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破滅した世界の内側で  作者: めーや
25/35

密会

「ハックシュン!……あぁ…」


いかに病魔耐性を持っていようとくしゃみをする事はあるので普通であれば気にすることでもないように思えるが、先日ペスティアによって病魔耐性を無効化された話をされたのと、心なしか少々顔色が悪い様に思える仁に皆心配そうに視線を向ける。


「本当に大丈夫?うつすのも悪いし今日はクーデター軍の人と会うのやめれば?」

「私もそう思う。病気はつらいよ?」

「いや、誰に風邪がうつろうとどうでも良いし行く」

「いやいや、悪化したらどうする気なんだい?幾らプレイヤーと言えどあの病気は侮らない方が良いと思うよ」


以前免疫不全症候群を患っていた啓文からすれば仁の今の状態は凄く心配なもで見過ごせるわけがない。


「心配すんなって、やばくなったらペスティアに会いに行くしそれでダメでも幾つか奥の手はあるよ」

「それでも_」

「んじゃそろそろ行って来る。んじゃあな」


啓文の言葉を遮ってその場を後にしようとする仁。

引き止めたい気持ちはあるが言葉で納得させられる様子ではないし、仁が誰かに心配される事が嫌いな事もこの約一週間で気づいている為これ以上止める言葉が喉を通らない。


「「行ってらっしゃい」」

「……行ってらっしゃい。くれぐれも気おつけるんだよ?」

「んー」


それだけ言って家を出た仁が未だ心配そうな啓文に、真衣が気楽そうに声をかける。


「大丈夫だよ啓文さん。だってあの仁のことだよ?」

「彼の偉業を考えれば確かに死んでも大丈夫なのかもしれないけど…」

「それもあるけど、ほら仁って何だかんだ自分なりに色々考えてて何が起きても何とかしちゃうじゃん。多分私達に何も言わないだけで今回のも内心色々考えてると思うよ?」

「……そうだね。でも、その胸の内を話してくれないのは少しだけ寂しい気がするよ」

「あー確かに、でもそれもその内話してくれる様になるんじゃないかな?これから時間だけはいっぱいあると思うし、気長に待とうよ」

「そうな…?そうだといいね」

「きっとそうだよ。前向いていこう?ね?比代理ちゃんもそう思うでしょ?」

「うん!」

「ほら!」


啓文とは打って変わって明るい表情の二人に、自然と心が軽くなる啓文。


「ははは、そうだね。二人ともありがとう、少し元気でたよ」

「本当?良かった、パパは一回心配事するとずっと心配するから逆に心配になるってママも言ってたし私もそう思うから」

「へぇ、比代理ちゃんのママが?他にはどんなこと言ってたの?」

「ははは。良く覚えてるね、少し恥ずかしいなぁ…」

「他はね…!___」


今よりももっと幼かった頃、物心を持ってからほんの僅かの間しか接せなかった母親との話を、比代理は楽しそうに、されど何処か寂しそうに話し続けた。




<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<




「迷った……」


逃げる様に家を出たのはいいが13階層に移動して数分で迷子とかした仁。

先程までは人の多く行き交う通りにいたが今周囲を見渡しても人一人目につくことはない。


「真衣について来てもらうべきだったか」


今そんな事を考えても仕方がないととりあえず適当に歩き出そうとした時、「おい」と誰かを呼び止める女の声がした。

突然背後に出現した気配に警戒しつつ他に気配もないことから自分が呼び止められたのだろうと思い振り返る。

長い赤髪に少々鋭い目つきをしている大体170センチ程の身長をもつ得体の知れない女は、仁の顔を見るなり探る様な目つきから一変、まるで小馬鹿にする様な目つきをする。


(魔力が感じれない…?いや違う、この女に触れた魔力が溶ける様に消えやがるから感知そのものができないのか。12席次の奴か?いやだが話に聞いている残りの12席次で尚且つ覚醒者の中にこの女と特徴が似ている奴は居ない…となると12席次以外の覚醒者か…?)


