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破滅した世界の内側で  作者: めーや
22/35

下層階

「仁は今日ゆっくりするの?」

「いや?今日は啓文さんが家に居るし外に出ようと思う」

「え、何それ僕の事嫌いなのかい?」

「ぶっ!」


素で出た啓文の言葉に飲んでいた味噌汁を吹き出しそうになる。


「ご、ごめんごめん言い方が悪かった。柊に案内して欲しい場所があってな、そうなると啓文さん家にいないとダメだろ?」

「成程ね」

「どこ案内してもらうの?」

「昨日真衣に上層階の楽しさを教えてもらったから、今日は下層階の楽しさを教えてもらおうかと」

「下層階の楽しさ、かい?」

「そう。下層の人間は毎日血反吐を吐いて働くか体を売りに出しているらしい、クーデター軍によるとな。それが本当か自分の目で見てこようかと思ってな」

「え、クーデター軍って何?」

「ああ、それはな…」


クーデター軍からの手紙の事、この都市の現状、運営陣の状況、アルラルトとの会話。

仁が家に居るときに起きた事を一から説明する。


「成程、僕等が有意義に過ごしている間に沢山の人が犠牲になっていると」

「そうとも言えるが一概にそうとは言えんだろ。非プレイヤーがアルラルトに貢げる価値なんてたかが知れてる。正直、殆どの人間が死んでプレイヤーだけになったとしても、この都市は余裕で運営が可能だと思うぞ」

「膨大な労働力が無くなるのは痛いんじゃないのかな?」

「お前さんがそれ言うか?幾らでも作れるじゃんか、労働力なんて」

「エネミーを使役したり人形を作ったり、プレイヤーなら好きに労働力を生み出せるってことか…」

「そゆこと、だからって非プレイヤーが要らない存在とは言いたくないが、都市のトップが多数決で現状の待遇を決定したのならそれが正当な待遇と言えるのかも知れない」


以前の世界と違って、今は一人の人間が数十人、数百人、人によってはそれ以上の仕事をできる世界だ。倫理や道徳を考えず、力を持たない者が淘汰されると言う点でみれば自然の摂理とも言える。


「でも何でまた自分の目で見ようと思ったのさ」

「クーデター軍の手紙の内容が本当かどうか自分の目で確かめたくなった。ほら、百聞は一見にしかずって言うだろ?」

「ふ〜ん。その結果次第でクーデター軍に加わる気?」

「まさか、どんな状態だろうがクーデター軍に加わる気はねぇ。寧ろ真衣はどうなん?人助け好きだろ?」

「困ってる人は助けたいけど、流石に規模が大きすぎるかな。感情で動いた結果どうなるか想像が全くつかないから自分から動くのは怖くてできないよ」

「同感、気が合うね」

「ふふん。なんたって未来の嫁だからね」

「おやおや、これは赤飯を炊いた方がいいやつかい?」

「俺は赤飯よりカツ丼食べたい」

「私カレー」

「私はオムライス!」

「はははっ……一日置きでいいかい?」


今日から三日分の献立が決まった啓文は、何が足りなくて何を買わなければならないか頭の中で整理してメモに書き起こしていく。


「さて、俺はそろそろ出るけど、真衣も来るか?」

「私はいいやー。あ、くれぐれも柊さんとイチャイチャしない様に」

「しないしない。多分な」

「私この体になってから凄く五感が鋭いんだ」

「怖ぁ…」

「あははは。ごめん、さっきの私の発言仁が否定しなかったからちょっと調子乗った。じゃあ、行ってらっしゃい」

「行ってらっしゃい、気をつけてね」「行ってらっしゃい、仁お兄ちゃん!」

「行ってきます。因みに夜ご飯は三つのうちどれ?」

「三人でゲームをやって勝った人の食べたいものかな。あぁそうだ、これ」


啓文から[魔道具:表層投影鏡]という眼鏡とメモ用紙を受け取る。

表層投影鏡は昨日の夜にあらかじめ啓文に貸してくれと頼んでいた物だが、今の今まで仁は忘れていた。


「あ、忘れてた」

「そっちのメモはお買い物メモだから、帰りに買ってきてくれると嬉しい」

「うい、んじゃ」


三人に見送られ家を出る。


(そういや柊ってどう呼び出せば良いんだ?…とりま外壁に行くか。職員に呼び出してもらおう)




