5.ケニーとの専属契約の終了
ケニーさんは、さらに続けて行く。
「ここからが本題と言うか、私の予想のお話です。」
「予想ですか?」
「今回の流れ、すべてレスリー商会の差し金だと思っています。」
「レスリー商会ですか?」
「この町でも有数の商会です。南門に旅用品を売ってる店があったり、
他にも町の中だけで10店舗以上あり、従業員も100人を超えています。」
「大きい所ですね。南門前の旅用品屋なら俺も入った事あります。」
「この商会に目を付けられたんです。
レスリー商会は、ヘビの毒腺で作った毒薬をほぼ独占して販売していました。
なのに、新参の私が突然現れて今やほぼ独占し始めた。
もちろん、冒険者ギルドのヘビの毒腺を買い占めたとかはしてないので、
独占している訳ではないのですけどね。」
ケニーさんは、ひと呼吸おいて話を続ける。
「レスリーは、ずいぶん腹を立てていたようです。
対策しようとしても、冒険者ギルドに毒腺の納品が無い。
だからと言って、私がどこから毒腺を手に入れているのかも分からない。
非常にジレンマだったんだと思います。
そして、白背ヘビの毒腺での、即死毒薬の販売もされた。
何とかしようと思ったんでしょうね。
レスリー商会は、貴族の方とも取引を行っており、
非常に懇意にされている貴族も居るとの事です。
そのつながりを使って、今回の通達が出たのではないかと思われます。」
「なるほど。」
「実際、レスリー商会の者がうちに出入りしている業者を調べて、
どこから毒腺を入手しているのか調査していました。
ハルトさんだとばれないように、私の方でも方々に仕入れを装って、
ダミーを流していたので、つかみきれなかったんでしょう。
まさか、子供が納品してるなんて思わなかったんでしょうね。」
あ・・・そんな対策やっててくれたのね。
「契約の破棄自体は、構わないのですが、倉庫の賃貸も契約に入ってましたよね?」
「ああ。そうですね。
それに付いては別途契約を結んで、継続していただけると助かります。」
「それは、こちらも助かります。」
「今、返却されても、売るのは難しいでしょうからね。
間違いなくレスリーに、資金の調達と勘繰られて、邪魔される事になるでしょうから。」
「出来れば、その内俺に売って貰えれば助かります。」
「それは、非常に助かりますね。」
「じゃあ、契約関係は先に終わらせてしましょうか。」
「はい。契約書用意しますね。」
ケニーさんは、自分の机に座って、木板に賃貸契約の書類を作成してくれた。
「では、前の契約は破棄と言う事で、今回の契約にもサインください。」
俺は新しい契約にサインし、前の契約が破棄するのを確認する。
「こちらの一方的な言い分で、申し訳ありません。」
「いやぁ。売れないのに契約だから買い取れとは言えませんよ。
それに利益は減るけど、冒険者ギルドに出す事も出来ますから。」
「そう言っていただけると助かります。」
「ケニーさんは、毒腺がダメになったら、なにか商売はじめるんですか?」
「うちのメインは、毒腺ではなく塩なんです。」
「ああ・・・そうでしたね。」
「先日は、盗賊に襲われて失敗しましたが、貿易は運の部分も大きいです。
ですが、成功した時の利益も大きいので近々もう一度出す予定です。」
「盗賊ですか・・・。最近多いって噂ですもんね。」
「ええ。そのあたりは、腕利きの冒険者を雇って、警備強化すれば何とかなるはずです。」
「判りました。ケニー商会になにかあると俺も困るので、
お手伝いできる事があれば言ってください。」
「ありがとうございます。」
ケニーさんの所は結構大変だな。
商人の業界は、日本でも力ある所が、有利って構図だからな。
大手の隙間を縫って商売をしても、大手に手を広げられるとあっという間に潰される。
それでも、日本では法律で守られているが、法律のあやしいここでは、
力ある所に睨まれると、本当に辛そうだな。
まあ、今回のは大手の既得権益を犯しての、報復って感じか・・・。
でも今回の報復って、レスリー商会側にもおいしい所が無い気がするんだけどな・・・。
毒が手に入らないから、売れないようにしてしまえって・・・。
恨みだけの直情的な動きに見えるな。
こっちの世界は単純な人多いので、そういうものなのかもな。
それとも見えない意図があるのかな?
ケニーさんの所に売れないなら、冒険者ギルドに売る事になるんだが、
しばらく止めておこう。
あ・・・そういえば依頼にも毒腺の買い取りがあったな。
と言う事は、俺が毒腺の販売を止めると、供給もほぼ止まるだろう。
となると、その貴族の失策になり、レスリー商会がその貴族から、
責任を問われるかも知れない。
少しは、ケニーさんの援護になるかもしれないし、
ケニーさんの所での販売が、再度許可されるかもしれないしな。
でも、日々の売り上げが下がるな・・・。
毒腺の収入は結構、大きな部分を占めてた。
俺の売り上げの中で、一番美味しかったかもしれない。
解体の作業の手間無く、ただ頭を落として血だけ抜いて、置けばいいので気軽に売れるし、
いい商品だったんだがな。
・・・いいタイミングだし別の商売始めるか。
商売始めるのには、準備が必要だから手を付けるのに、早いに越した事は無い。
前から考えてたんだけど、この町の露店って、野菜や果物、パンしか売ってない。
出来れば、温かいすぐに食べられる様な食べ物の、露店が欲しいと思ってたんだ。
これを始めてみようと思ってる。
さらに、うちで食べてる料理は、この世界で食べたどの料理よりもうまい。
マディやリルに聞いても、貴族様の食事よりもおいしいかもしれないそうだ。
山菜は食べるみたいだけど、薬にしか使わないハーブを料理に使うという発想が、
この世界では無かったらしい。
これを、平民向けに出してやればかなり売れるんじゃないかなと思ってる。
もちろん、露店なのである程度、薄利多売になるんだろうけど、
人件費の少ないこの国では儲けを出すのは簡単なはず。
その上、俺の狩りで肉はかなりの数あるし、熟成終わってる肉も食べきれないほどある。
肉は、どこにも売らずに確保してるからね。
これだけの肉を供給出来るのも俺だけだろう。
まずは、焼いただけの肉を出す露店を始めてみよう。
後から、料理の種類を増やして行けばいいしね。
段取りを考えたら、人員の確保が優先かな。
マディやリルを町に出すのは危ない。
マディは、大量殺人の容疑者もしくは、関係者とされている可能性があるし、
リルは盗賊団の生き残りに見つかると、何されるか判らない。
人員なら、冒険者ギルドに相談してみるかな。
あそこ、実質のハローワークだし。
明日行った時に、相談してみよう。