「お前、道に迷ってんだろ。田舎モンみてぇにキョロキョロして見てられねぇから来てやったぜ?」

「そりゃどうも。そんなお前さんはクーデター軍の人間かい?」


『見ていた』『来た』という発言と気配が一切感じられず突然出現した事から桃華の空間魔法にてこちらを観察して出現したと判断したが「ちげーよアホか」と否定される。


「態々劇場でバッタリ出くわすとかいう体裁でお前と会おうとしてるクーデター軍の奴等がこんな所にノコノコ出て来るわけねぇだろ」

「んじゃあ誰なんだい?あぁ、俺は仁って言うんだ、どうせ知ってんだろうが一応な?でお前さんは?」

「は?するわけねぇじゃん。貴方って本当に間抜けなのね?そんな事より劇場に行きたいんでしょう?そのままアホ面晒したくなかったらついて来なさい」


妙に挑発的な態度だが案内してくれるというのならばついて行かない手はないので黙って女の後をついて行く。

途中話しかけてみようかとも思ったが、話しかけんなオーラが物凄く出ており頭に浮かんだ質問を聞けないまま賑やかな大通りの近くまで来てしまう。


「後はこの道をこっちに進んでけばお前が猿以下の知能しかない限り着くから。じゃあな」

「ああ、ありが…ってもういねぇし。マジで何者だよアイツ」


指さされた方向へ目線をやっている間にいつの間にか消えた案内人だが、クーデター軍に属していないと言う発言から空間魔法を使った訳ではなく、恐らく隠密に特化した魔法を使う者なのだろうがあの女に触れた魔力消えた事から何か引っかかる。


(まぁ、考えるだけ無駄か)


そう考え指さされた方向へ歩き出す。



劇場のスタッフに司祭階級のペンダントを見せると専用の席にまで案内してもらえ、二階中央の席に設置された大きなソファに深く腰掛ける。

いかんせん劇場に来たことなど殆どなく、慣れない空気感に少しソワソワした様子の仁だったが、聞き覚えのある女の声に一気に冷静になり魔力を高める。


「やぁ仁君、久しぶりだね?」

「久しぶり、桃華さん。そのドレス良く似合ってるよ、運営陣に情報筒抜けだったから衣装も小芝居も必要なさそうだけど」


「マジか…」と声を漏らしつつ仁と同じソファに腰掛ける桃華。

情報が筒抜けであるのなら今までコツコツ積み上げて来た計画も一変させねばならないと溜息を吐きたくなるが場に削ぐわはいだろうと住んでのところで抑える。


「情報筒抜けならいっそこのまま劇見ないで家に招待しても良いけど…どうする?因みに歓迎の用意とは全くできてないよ」

「いや、正直少しだけ劇を見るのも楽しみだったしこのまま予定通りでいいよ。名前は知ってたけど内容までは知らないんだよね。桃華さんはどう?さっさと家に帰りたい?」

「いや、私も実は久しぶりにこういう所来たからちょっと楽しみなんだ。仁君が、良いって言うならこのまま予定通りにいこうか」

「んー」


そのままクーデターの事については一切触れないように駄弁りながら時間を潰し、劇が始まるのを待つ。


どうやら桃華と茜と琴音は元から一緒に暮らしていた中で、その内桃華と茜は一流企業勤めで琴音は精神病を患っていた為専業主婦をしていた様だ。

人格改変の影響か精神病は回復している様子だが、いつ再発するか分からない為あまり強く接しないで欲しいというお願いもあった。


この都市が築かれて以降行動を共にする様になった覚醒者の陽介は、基本明るく場を和ませる者の様だが、世界改変前は社畜だった為鬱になりかけていた事もあってか余り人が好きではないらしく、また戦闘になると本人かどうか疑いたくなる程雰囲気が一変するらしい。


そして仁も真衣との旅やラグナロクの事、啓文と比代理との出会いを簡潔に述べる。


「それで茜ちゃんがね……っと、始まるみたいだし話の続きはまた今度。話っぱなしでごめんね?」

「いや、面白かったよ。続きが気になるくらいにはな」

「そう?なら良かった」


雑談もそこそこに幕が上がる。

内容については世界改変前と同じものだろう。しかし初めて知るその物語の内容は、昨今の日本の物語に見られる様な予定調和とは比べ少しだけ儚い様なほろ苦い様な結末に仁は概ね満足し劇は終わる。