まっくろくろすけの都市運営の事だ、恐らく休みなんて無いだろうし呼び出せば来るだろうと考え、近くにいた職員に呼び出すよう声をかける。


「柊、ですね。少々お待ちください」

「んー」


職員がどこかへ駆けていき少しすると柊を連れて戻ってきてくれた。


(あ、マジで来た)


「おはようございます、仁様」

「口調を崩せ」

「え、ここ外だけど良いの?」

「ああ。それより今日暇か?」

「え、まぁ仁の命令が最優先だから暇といえば暇かな。どうせ私居なくても仕事に支障はないだろうし」

「んじゃ俺に下層の案内してくんない?」

「何で下層?」

「どれくらい酷いのか見てみたい」

「スラムツーリズムってやつ?趣味悪いね」

「俺らしくて良いだろ?」

「ふふふ、開き直んないでよ。最初は何階にする?」

「あー、最初はな……」


まず最初に柊のバニー服をどうにかしたいため、13階の都市が運営しているあの店で適当に服を着替えさせ、その後に第九階層へ降りていく。

第九階層の街並みは一見するとそれほど酷いものには見えず、臭いもこれといって酷いものでは無い。


「ここはあまり酷くなさそうだし、軽く見るだけにするか」

「まぁね、ここに住む殆どの人はどこかのクランに属していて比較的に裕福な人達だし、家も普通の民家より少し暮らしにくい程度だと思うから」

「一応上下水道はあるってことか」

「うん。でももう三つくらい下がると匂いもキツくなってくると思うよ」

「行きたくなくなってきた」

「やめる?」

「やめない。さ、この階層の奴にちょいと話を聞きに行こうか」

「おー」


それなりにまともそうな階層の現状など別段詳しく話を聞きたいわけでは無いので、適当に暇そうな奴を見つけて声をかける。


「やぁ初めまして。今からどこに行くんだ?」

「え、いきなり…って、司祭階級!?あーえっと、俺はこの後クランに出勤して仕事をします…」

「へぇ、どんなクランなん?」

「平川カンパニーっていうクランで、主に農作物を加工する仕事をしてます」

「ほうほう、給金はどんな感じ?」

「週給で三万ってとこですね」

「日本円で三万くらい?」

「物価が高いのでもう少し低いですね」

「よく生きてけるね」

「ははは、自分はまだマシな方ですよ。贅沢はできませんが生きていけますから」


(成程、娯楽に使う金は無いって程度か?いやそれよりも、10時頃に出勤しているコイツは全体的に余裕がある奴なのか?)


「なぁ、俺が聞いた話では早朝から夜遅くまで低賃金で働かされるってイメージだったんだけど、アンタはこんな時間に出勤しているし、間違った情報だったのかね?」

「あぁ、いや、もっと下層の人はそんな感じだと思いますよ。でもここ九層で働いている人はみんな俺みたいに緩く働いてると思います」

「ふーん。プレイヤーじゃ無いんだろ?何でアンタはここで働けてんの?」

「プレイヤーの友人のつてみたいな感じです」

「成程。じゃぁ最後にさ、アンタは今の待遇が正当なものだと思う?後ろの職員は都市運営の上層部に恨み持ってる奴だから気にしなくて良いよ」


そう言われても警戒するのが普通であり、またこの男もそうだった。


(いやいやいや!変なこと言ったらクランごと潰されるでしょこれ!)


「因みに、俺嘘ついてるの分かるから。繕っても無駄だよ?」


(詰んだーーー!!!!!)


