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破滅した世界の内側で  作者: めーや
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許せないもの

「勿論話してやるさ、だが何から話せば良いか分からなくてな」


静寂が包む真っ暗な劇場にアルラルトの声が響く。

魔道具によって完全な防音になっており尚且つ侵入者も即座に完治できるようになっているこの劇場での密会は、大胆に思えるも一応盗み聞きの心配はない様だ。


「は?それくらい考えとけよ」

「いや俺だって色々考えたぞ?だが余計な事を話していたら退屈で寝るだろう、お前」

「確かに。んじゃ聞きたいことを俺が質問するよ」

「頼む」


疑問に思う事を頭に思い浮かべる。

12席次の事、この都市の政策の事、この都市にある勢力図の事、そして何よりこの都市を救ってくれとはどう言う事なのか。


「メインディッシュは取っておくとして、まず12席次の関係性を知りたい。誰がお前の仲間で誰がやべえ奴なんだ?」

「そうだな… 12席次はその名の通り12人で構成されているんだが、その内覚醒者が5人、レベル150未満のプレイヤーが4人、一般人が3人の構成になっているが、俺の仲間と言える者は12席次には居ない」

「マジかよ」

「不甲斐ない事にな。派閥の様なものを作るとすれば、俺は十中八九一人になるだろうさ」


流石に最低でも12席次の中に一人二人は協力者がいるものだと思っていた為呆れからか思わず溜息がこぼれる仁。

アルラルトはその反応を予想していたのか気にする様子は無いが、内心では悔しく思っているのか僅かに手に力が入っている。


「それで、誰がお前さんの敵なのさ」

「12席次の中で一人のプレイヤーを除く覚醒者以外の6人は大して脅威ではないが、その一人のプレイヤーと覚醒者は警戒した方がいい。

覚醒者は俺、景虎、ペスティアの他にこの都市そのものを作った[発展のトーマス]ともう一人覚醒者である事しかわかっていない[小野田 秀人]という者がいる。

そして最も警戒しなければならないのが[小野田秀人]の娘である[小野田 千咲]だ」


(覚醒者でもないプレイヤーが一番の危険人物?しかも同じ12席次に自らの親もいるのに?反抗期か?)


「まぁ、お前にとって覚醒者ではないものは脅威に感じれないだろうが、コイツだけは別格に考えた方がいい。何てったって研究対象は魔力そのもの。アイツには一切の魔法も魔力を使用した技能も効かないのに加えて、それ等を一度認識されたら完璧にコピーされる。いや寧ろコピーした魔法を強化して扱う事ができるんだよ」


アルラルトの言葉を遮ってツッコミを入れたかったがそれを抑えて冷静に思考する様努める。

「はぁ…」と短い溜息で良くない感情を吐き捨てて言葉を紡ぐ。


「成程、そりゃ確かに覚醒者でも太刀打ちできそうにないな。だがそんなチートそのものの技能何の制約もなしに使えるのか?」

「ああ、恐らくだが制約は何もないだろうな。ただ、制限はある。俺等覚醒者の扱うことのできる[偉業]だけは無効化もコピーも出来ない様だ」

「それ以外はできるってことは、そいつの偉業は他者の偉業の完コピか何かかね?まぁ余談は置いといて…景虎が言っていた魔法を使うなってことはこの事だったのかもなぁ」

「景虎が?」

「ああ、以前あった時魔法は一歳使うなって念を押されてな。まぁ、無視してその後直ぐに使ったんだが」

「そうか……」


(もし景虎もこちら側なのだとしたら…)と思案を重ねるが結局は同じ事。手の内を晒した覚醒者など何人いようが有象無象に変わりないと結論づける。


「んで、結局のところお前以外の12席次は全員お前の敵なのか?」

「ああ、皆小野田娘を恐れて歯向かおうとはしない。階級制度をつくった残虐な性格と相まって皆アイツの駒使いそのものさ。俺も同じなのだがな…」

「小野田父は?親なんだろ?親でも制御できねぇのか?」

「無理だな、どっちも頭が狂っているのか娘が何をしようと咎めることはない。しかし親子中は悪いどころか娘からは慕われてる様に見える」


残虐な性格と明言している以上、千咲(小野田娘)がこの都市の実権を握っており歯向かえば拷問でもされる為誰も進言する事はなく、その能力から武力行使にも移れないと言う事なのだろうが…。


「ふぅ〜ん…んじゃあ歯向かえないだけでお前以外の12席次も小野田娘に不満を抱えていると?」

「いや、頭を垂れる者には寛容な性格でな。俺が見た限りでは誰も不満を抱えている様には見えなかった。もっとも、不満を隠しているだけかも知れないが……その可能性を考えても皆奴の言葉には本気で賛同している様に見える」