「久しぶりにこういうの見るのも良いものだね。仁君はどうだった?」

「ん?おもろかった」

「えー、全然そう思って無さそうじゃん」

「いやいやテンションが上がる様な性格じゃないだけでマジで面白かったと思ってるぞ」

「本当に?まぁ良いけど。それで、どうする?色々グッツの様なものまで売っているらしいけど、見に行く?」

「いや、それには興味ない。劇はもう十分楽しんだし、茶番は良いだろ」

「OK、じゃあ転移するからその魔力場解いて」

「ん、ちょい待ち」


体内と自身の周囲に流動させている超高密度の魔力を消す前に、一つ小声の詠唱と共に魔法を行使する。



「[存在解放、春眠の誘い]……おっけい、解いたぞ」

「今の魔法は?」

「ん?そりゃ一度殺してくれた奴らのテリトリーに行くんだ。保険だよ保険」

「はははー、いやぁあの時は本当にごめんね?」

「別に謝る必要はないぞ?お前さん等がどう出ようと警戒はさせてもらうからな」

「ま、そうだよね。それじゃあ飛ぶよ?」

「んー」


仁の声が途切れた瞬間、眼前に広がっていた騒がしい劇場から静かなマンションの玄関へと視界が切り替わる。

酔いや違和感などは一切ない。元からそこにいたかの様にも思えて来る程自然な転移に感心して靴を脱ぐ。


「ようこそ、正真正銘私達が住む家さ。まぁ、住んでない余計なのも一人いるけどね」

「あぁ、もう一人の覚醒者…名前なんだっけ」

「藤田陽介。まぁコイツの事は覚えなくて良いよ」

「了解」


リビングへと続くドアを開けると食欲を刺激する良い香りが鼻腔をくすぐり、白を基調としていて明るさの際立つリビング、ダイニングの広々とした空間で顔見知りを含めた三人の覚醒者の顔が仁を除く。


「久しぶり、茜さん。それに初めまして、琴音さん(聖女ちゃん)に藤田陽介さん。今日はお招きありがとう」

「ああ、来てくれて嬉しいよ」

「初めまして、仁さん。クーデター軍こと[聖女ちゃん信仰隊]のクランリーダーをしてます一条琴音です。今日は来てくれてありがとね?」

「は、ははは、初めまして藤田陽介です自分は仁さんを殺した件に関して一切無関係です。殺さないでください」


随分と緊張している様子の陽介に「ぷっ」と笑い声をもらす仁と琴音と、呆れた様な表情の桃華と茜。

まぁ、本人からしてみれば全く笑い事では無いのだが。


「悪いな仁。コイツは人格改変でお前に怯えていてな」

「ああ、成程。悪かったね、でもまぁ、多少のペナルティはあれどあれも一つの遊び方だから勘弁してね?それと、確かに俺は一度そこの戦闘狂に殺されてるけど、別に根に持ってる訳じゃないから安心しな」

「わ、わかりました」

「敬語もいらないよ。年上でしょ?」

「…これで敬語使わなかったら印象落ちたりしません?」

「しねぇよ。寧ろ年上から敬語使われる方が嫌だ」

「…分かった、敬語はやめる」

「うん、いいね」

「さ、ポンコツは置いといて料理食べようぜ?作りたてらしいけどモタモタしてると冷めちゃうよ」

「うい」


豪勢な料理が連なった食卓の招かれた席に座る。

パン、肉、魚、サラダ、パエリアやパスタ。和食洋食中華。様々な料理が大きなテーブルの上に広がる。


「色々あんな」

「仁君の好みがわからなかったから兎に角色々作る事になったんだ。統一感みたいなのがなくていやかな?」

「まさか、俺はそんなに繊細な人間じゃないよ」

「お前が人間かどうかかは首を捻る所だがな」

「自分の事棚に上げてない?」

「はっはっは。それじゃあ食べようか、いただきます」

「そらしたなぁ…いただきます……」


各々食べ始めるかと思った仁だが、誰も手をつけようとせずに仁の事を見ているところを見るに反応待ちなのだろうと考え、気恥ずかしくなりながらもローストビーフを一枚口に入れる。


