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破滅した世界の内側で  作者: めーや
23/35

悪党

連れていかれたのは周囲の建物より一回りか二回り程大きく金色で彩られた建物の二階。ここへ向かう途中に合流した大男の連れの着物を着た女を足して、計で四人で部屋へ入る。

部屋には掛け軸や壺、座卓や座椅子の設置された和室となっており、広さは四人で入っても窮屈さは感じないものの、広いとは感じない程度の部屋だ。


「さて、まず事故紹介をしようや。俺は12席次の[大塚(おおつか) 景虎(かげとら)]つう覚醒者だ。よろしく」

「わたくしは[藤ヶ谷(ふじがや) 伊織(いおり)]と申します。現在はここ五層の管理官兼日替わりで景虎様のお世話係をしております。どうかお見知り置きください」


両者着物を着た美女と野獣。仁が真っ先に頭に思い浮かんだ感想といえばそれだった。


「どうも。俺は仁でこっちが案内人の柊、基本空気だから無視して良いよ」

「ちょ!酷くない!?」

「がはははははは!!お前さん下級職員と仲がいい様だな!」

「まぁな。お前さん的には下級職員は侮蔑の対象か何かなのか?」

「いやいや!!美人な女は性の対象、強い奴は興味の対象、そしてそれ以外が覚える必要のないゴミって感じだな!」

「ふ〜ん」「うわぁ〜…」

「柊と言いましたね貴方。確かに仁様とは仲がよろしい様ですが景虎様に対してその様な態度は如何なものではないですか?」

「あ、すいません」

「がははははははは!!良い良い!気にすんな!二人とも!」


(一々うるせぇなぁ…)とジト目を景虎に向ける仁。

一方景虎はその見た目に反して様々な事を思考していた。


(さて。コイツ、下級職員と仲の良いところと暴れている報告が無い事を考えるに[人格改変]はあまり受けてなさそうだ。そうなると強大な力を持った事の高揚感で正義のヒーローしてんのかね?もしそうだとしたら面倒だな。ゲーム時代じゃ散々コイツにやられたからその強さはよく分かっている。それに加えてこの距離じゃジンの[魔力場]が強すぎて上手く魔力を使った技能を発動できなさそうだな…。

そもそもコイツは何をしにここに来たんだ?店に来る途中全く女共にも飯や酒の匂いにも反応しなかった筈だぞコイツ。

ただの見学か?何のために?好奇心?それともやはり下層の人間がどれ程苦しんでいるか見に来たのか?

いや待て、それにしては敵意が全く感じられねぇ。

いやいや、相手は覚醒者だ。それくらい隠している可能性は大いにある。

だが何にせよ聞かなきゃ分からんか……)


「お前さん。最近この都市に来たらしいがどうだ?楽しんでるか?」

「それなりに。まぁ13階層と最上階層しか行った事ねぇけど」

「そりゃよかった。んじゃ何でここに来たんだ?13階層っていやぁここの完全上位互換じゃねぇか。態々ここに来る必要なんて無くねぇか?」

「アンタも知ってんだろーけどクーデター軍っているじゃん?ソイツ等の言っている下層の人間が虐げられてるって情報が本当かどうか自分の目で確かめてみたくてな。んで、そこんとこどうなんだ?ここの奴等はどんな生活をしてんだ?」

「ここ奴等の生活ねぇ…」


(コイツが付けてんのは恐らく魔道具の眼鏡だろうし、嘘を見抜かれる可能性があるな…正直に言うのが吉ってやつかね?)


「まず、今の東京の組織のトップは一つの例外なくプレイヤーなんだが、その中でも下層に店を構える奴等は良心的な考えを持ってねぇ。まぁ、それ故ここ五層以下の住人で真っ当な稼ぎだけで暮らせる奴は少ねぇんだ」

「つまり犯罪を生活の糧にしていると?」

「ああ。お前さんも財布取られたろう?ありゃアンタがカモだとここの奴等が判断して態と揉みくちゃにしたんだよ。後でお前の財布の中身をみんなで山分けするためにな」

「成程」


(アイツ等やっぱグルだったのか、まぁ俺が稼いだ金でもねぇし良いけど)