(景虎の事とコイツがポンコツな事を考えればまだ分からないが……まぁ、戦力は少なく見積もった方がいいか)


「んじゃあその小野田娘にフォーカスするとして、ソイツの目的は何なんだ?この都市を救ってくれってのはソイツから救えって事なのか?」


仁の言葉に即座に反応する事はなく、一呼吸か二呼吸か、少しの間を開けて重々しく口を動かす。


「アイツは…この都市を滅ぼす気だ」


(そうか、滅ぼすか。まぁストーリーのボスは大体この目的を持ってるよな、うん)


「いやいや馬鹿じゃねぇの!?何の為にそんな事するんだよ何の為にこの都市を運営してきたんだよ!」

「俺にも奴の思考など理解できんわ!ただ、恐らく相当な人格改変を食らっているのだろうよ」

「それで納得できるかアホ。そもそもその魔王じみた考えは本人が言っていたのか?それとも言動から察したのか?」

「明言していた。理由も方法も教えてもらえなかったが、近々この都市ごとこの都市に住む者を皆殺しにすると言っていた。が、クーデター軍の様な反抗勢力が居なくては面白くないからあの者共は放置しておけとも言っていた」

「クーデター軍はその事知ってんのか?今日、と言うか昨日会った時にゃそんな話出なかったが…」

「知らせるなと釘を刺されているからな。12席次以外で知っているのはもしかしたらお前だけと言う可能性さえある」


ここまで話されると寧ろ何故アルラルトは逃げずに千咲を打倒しようとしているのかが分からなくなる。

勿論、逃げる事は出来ないのだろうがくだらない正義感など捨てて軍門に降る方が余程賢い生き方だろう。


「はぁぁ……そんで、近々っていつ?年内?」

「クーデター決行の日に起こすつもりらしい。そのクーデターが起こる日が近いらしくてな」

「いや待て、俺はアイツ等から色々情報を貰ったが流石に早々に事を構える事ができる程の戦力は……いや、そもそも本当の事を部外者にペラペラ話すはずもないか」

「ああ、そう言う事だ」


仁を仲間に迎えようとしたのは不安要素の排除と最後の一押しの為と言った所なのだろう。

アルラルトの発言が全て本当の事ならば仲間がいない割に敵は強大で時間もないと言う事になるが、アルラルトは一体どうやって破滅を止める気なのだろうか。


「それで、お前は俺にこの事を話してどうする気だ?」

「勿論、小野田娘を止める」

「この絶望的状況で良くそんな大口叩けるな。正気か?それとも人格改変に毒されすぎたか?」


その問いに少し考える素振りをして「そうだな」と口を開く。


「正気かどうかは置いておいて、人格改変の影響は相当受けているだろうな。俺は価値を生きがいに生きている。人が作り出す物、人の営み、人の欲、人の偉業に成功に失敗さえも価値だと俺は思うしそれ等全てが俺は大好きだ。少々悍ましくあろうとこの都市で必死に生きようとする人間に俺は価値を感じている。決して滅んだ世界に価値を感じれるとは思えない。だから俺は守りたいんだよ。全部俺の為さ偽善だと笑ってもらって構わない。だがこの都市に住む者達を救いたいと考えているのは本当の事だ。救う為に俺は全てを賭けるつもりでいる」


感情の乗った明らかな本音。

熱く語られたアルラルトの言葉を笑おうとも思えないし呆れるつもりも無いが、それでも理解する事は出来なかった。


(俺もアイツ等を人質に取られればこう熱くなれるのかねぇ…?)


「おーけー、お前さんがマジなのは分かった。だがどう止める気だ?魔力そのものを無力化して一度認識した魔法を扱えるってんなら現代兵器で蜂の巣にしても聖女の魔法で復活しやがるだろう?いやそもそも傷すらつけられんか。兎も角俺も魔法を晒しているし勝てる見込みがあるのか?」


魔法や魔力技能が使えなければ大半のプレイヤーと言えど一般人同然。それに加えて相手は魔法を使えるのならば赤子と大人以上の力の差があると考えて差し支えないだろう。

これ程の力量差ならば、もしこの都市に住む者全員で千咲と戦おうと勝てる見込みはないだろう。


「俺の偉業は知っているか?」

「あー…[価値の売買]だったか?詳しくは知らんが」

「ああ、ゲームで定められた価値を基準に、こちらで用意したモノと同価値のモノで有れば物品でも称号でも技能でも何でも交換できる能力をもつ天秤を、俺のレベルと余剰経験値と所持アイテムと称号とあらゆる技能を対価に交換する。それが俺の偉業だ」


(何でも交換できるねぇ…)