「どうだ?絶世の美女が作った料理だぞ」

「美味い」

「そっか、良かった。口に合わなかったらどうしようかと思っちゃったよ」

「私もローストビーフ食べよーっと」

「ああ、座ったままだと取りにくいだろう?皿を渡してくれれば俺が取り分けるから、何が食べたい?」

「どうも、んじゃあ適当に盛り付けて」

「何でも良いの?」

「ああ」

「了解」



上品に食べる琴音に肉ばかり取って物凄い速度で食べる茜。桃華にあれこれこき使われててんやわんやの陽介にその様子を見て愉快そうに笑う桃華。

このまま雑談と料理を楽しんでも良いが、まどろっこしいのはもう飽きたなと考え折を見て本題を口にする。



「で、クーデター軍の事についてだけど」


意表を突くように発せられた仁の言葉に四人が思わず動きを止める。

最大限もてなしたつもりではあるがどこか事務的な態度の仁に薄々悪い予感がしている為、本題に移るのが少々気のひけるのだ。


「悪いけど、結論を言うと俺はクーデター軍に加わるつもりが無い。まぁ、運営陣に囲われるつもりもないがな」


不幸中の幸い。そんな回答に各々落胆の表情が隠しきれない。


「…理由を教えてくれないか?」

「幾つかあるけど一番はメリットがない、もっと言うとモチベーションが湧かないからかな。それに加えてリスクが大きいように感じれる。やり合うとしても、やり合った後もね。まずそもそもアルラルト無しでどうやってこの都市を回していく気なんだ?」


仁の考える一番の疑問。アルラルトや覚醒者[トーマス]の技能を持って成り立っていると言っても過言ではないこの都市を、どうやって維持するつもりなのか。


「そうだな。まず生産技能を持った者はそれなりに確保できている」

「それとアルラルトの野郎に関して言えば、アイツの錬金術の技能はそんなに重要じゃ無くて、重要なのはアイツが[偉業:価値の売買]で手にした天秤のアイテム何だよね」


(価値の売買。成程ねぇ、恐らくありとあらゆる[価値]を別の[価値]へ変換することができるアイテムを作り出したのかな?アイツ)


「メリットと言ったが、お前は何が欲しいんだ?我々に出来ることなら最大限行うつもりではいるぞ」

「それなんだがなぁ…」

「あ、コイツみたいに女の子をモノ呼ばわりするのは無しで」

「え?」


思わず声を漏らし陽介の方を向いてしまう仁。


(陽介さんアンタ、言動に反して中々残忍な人なんだな)


「ちょ、違うよ!?そのくらいの覚悟が無いとダメだろうって話ね!?別に俺が本気で女性をモノだと思ってるわけじゃ無いよ!?」

「どーだか」

「おいやめろ人格破綻者…じゃなくて桃華さん」

「はぁ…悪いが二人のことは無視してくれ」

「おーけー。んで貰いたい報酬の件なんだが、俺が欲しいものはぶっ壊れた愛刀くらいで、一緒に行動してる他三人は知らんのよ」

「植物属性と相性のいい刀か…作れなくは無いが、お前が使っていた物のレベルを考えると…難しいかも知れないな」


[桜丸]の製作。この事に関してはクーデター軍にほんの少しだけ期待していたと言う事もありその分落胆してしまう。


「だが、お前という植物魔法のエキスパートがいるんだ。お前の協力があればいずれは作ることができると思うぞ」

「そうかい。だが残念ながら顔も知らん奴に期待を寄せて長い期間待てる程辛抱強く無いんでね」

「仁の仲間に私達の話は?」

「したよ」

「何か言っていたか?」

「都市の規模が規模だからクーデターによってもたらされる影響が計り知れないし積極的にはなれない。概ねそんな感じだな」

「そうか…」


仁が加われば血の無い武力行使でさえ行えると考えており、また双方に被害が出る形となっても優位に立ち回れると考えていた為落胆は大きい。

しかし元より仁が居ない時から準備をしてきた者達だ、戦いは激しくなるだろうが相応の準備はしてあるし何より「聖女]が居るのだ、元より死者を出すつもりは無い。それ程の自負はある。


「じゃあ逆に運営陣に味方しない理由を聞かせてくれないかな?ほら、俺等と違って本当に何でも準備してくれそうだろ?あっちの人達」

「それは確かに、あっちからもアプローチあったんでしょ?」

「まぁ、あったにはあったけど…あっちは純粋におもん無さそう(面白く無さそう)。利用できるもんは利用するけど、特別入れ込もうとは思えねぇな」

「成程ねぇ。じゃあさ、何があれば運営陣に属するのかな?」


(何が有れば、ねぇ……)


12席次の覚醒者とは何人か顔を合わせたがそれ以外の者達のことは知らないし、寧ろ運営の上層部は得体が知れない。ペスティアの様に子供っぽい者達で構成されているわけが無いだろうし、覚醒者だから12席次に属している訳では無い者達がどの様な者達か分からない以上何があろうと属する気には慣れない。

