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破滅した世界の内側で  作者: めーや
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病み

「本当にここなのか?」

「ええ。正真正銘、ここがあのクソアマの根城です。さ、行きましょう」

「お、おお」


全面ガラス張りの超高層オフィスビル。世界改変前の仁には全く関わりの無かった別世界になんとも言えない感情を持ちながら入っていく。

外には警備兵らしき者等が等間隔で配置されていたが、その誰もが時折目線をむけてくるだけで止めはしない。

しかしエントランスへ入ると逆バニー姿の若い女に声をかけられる。


「ようこそおいでくださいました、仁様。私はペスティア様より仁様のご案内役を仰せつかっております[辻本 希]と言う者です」

「あそぅ、じゃよろしく」

「畏まりました。どうぞこちらへ」


女の姿に少々困惑しつつもどうにか目線を下に向かない様に務める仁と、緊張気味の月城。

希の案内の下エレベーターへ乗り上へ上へ上がっていく。

エレベーターの割に階層指定ボタンがついておらず数字を入力して階を指定する方式らしく正確な高さはわからないが、エレベーター上部に取り付けられたパネルに【next 40】と書かれていることからこのビルの大きさが伺える。


「なぁ、アンタは_『ピンポーン』_いや、何でもない」


希へ向けて質問をしようとしたが、目的の階に着いた為やめドアが開くのを待つ。

だだっ広い部屋に無駄に大きいベッドが一つ、天幕に隠れペスティアの姿を確認することはできないが、その中から聞こえてくる『クチュクチュ』や『チュパチュパ』と言った音を聞けば何をしているかは察せれた。


(ベッドの周りに散らかる服から最低でも四人…いや、全部同じ服だしペスティアのものではなさそうだな。となるとご本人あわせて五人か)


「おい変態。折角来てやったのに挨拶も無しか?」


仁の言葉にピタリと行為の音が止む。


「来てやったって、別に呼んだ覚えは無いけどね。まぁいいか、僕はペスティア。リアルで会うのは初めてだね?ジン。あぁいや、[原初の命脈]か、それとも[天命]のジンって呼んだほうがいいかな?」


[偉業:原初の命脈]

偉人レベルを6にする為に仁が成した偉業であり、啓文でいう[末代の代弁]にあたる。これは誰に知られようと特に気にする様な者ではないが、もう一つの[称号]は違う。

[称号]とは、何か特別な事を成したり、特別な物を手に入れたりすると運営から渡されるステータスの一種。大抵の場合[権能]と呼ばれる能力を有しており、覚醒者のこれはその殆どが強力なものである。


[称号:天命]

偉人レベルが6になった際に仁が獲得した称号であり、アルラルトでいう[天秤]にあたる。

[権能:天命]

[生命]を作り出す事に対してあらゆる補正がかかる。

[生命]の概念を持つモノ全てに対してあらゆる事柄が有利になる。

([生命]の概念を持つモノの例)プレイヤー、大半のNPC、アンデットを含む大半のエネミー、ダインスレイフなどの一部の武具やアイテム。など。

[生命]の概念を持たないモノ全てに対してあらゆる事柄が不利になる。

([生命]の概念を持たないモノの例)逸脱者、一部のNPC、[創作属性]のエネミー、大半の武具やアイテム。など。


「俺ゲーム時代でも世界改変後でも自分の称号口にした事ないはずなんだけど…何で知ってんの?」

「[賢者]に聞いたのさ。今は君と一緒に行動している様だけど、ゲーム時代じゃ少し絡みがあってね」


(啓文か…あの人の人形とは相性も悪いしとことん厄介な人だな……)