「つまり、お前が溜め込んだ莫大な価値を元手に小野田娘を殺せる技能を手に入れるって所か?」

「それができればよかったのだが、残念ながら俺が溜め込んだ価値ではピクリとも天秤が動く事はなかった」

「ダメじゃん」

「だが、一瞬奴の力を封じる事は出来そうだ。まだ足りんがな」

「成程ねぇ……後どれくらいだい?」

「そうだな…順当に行けば後三ヶ月も有れば_」

「そんな時間あんのか?」

「………。」


クーデター軍がいつ事を起こすかは分からないが、仁としては三ヶ月も時間があるとは思えなかった。

それはアルラルトも同じであり、何より仁よりも正確な情報を掴んでいるアルラルトは恐らく大晦日辺りに事を構えるつもりであると踏んでいる。


「そこでお前の力を借りたい」

「俺に小野田娘を殺して欲しいって話かと思ってたが、クーデター軍の戦力を削いで時間を稼げって話だったのか」

「ああ。お前ならば一人でクーデター軍とやりあえるだろう?」

「まぁ殺し合いをするってんなら頷けただろうが……流石に覚醒者4対1、しかも攻守共に隙のない奴等相手となると殺さずに牽制ってのはリスキーだな」

「賢者の力を借りれないか?」

「借りれるだろうが借りんぞ。アイツ等は早々に逃すから、俺がいない状態で啓文の戦力を削ぐ事はしたくない」

「そうか…いや、つまりお前は手を貸してくれると?」

「ああ、面白そうだからな。それに俺が殺せない奴が居るってのも気にくわ_」

「そうか!!手を貸してくれるか!!!」

「うるさいわ阿呆!急に騒ぐな」


仁の言葉が余程嬉しかったのか立ち上がり声を発するアルラルトに殺気を当てて怒鳴る。

戦闘が得意でないアルラルトからすれば仁の殺気など多少の者でも恐ろしく思えるもので、一瞬に脳が冷めるのを感じる。


「だがこのまま当たるのは避けたい」

「他の手を考えるか」

「いや、俺が暴れて色んな奴から色んな物をぶん取るからそれを元手に俺の装備を作り出せ。出来んだろ?お前の天秤なら」

「植物魔法と親和性の高い装備となると少々高くつくと思うぞ」

「作れるんだら構わん。どうせ俺は1円も出すつもりはないからな。いや待て、俺が巻き上げた価値をお前に渡せばクーデター軍と事を構える事なく小野田娘の対抗策を交換できるんじゃないのか?」


確かにそうかもしれないと顎に手を当てて考えるアルラルト。


「無理だな」

「理由は?」

「まずこの都市で価値の高いものと言えばその殆どがインベントリに入るものだ。巻き上げると言ってもインベントリに隠されて仕舞えば恐らくそう多くは集まらない。時間をかければ可能かもしれないが、その間にクーデター軍が事を起こさないとも限らない。小野田娘の気まぐれで大量の人間を公開処刑する事もあるクソッタレなこの都市だ。何かのイベントが起きた際に我慢ならずといった様子でクーデター軍が武器を手に取る事があるかもしれない」

「そうか。んじゃあまぁ、死ぬ気で頑張りますかねぇ…」

「すまんな」

「そのかわり絶対に止めろよ。さっきは面白そうだからとか抜かしたが、真面目な話この都市が日本最後の都市って事もありえんだ、俺も流石に完全な終末世界でアイツ等に生きて欲しいとは思わないからこの都市にはまだ滅んでもらいたくないんだよ」

「わかった。小野田千咲は確実に俺が殺__」


その言葉を言い切る前に、視界が切り替わった。

視界だけではない。鼻につく鉄臭さや腐乱臭、耳に響く苦痛に呻く声、毛が逆立つ程の冷気。

豪華絢爛と言う言葉を再現したかの様な圧巻の劇場は何処へやら、

無惨に殺された者の死体に酷い(むごい)拷問を受けてなおか細い呼吸を続ける者、壁に机に飾られた拷問器具を見るにあの者の部屋へとソファなどの周辺の物品ごと転移させられた事を悟るアルラルト。


いつ悟られた?奴は何処だ?これからどうする?と思考が駆け巡るもいい案は一向に浮かぶ気配がない。


「よぉアルラルト、と…ガキに告られてた他にも色んな女と楽しそうにしてる方向音痴ハーレム野郎君」

「小野田…千咲……」


真っ赤な長髪に人を小馬鹿にした様に吊り上げられた目、記憶に新しい容姿のその女は……数時間前仁を劇場へと案内した者であった。


(コイツが小野田千咲ねぇ…つーことは俺等をここに連れてきたのは桃華からパクった空間魔法であの時何の気配も無しに現れたカラクリもこれか。そんでもって魔力が体外に出た瞬間溶ける様に消えるせいで魔法が使えねぇし何なら気を抜いたら体ん中も奴の魔力に支配されんなこれ………うーん、詰んだかね?)


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