ジャック視点
「おい!こいつらじゃないのか!?」
俺達は昨日、なかなか飯にありつけず、いろんな所を探しているうちに、
大分遅くなってしまった。
そのせいで、今日はいつもよりも遅くまで寝ていたのだが、そんな声で起こされた。
目の前には、大人が・・・。しかも武器まで持ってやがる。
なんの用かは知らねえが・・・。
「ミーア逃げるぞ!」
「うん!」
ミーアの手を引っ張り、すぐに逃げ出す。
俺達は子供だが、逃げ足だったら大人にも負ける事なんてない。
すぐに、細い路地に入って逃げ出す。
後ろから、あいつらの声がするがそんな事知ったこっちゃない。
俺たちは、貧民街の方を回って、南門方面まで逃げた。
「ここまでくれば大丈夫だろ。」
「何だったんだろうね。」
「どうしよう、しばらくあそこには戻れないな。」
このあたりの路地には、ほかの浮浪児がいるので、適当に入っちゃうとケンカになるからな。
「ハルトの所に行ってみるか。」
「うん。」
ハルトなら、しばらく一緒にいても嫌な顔はしないだろう。
アリスも一緒かもだけど、まあ食べ物は別に探してもいいしな。
ハルトは、東区域の通りから北に入った所だから、俺たちの所とは通りを挟んでいるので、
そっちまでは探しに来ないだろう。
俺たちは、さっきの奴らを警戒しながら、東地区の通りを歩いていく。
通りなら、さすがにあいつらも、衛兵とかもいるし手は出してこないだろう。
警戒しながら通りを進み、ハルトのいる路地に向かう。
ミーアが引っ張って来た。
「ん?どうした?」
「いや!」
ミーアの腕を柄の悪い男が掴んでた。
全く気が付かなった。どういうことだ!?
「みつけたぜぇ。お前らだな。」
男はさらにミーアの手を引っ張り、ミーアを引きずる様に路地に連れ込んでいく。
「はなせ!!」
俺は、男の腕めがけて掴みかかる。
そのままかぶり付き、男の手を離させようとするが、簡単に殴られて地面に落とされる。
くそ!
俺は、倒れた時に、地面にあった小さな枝を拾い、改めて腕に飛びつこうとすると。
「おいおい。ガキに抵抗されてるじゃないか。」
別の男が声をかけて来た。
「そう言うなよ。すぐに連れて行くからよ。」
「でも、こいつらじゃねぜ。」
「ああ?そうなのか?」
「ああ。」
「け、はずれかよ。」
男は、そう言いながらミーアを蹴り飛ばし、先に行こうとする。
「ミーア!ハルトのとこに走れ!」
俺は、ミーアにそう言って、ミーアが逃げれるように、男との間に立ちふさがる。
「ん?ハルトだと!?こいつを連れて行くぞ!」
「ああ?やっぱりこいつらだったのか?」
ミーアは、そのまま走って通りの向こうの路地に入る。
「一人逃がしちまったじゃねえか。」
「いや。こいつ1匹で十分だ。あいつは逃がしておいた方がいい。」
男はそういって、俺を掴み引きずって行く。
俺は、さっき拾った小枝で、そいつの腕を突き刺し、
腕が緩んだ所で、ミーアと違う方向に逃げ出す。
「がっ!」
逃げる俺の頭を、男が後ろから殴り飛ばし、その勢いで民家の壁にぶつかる。
そこで、俺の意識は完全になくなった。
「いつまで待てば来やがるんだ?」
「まあ、ほかにも探しに行ってるやつもいるんだし、そいつらが見つければそれでいいだろ。
こいつは、その女の順番待ちの間、おもちゃにして遊んでればいいんだからよ。」
「まあ。そうだな。」
俺の気が付くと、そんな会話がされていた。
ここは、家みたいだな。
裸の女が1人座ってて、もう1人は男に襲われてる。
俺は気が付くとすぐに扉を見つけ、そこに走り出す。
気が付いたばかりと言うのもあって、ふらつきながらも扉に向かって逃げ出す。
すぐ男の蹴りが、俺の顔面に当たり、吹き飛ばされて、元の場所に戻され倒れ込む。
「元気いいじゃねえか。ちょっと面倒だから、足切っとくぜ。」
男は、獣の解体でもするかのように俺の足を刃物でえぐっていく。
「がぁああああああ!!!!」
「これでちょっとは大人しくなるかな?」
女を襲ってたやつが、
「おいうるせえぞ!興が乗ってるんだ、静かにしやがれ!」
「あいよ・・・。ガキ、黙れってよ。」
そう言いながら男は俺を蹴る。
壁にぶつかり、左腕が変な方向に曲がった。
「ぐぁあああ!」
「うるせえって言ってんだろうが!!」
さらに、その男は、俺に近づき口の中にナイフをえぐりこんできた。
「ああああああ!」
「これでもうるせえな。」
奥にいた奴が、「おいおい。殺すなよ。一応そいつを助けに来るかもしれねえからよ。」
「ああ。分かったよ。」
さらに、俺は殴られ壁にもたれるように気を失った。
俺が意識を取り戻したのは、なんだか男たちが焦った声を出している時だった。
「なにが起きてやがる!」
「見回りに行ってたやつがやられたって言うのか?」
「相手はガキなんだろ!あいつら斥候だぞ!そう簡単にやられるわけがないだろ!」
「そうは言っても、この叫び声はきっとあいつだぞ。」
「まあ、いい2人で見てこい。念の為だ1人はギルドに応援を呼んで来い。」
「ああ。分かった。行ってくる。」
それから、しばらくしたらまた外から叫び声が上がった。
「どうなってる?」
「衛兵にでも見つかたのか?」
「いや。そんな気配はしない。それにこんな手は使わないだろう。」
「凄腕の斥候が、獲物を追い詰めてるような感じがするな。」
「お前ら、ここを守れ。」
「俺は、裏口から出て様子を見てみる。」
リーダーっぽいやつが、裏口に向かって行く。
「くそ!開かねえ。閉じ込めやがったのか。」
裏口に向かって、何回も蹴ってるが開かないらしい。
表の扉が、ゆっくりとあり得ない方向に倒れて行く。
俺は血を流しすぎてるのか、もうろうとした意識の中で、
扉が開いたのを見て、逃げ出さなきゃって思ったが、まったく体が動かない。
腕が折れ、足は抉られ、声も出せない。舌だけでなく喉も潰されたようだ。
女2人も、おびえた様子で扉を見ている。
扉は開いたが、誰も現れなかった。
「どういうことだ?」
男2人が、顔を見わせて扉の様子を見に行く。
「おい。まてお前ら。」
リーダー各の男が声をかけた途端に、扉を見に行った2人は唐突に倒れた。
「くそ!何が起きてる!」
リーダーが立ち上がり、扉に向かおうとした瞬間、俺も突然意識を失った。
次に起きたのは、天井がつるつるした部屋だった。
もうろうとした中、アリスの声が聞こえた気がした。
「ジャック!」
俺は、目の前にあるハルトの顔を見た。
「・・・ハルトか?」




