈だ。いやまて、何故アイツは自ら茜を攫おうとせず俺にやらせようとしているんだ?アイツの空間魔法なら茜を誘拐する事なんざ容易い筈……となれば罠か?俺が立てた誓いが果たして効力を発揮しているのか、俺の本心がクーデター軍と千咲どちらにつこうとしているのか確かめる為の罠なのか?であれば迂闊な発言は免れん。いや、ただ単に俺と啓文が争う光景が見たいだけの可能性もある)


様々な可能性を思い浮かべるが確信できるものは一つもない。情報が少なすぎるのだ。

ウダウダと考えを並べ続けても良い考えは一向に浮かばず、敵地とはいえ静かでゆったりとした空間でくつろぐ内、瞼が重くなるのを感じる。


「あぁ……そういや寝てなかったな…」


考えるだけ無駄だという結論をヤケクソに出しソファーへ横たわり目を瞑る。

すると直ぐに睡魔に襲われ、気がつけば意識を手放していた。


最後まで読んで頂きありがとうございます!!!!!

もし宜しければいいねやレビュー等よろしくお願いします!!!

何より次の話も読んでいただければ幸いです!!!!!!!!!!!

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