「そ、そりゃあ思うところはありますけど、最近それにも慣れてきましたし、その、殺さないでください」

「いやいや怯えすぎ。話してくれてありがとう、俺はもう行くよ。あぁ、特にお礼とかは無いから、じゃあね」

「さ、さようなら」


以前戦士階級の人間に面倒くさい絡まれ方をした男は最後まで怯えた顔をしていたが、色々考えていた事は杞憂に終わる。




「柊、下層の大規模な商業階層はどこだ?」

「あー…北東だと多分五層だと思うよ。九層の見学はもう良いの?」

「いい、何か思ってたのと違うから。それより五層に行こう」

「了解」




第五層。この都市で最も人が集まる階層であり、そこら中に漂う嬌声とむせかえる程の酒の匂いからいつしか[享楽街]と呼ばれる様になった。


(おお。いいね、酷そうだ。…ああでも、司祭階級のペンダントは外した方が良かったっぽいな。客引きだと思われる奴等からの視線が物凄いぞ)


「何か、凄い注目されてるね」

「せやな。今からでも取るかはたまた…まぁ良いか」

「良いんだ」

「お前はとっても良いぞ」

「とったら襲われそうだからやめとく」

「ん」


ちらほらとしか人が居なかった九層とは違い人が沢山いる為誰に声をかけようか迷ってしまい、とりあえず町の中へと進んでいく。

すると、ジロジロ見るだけだった者の一人が声をかけてきた。

扇情的な格好と【一時間五千オル〜】という看板を見るにそう言う店の客引きだろう。


「初めまして司祭様。良かったら私の店でゆっくりしていきませんか?」

「悪けど断らせてもらうよ。またね」

「それは残念。でももし気が変わったら是非私の店に来てくださいね?可愛い女の子いっぱい居ますよ」

「んー」


女の誘いを断ったのは良いが、仁の口調と雰囲気から声をかけても大丈夫な人間という事を学習され、様子を見ていた客引きが次々と話しかけてくる様になった。


(みんな司祭階級とのパイプを作りたいんだろうが、流石に面倒いし柊見えんくなったし。さてどうしたもんか)


「私のとこはちょっと高い代わりに美人揃いだよ!」

「いえいえ、私のところは戦士階級の方にも人気でして…」

「俺の店は男もいるぜ!勿論美人な女もいるけどな!」

「私の店の酒は絶品ですよ!一杯飲んでいかれませんか!?」

「私の…」「俺の…」「わたくしの…」


揉みくちゃにされて身動きが取れず、なされるがままにされる仁。

魔道具の力で先程から視界に映った者の思考を読み取っているが『誰かヤレ』や『誰でも良いから早く盗れ』などと考えているあたり、この隙に乗じて誰かに財布を取らせる判断なのだろう。


(おいおい洒落にならんし、って誰だ俺の財布取った奴!ちょ!変なとこ触んな!)


結局財布も盗られこのままだと碌なことにならなさそうなので仕方なく魔法を発動しようとした時、仁に助け舟を出す者が現れた。


「お前等!!!ソイツ困ってんだろうが!!離れろ!!!」


男の鼓膜に響く声がその場に居た者を一瞬に黙らせた。


「ほらどけどけ……っと、お前さんか。大丈夫だったか?」

「ああ、助かった」

「覚醒者なら自分でどうにかできただろうに…たく…」


仁の前に現れた着物を着た大柄な男。

身長180弱ある仁が見上げる程の身長差があることを考えるに二メートルを超えている可能性がある。それに何より、この男のペンダントは司祭階級の物ともう一つ、上級職員の物。つまりこと男は…。


「12席次って奴か」

「おうともよ。そう言うアンタはPKerのジンだろ。こうして目の前に立つと身の毛がよだつ程の魔力を感じるな。もしかして警戒してんのか?」

「ああ。お前にじゃなくてこの都市の奴等全員をだけどな」

「はー、じゃあ何だ?ずっとその調子なのか?」

「ああ、悪いが止める気はないから慣れてくれ。そんなことより落ち着ける場所に移動しねぇ?」

「ははは、それもそうだな。ついてきな」


最後まで読んで頂き誠にありがとうございます!!!!!

最近は戦闘が無くて退屈されている方もいるかもしれませんがそれについては申し訳ございません!!!

ですがこれから戦闘モリモリ入れればなと考えていますのでどうかこれ以降もお付き合いください!!!!!!!!

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