「それで、一体何しに来たのさ。まぁ、伽夜ちゃんを見れば大体察せれるけど」

「弟を…いえ、貴女の魔法で苦しむ全ての人を解放してください」

「やだ」

「なっ!どうして!?」

「どうしてって、逆に何でそんな事しないといけないのさ。もしかしてその男が脅しになると思ってる?もし本気でそう思ってるなら君可愛いすぎだよ」

「………。」


伽夜も本当は分かっていた。

仁に覚醒者と戦ってまで伽夜の弟を助ける義理などない事を。何故本当にここまで来てくれたのかと考えることもあったが、自分が女だからと都合よく考えていた事を。


「分かってるんならこっちにおいで。君の働き次第じゃ考えてあげるよ」

「考えるって、貴女は誰一人治したことないじゃないですか…!」

「だから考えるんだよ。今まで治す気なかったけど、これからは考えてあげるのさ」


小馬鹿にする様なペスティアの態度にスカートを握る手に自然と力が入る伽夜。

十中八九、考えるだけで治すことなんてしないだろう。


「仁様…お願いします。私に払えるモノなら何でもお支払いします、ですから_!」

「お前が払えるもんで俺が欲しいものなんざ無いだろ」

「ぷふふっ」


伽夜の悲痛の願いを一刀両断する仁に思わず笑いが漏れるペスティア。そしてその声に反応する様に仁の口角もあがる。


「でもお前の弟を救うのは手伝ってやるよ。前にも言わなかったか?」

「え……」

「は?何言ってんの?本当に殺し合う気?」

「ああ。あーでも、俺はお前の事殺しはしないから安心しろ」

「いやいや、伽夜ちゃんと寝てすらいないんだろ?どうしてそこまでやるのさ」

「そりゃお前、人格改変のせいでお前みたいに余裕ぶってるやつにちょっかいかけたくなる性格にされちゃったから仕方なくだよ」

「仕方なくって何だよ…」

「はははは、御託はもう良いだろ。いくぞ?[発芽せよ、彼岸桜]」

「[hymen]!ちょ!いきなり攻撃してこないでよ!」


仁の腕から伸びた無数の枝が、ベッドを囲う様に現れた黒い霧の様な障壁に弾かれ、耐久力も即座に回復された。


(だる。ここ地上から遠すぎて地球から魔力吸収できないからあんまり魔力無駄遣いできないんだよなぁ…でもまぁ、こーゆーの壊すのは武器が一番か)


「[咲き誇れ、五色桜][舞え、刃桜][殺戮技巧、剣式、桜花爛漫]」


辺りを舞う刃桜が仁の右手に収束し濃紅色の桜丸を作り出す。勿論オリジナルより性能は落ちるものだが、それでも身体強化まで施した仁からすればペスティアの障壁を破壊するには十分すぎる性能のもので、大きく振り下ろされた桜丸は容易く障壁を切り裂いた。


「うっそ![hymen]!それから[penis(ピィネス)]!」

「ぶふっ」


濁されているのかネイティブになっているのかは分からないが、学生時代何度か聞いたし何度か言った馴染みのある言葉と共に、障壁から突き出る様にして出現した巨大な黒い針の様なものに思わず吹き出して攻撃を受ける。


「おいこの変態!てめぇ魔法の詠唱なんてものにしてやがる!てか一単語だけってことは魔法の名前そのものがそれじゃねぇか!!」

「うるさい!言うな!私だってまさか自分が口に出さないといけなくなるとは思わなかったんだよ!![HIV]![Chlamydia ]![gonorrhoeae]!」


周囲に黒い霧の様なものが発現し仁の体を侵す。


(【状態異常:免疫不全】ねぇ、諸々のデバフも食らったし厄介だな。病魔耐性が意味ないのは面倒いが月城の方にこの霧が行ってないところを見るに人質をとる気はないのな)


「っらぁああ!!!」


大きく切り払ったその一撃を難なく受け止められまたもや一瞬にして耐久力を回復される。仁の能力低下に加えどうやら障壁自体も強化されている様だ。


「かてぇ…」

「[penis]!」


二度目の攻撃は流石に躱してもう一度桜丸を振り下ろすが、その一撃も無意味に終わる。


「あーもう面倒臭い!![存在解放、春眠の誘い][存在昇華、原初の大樹]!死ぬなよ変態共ぉ!」

「っ!![hymen][hymen][hymen]!」


膨大な魔力を感じ取り咄嗟に障壁を重ねがけするが、その抵抗も意味なく計四枚の障壁が一度に容易く切り裂かれ、それと同時にベッドの天幕も切り裂き漸くペスティアとの対面を果たす。

ベッドの上には五人の女がいたが、魔力量と女の位置関係から少々痩せ気味な銀髪の少女がペスティアなのだろうと判断できた。


(力で屈服させないと女とイチャイチャできない体型や容姿なのかと思ったが…どうして話に聞く暴挙に出たのやら)


「ようペスティア。レズ自体にどうこう思うところは無いが、無理やりやらせんのはそろそろやめにしようぜ?」

「えっ………」


ベッドに片足をかけ桜丸を担ぐ仁の言葉など耳に入らず、自分の体と仁の顔を目線で往復させる。

何せペスティアも他の四人も一糸纏わぬ裸体である。これでは果たしてどちらが変態なのか分かったものでは無い。


「ガン見すんにゃ変態ー!!!!!」

「ぐべらっ!!」


顔面に投げられた枕が当たるのと同時に乱雑に飛ばされた魔力波に吹き飛ばされる仁。

避けることも勿論できたが、これに限っては流石に自分が悪いと感じ何一つ防御せずに受けとめた。


「バカ!アホ!変態!!」

「わ、悪かったな。てか俺等が来る情報来てたんたら服着て普通に待っとけよ」

「うるさい変態!」

「お前に言われたくねぇし、話に聞くお前さんが羞恥心持っていたことに驚きだよ」

「本当にバカなのか!?お前は男だろ!ってだからこっち見んな!!」

「ちょ、枕投げるなよ…」

「じゃあこっち見るな!てか帰れ!」


茹で蛸の様に真っ赤になったペスティアにすっかり力が抜けきっており、仁としてはもう帰ってもいいと感じであるのだが、それでも月城の件を承諾させないと帰るに帰れないという気持ちもある。