「それじゃあ下層の人間っつっても、盗みのおかげで一応生活はできてんのか?」

「まさか。そもそもここに住んでる奴は金なんてほとんど持ってねぇしな。上層から来る怖いもの見たさの奴や安くヤリたい奴等から金を取っても直ぐに使い切って上層に還元されちまう。強盗やらで生活できてる奴はここじゃましな方さ、マジで終わってんのは三層と二層。運営以外が立ち入れる事実上の最下層じゃ盗みより殺しの方が多い。肉がそのまま手に入るからな」


(成程ねぇ…死ぬか殺すか奴隷に落ちるか運営になるか。最下層に住む奴からすりゃあ運営になる事が一番安全ってわけか。まぁ慣れるやつなんてごく一部に限られてんだろうが)


「この都市はそういった犯罪を許してんのか?」

「下層に限ってはな。上層でそんな事件が起きれば直ぐにでもアルラルトが飛んでくるぜ?アイツは人の罪が見れるからな」


(罪が見れるってぇと、カルマ値の増減理由を閲覧できるって感じかね?にしても、下層の死因は過労死か飢え死にかエネミーに殺されんのが多いだろうと思ったけど甘かったみたいだな)


「一応言っとくが、この下はあらゆる犯罪のデパートみたいなもんだ。ただ見たいってだけならちょっかいかけずにそっとしておいてやんな」

「え、何で?最下層の犯罪者がいくら減ろうとアンタには関係ないだろう?」

「まぁそうだが、アイツ等だって生きる為に仕方なくやってんだ。許してやれ」

「人肉食ってる奴が長く生きれる訳ねぇだろ、食人族の末路知らんのか。言葉を作ろうのはやめろよ。ソイツ等は奴隷に堕ちるくらいなら人を殺そうっていう明確な意志のもとやってんだろ」

「…それは……」

「お前さんが何を考えてんのかは知らんが、下に行って欲しくねぇってんならペスティアって奴の居場所を教えろ」

「は?どうしてアイツの居場所を知れてぇんだ?」

「秘密。でどうする?仲間の情報売ってまで行って欲しくないの?それとも別段そうでもないの?別にアンタがダメでもアルラルトに聞くから俺はどっちでも良いんだけど」

「アイツと会ってんのか…。はぁぁ……分かった、教える。つっても口には出したくねぇから、伊織、アイツの居場所を紙に書いて渡してやんな」

「畏まりました」

「売るんだ…」


まさか本当に売るとは思っていなかった仁は思わず声を漏らす。

そして口に出したくないと発言したことからこの部屋の防音機能は恐らくないのだろう。


「こちらを」

「どうも。なぁ、何でそんなに下に行って欲しくねぇんだ?」

「お前に暴れられると困るからだよ。いいか?この都市じゃ…いや、何でもない。いいから力は極力使うな」

「はぁ、まぁ別にいいけど。つかお前に着いてきた目的達成したから帰って良い?」

「最初っからペスティアの情報を聞き出す気だったのかよ…まぁいい、お前が力を使わないなら何でもな」


(雑魚そうな奴でも一応は覚醒者だ、コイツの表層意識流石にこの程度の魔道具じゃ読み取れんな。はてさてそこまで力を使って欲しく無い理由はなんなんだろうなぁ?)


