14 立場逆転 ~なんだかんだ言って心配してる~
前回のあらすじ
あくまで天使のナレーショナーがひどい目にあった。
~ニルソニア視点~
まったく。
ローゼが気絶するなんて誰も思わないじゃない。
そりゃあ、十年間一緒にいた私の配下なんだから、トラウマぐらい把握しているのが普通なんでしょうけど、初めて会った頃のローゼは何をしてもほとんど反応がなかったから、これほどとは知らなかったのよ!
「ハァー。落ち着きなさい、自分自身に腹を立てても仕方ないじゃない」
察してあげられたかもしれない、なんてすぎた可能性は考えるだけ無駄。
それより今は、私のベットで横になっているローゼに、看病といったらおかしいけれどそれに近いことをしましょうか。
といっても、どうすればいいのかしら?
私されたことはあっても、したことはないからよく分からないのよね。
う~ん、図書館に看病についての本、置いてあるかしら。
この屋敷の本って吸血鬼ぐらいしか読まない内容の本が多いから。
うまく全身の血を絞り出す方法とか、血料理のアレンジ集とか。
ま、行ってみれば分かるわね。
† † †
まさかこんなに早く見つかるとは、ね。図書館にあるテーブルの上に置いてあるとは驚きだわ。
……誰かが置いてくれた? まさかね。……私以外、誰もいないわよね、、、。
不安になってきたわ。ローゼのこともあるし、戻ろうかしら。
部屋でも本は読めるし。本当は図書館から本を持ち出してはいけない決まりなんだけどね。
うん、そうと決まれば、さっさと戻りましょ。
ドサッ!
あら、立ち上がった拍子に本を一冊、テーブルから落としてしまったわ。
あれ、この本タイトルが書いてないわね。
ちょっと見てみようかしら。
ペラ。
「~~~~~~~~~~~~~~~ッッッ///」
ナニコレ?! 本当にこれ何?!
裸の女の人がいっぱいで、お、お、男の人と~~~~///
た、爛れているわ! こ、これは私が責任をもって処分するわ!
その時まで私が管理するわ! よくって?!
† † †
[キャラ崩れてますよ? 顔真っ赤にして、早歩きで図書館から出ていくところを見ると、よほど恥ずかしかったんですね]
† † †
さて、部屋に帰ってきたわ。
この本はサイドテーブルにおいて、こ、この本はベットの下にでも入れとけばいいかしら。
……ローゼ、うなされてるわね。汗もびっしょり。
これは、お風呂に入れた方がいいのかしら――……
「ハァ」
まったく、何のために図書館まで行ってきたのよ。分からないことを調べるためでしょうが。
え~と、本にはなんて書いてあるかしら。
なになに、
『首にネギを巻き、お、お、お尻の穴にネギを差し込む』
ですって?
本当にこれで楽になるのかしら、人間は。
あ、これ『風邪をひいたときの対処法』だったわ。
こっちが、『寝込んだ時の対処法』ね。
えーと、
『服を脱がし、タオル(ぬるま湯に浸けた後、硬く絞ったもの)で汗を拭き、清潔な服に着替えさす』
『着替えさしたなら、汗をかいて体内の水分が減少しているはずなので、飲み物を用意する』
『※注意:寝ているときに飲ませない。死にます』
……うーん。今、私小さくなっているのよね。具体的には九十cmぐらい。
体も感覚も違うから、体が思うように動かないのよね。そんな私にやれるかしら。
ま、なるようにしかならないわね。
えーと、まずは、ぬるま湯とタオルね。
ぬるま湯は魔法で作って、と。タオルは……脱衣所ね。
おっと、洗面器を忘れていたわ。
このままぬるま湯は、フヨフヨ宙に浮かせといて、タオルのついでに取ってきましょ。
扉を開けて廊下に――さぶっ。冷えるわね。
靴下はいてからの方がよかったかしら。
いえ、取りに行っても今のサイズが無いわね。ローゼに頼まないと。
その配下は気絶しているし。
――まったく、もう。世話のかかるメイドだこと。
「ハァー」
冷たい廊下をペタペタ歩いていきましょうか!