「帰ってやるのもやぶさかじゃ無いんだが、俺と月城弟にかけた魔法を解いてくんね?」

「やだ!みんな僕のものだ!」

「ガキかよ…あぁそうだ。おいペスティアの周りのあんた達も今日はもう帰れ。正直邪魔」


床に散らばった服を着ようとする女達をペスティアが止めることは無かったが、その代わりペスティアの周りの瘴気が濃くなりうずくまったペスティアからグチグチと聞き取れない小言が聞こえてくる。


「みん……………結………もうやだぁ……………」


(え、何か病み始めちゃったんだけど、どしたん話聞こか案件か?いやダルイから言わんけど)


「あー、ペスティアさーん?とりあえず俺にかけた魔法だけ解いてくれませんかね?」

「……………………………………」


(ははは、ダメだこりゃ)


完全に聞く耳を持たないペスティアに諦めかけた仁だが、もう一人の当事者が口を開く。


「以前から時折こぼすグチから何となく貴女が男性に良いイメージを持っておらず、自身にコンプレックスを抱いているのは何となく感じていましたが、それでも私達にこの様な事をさせるのは良いことでは無いでしょう?もうやめにしてください…!」

「お前には………」

「え?」

「美人でスタイルも良くて我慢強そうなお前にはわからないだろうな!!!僕だって!僕だって…元は普通の女の子だったんだよ……」


このまま「だからなんだよさっさと魔法を解け」と言える筈もなく、とりあえず服着ろと言わんばかりに散乱した服を魔法で集めてペスティアにかぶせる。


「それで?何でまたそんなに性癖歪んじゃったのさ」

「………お前、女と寝たことは?」

「は?まぁ、あるけど」

「その時に相手に『痛い、やめて』って言われたらどう思う?」

「悪いって思うと思う」

「ほんとに?」

「流石に嘘つかんわ」

「………。」


黙ってしまったペスティアに(何で言えば正解だったんだよ)と思いつつ出来るだけ優しい声色で言葉を紡ぐ。


「あぁ別に、言いたくなけりゃ言わんくていいぞ?聞いたところ何だが、トラウマなんざ掘り返したく無いだろうしな」

「……僕、高校生の時にできた初めての彼氏に付き合って三日くらいで家に呼ばれたんだ。その時は初めて人に好きって言ってもらえて嬉しかったし、オシャレ勉強したかいあったなって思ってたんだけど。まさかそこでエッチするとは思わなくて、最初は断ったんだけど、嫌われるの怖くて、結局入れられて、痛くて、泣いちゃって……アイツもやめてくれたけどその後すぐに振られて………その事友達に話したらしくて、その友達も違う友達に話してっていくうちに、気づいたらクラスの殆どの人がその事知ってて……みんなの色んな視線に耐えられなくて学校辞めて………」


(えぇ…思ったより可哀想なやつじゃん)


「それで、男が憎くなって女で欲を満たす様になったと?」

「違う」

「違うのか…」

「本当は別段女の子が好きなわけじゃ無いけど、あの件で男の人と付き合う自信がなくなったのに、他の子は幸せになれるのが許せなくなってきて…段々歯止めが効かなくなって……どうせ普通の恋愛何てもう無理だろうしこれでいいかなって思い始めたの」

「成程ねぇ。話聞く限りお前さん_」

雪月(ゆづき)

「…雪月が悪いわけじゃないし、その元彼みたいな奴あんまりいないと思うから前向いた方がいいぞ。じゃなきゃ美人が勿体ない」

「………それでも、怖いよ…」


先程伽夜を嘲笑っていた者と同一人物に思えない程弱々しく呟かれた言葉。

追い込まれた者は理性など効かなくなると言うし、もう仁に雪月を攻める気力は残っていなかった。


「まぁそうだろうな。んじゃコイツとかと女子会して失敗しない恋愛方法でも学んでけ。あぁ、ちゃんと月城弟達にかけた魔法は解いてやれよ」

「えっ……私ですか?」

「話聞いたんだしそれくらいしてやれ」

「いらない……恨まれてるだろうしどんな事言われるかわからないから…」

「そーかい」

「魔法は今度解くから今日はもう帰って」

「わかった。まぁ何だ、ここまで自分の事話したんだしもう気兼ねなく愚痴れんだろ?話くらいなら聞くからあんま一人で背負い込むなよ。んじゃまたな」

「……正直、どの様な経緯があったにしろ弟が苦しめられた事実は変わりませんし、今も苦しんでいます。後日しっかり魔法を解いてくれる事を願っています。では」


エレベーターに乗り込み帰っていく仁と月城。

自分以外誰も居なくなった部屋で一人、我慢していた涙を流し嗚咽をもらす。


(何であんな目に遭わなくちゃならなかったんだろう……どうしてこんな事しちゃったんだろ……これじゃあどうしようもなく僕が悪いじゃん…僕が…僕だけが……)


「もうやだ………辛いよ…………」


悲痛な声は誰にも届く事はなく、少女は一人悲しみに暮れた。


最後まで読んでいただき誠にありがとうございます!!!

書いている途中、少し息抜きをしているうちにデータが消えると言う事を二度繰り返して心が折れかけましたが何とかかけました。

次の話も読んでいただけると嬉しいですれ!!!!!

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