故に。


「万が一、俺より強い奴に脅されるなんて事がない以上、彼方さんにつくつもりわねぇな」

「じゃあ敵に回る心配も無さそうだね。不幸中の幸いってやつかな?」

「そうね、欲を言えばこちら側について欲しかったけど、今はこの回答に満足するとしよっか」

「そうっすねぇ…まぁ、俺としては敵意がない時点で泣いて喜びたくなる程嬉しいんだけど」


落ち込んだ雰囲気も緩和された辺りで、茜が「さて」と切り込む。


「これ以上この話はやめよう。折角仁と食事をする機会を得たのだ、最近また多忙になってきたし今日くらいクーデターの事を忘れて楽しもうじゃないか」

「さんせーい。劇場じゃ私ばっか話しちゃったし、今度は仁君のこと色々聞かせて欲しいな。あ、ポンコツ、お酒持ってきて、あるもの適当にいっぱい。仁君も飲むでしょう?」

「ああ、折角だし」

「ほう、因みにどんな酒が好きなんだ?」

「俺は………」




場も和やかな雰囲気を取り戻し、その後は夜中まで飲み続け最後は随分と打ち解けた様子で解散する運びとなった。

しかし、最後にもう一度桃華が仁にクーデター軍に入らないかと誘った所最後までその意思は変わらなかった。




「じゃあ家まで空間魔法で送るよ、ここ南西部だから実は仁君の家から間反対ですごく遠いしね」

「いや大丈夫。今日はありがとな、普通に楽しかったよ」

「こっちこそありがとう。夜中まで付き合ってくれたのに加えて酔い潰れた皆んなの介抱と片づけまでしてもらっちゃってさ」

「ははは、まさか聖女様があんなにも酒に弱いとは思わなかったよ」

「その割にお酒好きって残念な子だけどね」


アルコールが入って直ぐに眠りこけた琴音を思い浮かべて二人とも思わず笑いをこぼす。

少しばかり名残惜しい雰囲気ではあるが時刻は大体午前2時、仁からすれば少々居座り過ぎな為そろそろ帰らなければならない。

そんな仁に上目遣いで桃華が口を開く。


「あのさ、個人的なお願いがあるんだけど」

「ん?何?」

「…皆んながいる所じゃ言えないけど、私にとって茜ちゃんと琴音ちゃんは本当に大切な存在なんだ。もしクーデターで何があれば、その時はあの二人を守ってくれると嬉しいな。勿論私じゃ仁君が満足する物なんて用意できないんだけど…」

「ははっ、酒が入ると随分女らしい態度とるじゃん桃華さん。あの二人に万が一があるとは思えんけど、まぁ気が向けば手助けくらいはするよ」

「うん、ありがと」

「それじゃあな」

「バイバイ、また今度飲もうね」

「おう」


その言葉を最後に、仁の姿が霧の様に霧散する。

あの時言っていた保険とはこの事だったのだろうと一人で納得して、一人静かなリビングに帰る。


「仁君はあー言ってたけど、なーんか嫌な予感がするんだよなぁ…」



誰も居ない空間で一人ぽつんと呟き、杞憂だと信じて床につく。





<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<



(ははっ。魔力がゴッソリ持ってかれた上に満腹感もアルコールも全部消えたな)


真っ暗で静かな劇場の一席に魔法の能力で突如出現した仁。

劇場からならば家まで相当近くはあるが、それでも直ぐに家に帰るつもりは無い。


「待たせて悪かったな。居るんだろ?出てこいよ」


少し声を張り上げてそう口にすると、背後から近寄る気配を感じ取れた。


「よう、久しぶりだな」

「ああ、一週間ぶりだな、アルラルト」


もう一つの予定、クーデター軍との食事会よりも気になっていたアルラルトとの密会。

元よりこっちを待ち侘びていた仁は口角をあげてアルラルトの方を向く。


「さぁ聞かせてくれよ。あんな内容の手紙をよこしておいてつまんねぇ話じゃねぇだろうな?」


最後まで読んで頂きありがとうございます!!!!!

良ければ良いねやレビュー等よろしくお願いします!!!

また次回も読んでいただけると幸いです!!!!!それでは!!!

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