「んじゃな」

「おう。もうここには来んなよ」

「用ができればまたくるよ」


例をする伊織を見て自分もと慌てて頭を下げた柊を置いて部屋から出る。


「ちょ、置いてかないでよ!」

「んー」

「返事適当すぎでしょ…」


店の外にでて何となく空を見上げる。

下層は擬似的な空を作り出さず太陽の光を適当に送り込んでいるだけなので正確な時刻は分からないが、長いした感覚もないし手短に目的を達成できたと少しだけ喜ぶ。


「ペスティアは…夜でいいか」

「帰るの?」

「帰る」

「了解。夜まで時間あるけどどうするの?」

「家帰って昼寝か、あぁそうだ、啓文さんから買い物頼まれてんだった」

「じゃあ十三階層_キャッ!?」


いきなり短い悲鳴をあげた柊の目線の先へ自分も目線を向けると、柊の尻に顔を埋めた少年がいた。

遊び回っていたら子供が前方不注意でぶつかったのかと思ったが、中々柊から離れないところを見るにそうでは無いのかも知れない。


「だ、大丈夫?怪我はない?僕」

「うん、ごめんさない。前みてなくて」

「それは良いんだけど、そろそろ離れてくれるかな?」

「え〜おねぇちゃん死んじゃったお母さんみたいで落ち着くのにぃ…」

「死ん…そっか…」

「何丸め込まれてんだアホ[発芽せよ、彼岸桜]」

「えっ?」


魔道具で少年の思考を読み取った仁は一切の容赦なく少年を吹き飛ばすと、


「なんだなんだ?」

「お、おいあのガキ」

「またアイツがなんかやらかしたのか?」

「わ、分からん。でも相手が…」

「あ…でもアイツって…」

「おい誰か一応景虎さん読んでこいよ」

「わ、私行ってくる」


などと野次馬も集まってきた。

そんな状況も全く気にせず倒れた少年の胸を足で踏みつけ身動きが取れないようにする。


「あ”っ!!い、いだいよ…!」

「じ、仁?私そんなに気にしてないしやめてあげて」

「そうだ仁!ソイツが何やったかは知らんが許してやれ、実害は出てねぇんだろ?」


景虎に招待された店の前ということもあって、呼びに行った女を待たずして騒ぎを聞きつけた景虎が店から出てきた。


「断る。なぁ景虎さん、カルマ値-100を超える為に必要な行為って何か知ってるか?」

「は?PKか?っておいおい、そりゃゲームでの出来事だろ?コイツが現実で人を殺したとは限らねぇじゃねぇか」

「そ、そうですよ。僕は人殺しなんてエ”ッ!!」

「へぇ、カルマ値マイナス216の屑は嘘ついても魔力が揺るがねぇのな」

「おい仁!やめてやれ!」

「そうだよ仁!どうしてそんなに怒ってるの?」

「殺人強盗強姦拷問etc。この魔道具によるとコイツはどうやら毎日楽しく過ごしてるらしいぜ?」

「嘘……」


[表層投影鏡]は魔力のステータスがE以下の者のステータスと思考、強く記憶された記憶までま読み取る事ができる。

この少年はどうやら、世界改変後にカルマ値を100以上減らしたらしい。


「最初に殺した人間は自分の親なんだってなぁ?キレてはねぇけどお前みたいなクソガキには大人としてお仕置きしてやんなきゃいけねぇよなぁ?」

「ぼぐ、そんなごど、じで…」

「調子のいい奴だな。どうした?いつも言ってんじゃねぇか、『お前が弱いからこんな目にしてあうんだ』ってよお。そう言って殺した連中と同じようにお前も死んでみるか?」

「や…だ…!おじざん…!たずげて!」

「っはははははははは!安心しろよクソガキ!死んでもこの町にゃ聖女様がいるんだ。きっと蘇生してくれるぜ!?」

「ちっ!!!」


少年へ向けて殺気を出し始めた仁を放っておく事ができず景虎が全身に装備を纏わせる。

燃える鎧に燃える大剣。景虎の研究テーマは炎そのもの。植物魔法との相性は良いはずだが…


パァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!


仁を止めようと地面を蹴った景虎は一瞬にして中央部の畑まで吹き飛ばされ、その一瞬後に耳をつん裂く音が辺りに響く。


「残念だったなぁクソガキ。お前の頼みの綱はもう暫く動けねぇぞ?」

「いやっ…だっ!じにだくない!!」

「はぁぁ……」


泣きながら「死にたくない」と叫んだ少年に仕方なくといった様子で足をあげる。

そう、周りの者には見えた。


「ひっ!!」


解放されたのだと思い自身の体を魔力で強化してその場から逃げ出す少年だが、


「[舞え、刃桜]」


逃げること叶わず、胸に風穴を開けられ倒れ込む。


「『ああごめん、楽しそうだったからつい殺しちゃった』この言葉覚えてるか?第二層でたかがパン一つで喜んでいたガキ達へ向けてお前が言った言葉なんだが…まぁ覚えてなきゃ俺が読み取れるわけもねぇか。んでどうだ?楽しそうだからって理由で殺される感想は。肺に穴が空いてようが脳みそで考えることはできんだろ?って、痛みと苦しみでそれどころじゃねぇか。じゃあもういいや」