† † †
[翼で飛べばいいのに、吸血鬼らしく。飛ばないとは、内心動揺しているんですね。わかります]
† † †
うぅー寒っ。足の裏が痛いわよ、まったく。
で、洗面器とタオルを持ってきたから、次は服を脱がすわね。
おっと、その前にぬるま湯を洗面器に着水させなきゃ。よいしょ。
それじゃあ、まずはベットの上に乗って、のって、の、って。
……届かない! こういう時、空が飛べたらいいのに――翼あるじゃない!
「ハァ」
何で気づかなかったのかしら。
まあいいわ。思い出したなら、存分に使いましょ。さいわい、翼は小さくなっていないようだし。
よいしょっと。
――まだ、うなされてるわね、ローゼは。
今拭いてやるわね。
あれ、どうやってこの服脱がすのかしら。
この子、時々変なとこにこだわるから、この子以外には理解できないことがあったりするのよね。
私しかこの家いないけど。
ほんとにどうやって脱がすのかしら。
――この。――この!
無理ね。こうなったら力ずくで! ――やぁ!
これでも、彼女は吸血鬼。
その腕力で衣装を力一杯引っ張ったなら
ビリビリ! バツッ! ブチンッ!
当然、破ける。
――あ、やっちゃったわ。ま、まぁ? あとで作り直してもらいましょ。そろそろ衣替えの季節だしね。
――うーわ。私の噛んだ後、乳房にまだ残ってる。あれが気持ち良かったの?
何で私これとお母様を間違えたのかしら。全然似てないわ。
ま、うなされてるし、さっさと終わらせましょ。
† † †
まったく、なんで私が給仕の真似事までしなくちゃならないのかしら。
そういうのは、『ア〇チャーの仕事でしょ』
[赤い悪魔はさっさと聖〇戦争にお帰りください]
そういうのは、ローゼの仕事じゃない。
おかげで、まいごになったわよ。傑作ね。三歳児が自宅で迷子。
この屋敷、二人で住むには広すぎるわ。
掃除できていない部屋もあったし、メイド増やそうかしら。
いえ、文句も、愚痴も、相談も、ローゼが起きてからね。覚悟しときなさいよ!
――っと! おっとっと! 危ないこける!
「――ふう」
危なかったわ。何もないところでこけるなんて。
この体じゃ、激しい運動は出来ないわね。
両手で紅茶が載ってるトレーを持っていることも原因だと思うけどね。
さて、バランス感覚もつかめてきたし、進みま――
――ガアアァァァンンンッ!!!
突如、空間が揺れた。
歩き出すために、一歩を踏み出そうとしていたニルソニアは、顔面からこけた。それはもう、盛大に。
バラエティーなら、3カメ分の映像は流れていただろう。それほど見事なこけっぷりだった。
なお、ティーセットは頭の上に掲げ、死守していた。
いったぁーっ! 何よ今の! ローゼは大丈夫かしら?! 地震じゃないし、魔法攻撃? いえ、今のは何かが割れるような音に近かった。だったら――ゆかちべた!
寝っ転がってないで、立ち上がりましょ! 寒い!
むぅ。三歳児の体の体からか、うまく立てないわ。
ティーセットを置いて、ゆっくりと立ち上がりましょ。
ほら、ゆっくり、ゆっくり、
「キャアアァァアァァアアァァアア――――――――ッ!!」
ゆっくりしてられないわ! 飛ぶわよ! 翼を広げて離陸!
私の部屋までは、たしかこのまま一直線!
見えた! 扉ジャマッ! ええい、
「≪開きなさい≫!」
よし! 開いた!
飛び込んで着地!
「ローゼ!! 大丈――――――――夫………?」
私疲れているのかしら。うん、疲れているのよ。
慣れないことを、慣れていない体でしたから、疲れているのよ。
ああ、だから、
ローゼが二人に見えるのよ。
次回
「初めての戦闘」