胸を抑え苦しみもがく少年に飽きたのか帰路へつこうとする仁。

最早少年へ目線すら向けていない仁だが、「あっ!」と何かを思いついたように歩きながら言葉を紡ぐ。


「お前さん、十四才の癖に絵に描いたような屑で笑っちまったが、最下層のクソッタレな記憶はためになったよ。ありがとな〜」


(それに、お前がいい見せしめになってくれたおかげで来た時鬱陶しかった有象無象も近寄ろうとしないしな)


一人の少年のおかげで色々良いことがあった仁は上機嫌そうに歩き、仁が人を殺した事に内心酷く驚きながらも黙ってその後をついていく柊。

二人を呼び止める者は最早いなく、スムーズに上層階へと登っていく。


(ペスティアは…十七階層の東区か。あれ、十七階層って運営しか入れないんじゃなかったか?…まぁいいか。アルラルト入れなさそうならアルラルトでも呼び出せばいいしな。話に聞くペスティアっていやぁ歪んだレズって感じだが、果たしてどんな奴なのかねぇ?)




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「息はあるようですが…助けは必要ですか?」

「いらねー。あの野郎の魔力のせいで体中の魔力が荒ぶりまくって動けねぇだけ」

「作用ですか……それで、どうでした?」


約一ヶ月に一度程のペースてま収穫される異様な小麦畑に横たわる景虎とそれを見下ろす伊織。

どう、とはここまで景虎を吹き飛ばした仁のことを聞いているのだろう。使えるのかどうかを。


「どうもこうもねぇよ、レベルは同じな筈なのにこのざまだ。正直舐めてたわ、PVP最強は伊達じゃねぇ…ねぇんだが、それでもあの方には勝てねぇだろ」

「そうですか。今回の件で仁様の魔法を確認されましたし、万が一も無くなったとみて間違いないのでしょうか?」

「ああ。これでワンチャンあんのはゴッドマンだけだな。まぁ、それでもあの方が負けるとは思えないんだが」

「ワンチャン何て言ってはなりませんよ」

「わーっとるわ。はぁぁ……いってぇなぁ…」


最後に出た景虎の呟き。勿論身体的な意味もあるのだが、それ以上に景虎が思い浮かべている人物への対抗手段が無くなったことにたいしての意味が強かった。


「そういや、あのガキはどうなった?」

「殺されましたよ。一切の躊躇も容赦もありませんでした。動じてもいませんでしたし、一応人格改変の影響は少なからず受けているのでしょう」

「そうか…バカな奴だな、どうしてこうもタイミングの悪い時に来ちまうかね?」

「柊の髪色が金色だったからでなはいでしょうか?あの少年、金髪の女性には手当たり次第に突撃していたようですし」

「はぁぁ……」


ゲーム時代ではPKerの支援を率先的に行なっていた景虎は、人格改変の影響でカルマ値の低い者(犯罪者やクズ)に悪い印象を抱けなくなっていた。

それを差し置いても、最近伊織に子を身籠もらせた影響で子供に対し保護欲求の様なものが湧いており、少年の死には少々気を落としている様だ。


「そう気を落とさないで下さい。どのみち、私達の目的を叶えたら_」

「わかってんよ、それ以上は言うな」


(俺達の子が笑って暮らせるためにいつかは淘汰しなけりゃならん存在だったんだ。そう言われても、アイツ等が無惨に殺されんのは心がいてぇよ……。それにアイツが力を使いやがったからあの方を殺す事も出来なさそうだしよお!踏んだり蹴ったりだぜクソが!!)


「はぁぁぁぁ………」

「体もそろそろ動く様になってきたみたいですし、帰りましょうか」

「ああ。悪りぃなこんな情けねぇ奴で」

「その発言が情けないですよ。もっとドンと構えてください」

「ああ、そうだな。よっしゃ!とりあえず帰って昼飯だ!これからの事はそれから考える!」

「ええ、そうしましょう」


最後まで読んで頂きありがとうございます!!!!!

もし宜しければ良いねやご感想等お願いします!!

次の話も読んでいただけると嬉しいです!!!!!

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