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第二章 実験

私はコーヒーを手に取りながら、パソコンの前に座る

私は研究者である…と言うのが理由になるかはわからないが一日も休めば疲労は回復する

まぁ、研究者たるもの何日もゴロゴロしながら休息をとるわけにもいかないしな

私はコーヒーを一杯すする。

ブラックコーヒーの苦みが喉を伝うがそれがよいのだ

私はその映像の続きを再生した



「全てはね、”プロジェクト・カーリー”と言う計画から始まったんだ。聞いたことあるかな?」


『プロジェクト・カーリー』…?

聞いたことのない単語である

少なくとも私は…まぁ、もしかしたら世界のどこかにその計画の内容が書かれた紙があるかもしれないが…


「聴いたことなくて当然、これはある国の最重要極秘計画だったからね。大統領とかいろいろかかわっててさ、とにかく、世間にばれたらやばい感じの計画だったの」


どうやら、ある国の極秘計画の名前だったらしい

それなら知らないのにも納得がいく…それどころか旧人類の技術ならその資料などはもうまとめて消滅してしまっているかもしれない

道理で知らないわけだ


「その計画の内容はね、いわゆる生物兵器…つまり、なんかやばいウイルスを作る実験だったんだ」


生物兵器…ウイルスか…

私の記憶にある中で一番やばいウイルスの情報は…たしか”ペスト菌”というやつだ

情報では1億人もの人々を殺害したウイルスなのだが…それよりやばいということになる…


「国はね、やばいくらいの感染力のあるウイルス作ろうとしていて、そして、その実験は成功した…成功してしまったんだよ」


なるほど、それで旧人類は滅亡してしまったと


「ただ、その程度で死ぬ人類じゃないよ。」


…なんだって?

ペスト菌みたいなやつのさらに感染力を強くした菌が生まれただけじゃないのか?

私は例えば、ペスト菌が空気感染するようになるとかそんなものだと思っていたのだ

だが、言い方的にどうやら違うみたいだ


「そのウイルスは突然変異で異質だったんだよ。何が異質かっていうと進化のスピードがとてつもなく早かったんだ」


突然変異で異質?進化が早いだけでか?

私は小首をかしげる

昔にも進化が早い、似たようなウイルスはいたはずだ

『インフルエンザ』だったか?あれはAやBなど形態を変えながら、人に感染するタイプのウイルスだ

これは一種の進化の過程と言えるだろう


「あ、今、インフルエンザを思い浮かべたでしょ?バレバレだよ~」


なんだ?心を読む力がこの「ニンゲン」にはあるというのか?

いや、まぁ、心を読むとは少し違うか…


「インフルエンザなんかと一緒にしないでよね。言ったでしょ。あれは異質だって。そのウイルスは異質な進化を遂げたのさ。まぁ、もうもったいぶらずに教えるとそのウイルスは知能を手に入れたのだよ」


知能か…

そんなことがあり得るのだろうか

私たちの世界でウイルスが知性を持つ、つまり、脳みそを持ち、思考する力を持つことは到底考えにくいな

ウイルスとは自力で増殖できない極小の病原体だ

あの、小さな体に脳どころか考える力が身に付くなどとは到底考えにくい


「まぁ、そんなこと考えにくいし、考えないよね。そう、当時の科学者は考えなかったんだ。なぜなら、科学的にそんなことありえないと考えてしまっているから。でも、ウイルス側からしたらそんなこと知らんこったないし、好都合だった。ただ、それだけの話」


そうか、当時の科学者も私たちと同じ考えだったのか

”ウイルスが知能を持つ訳がない”と…

だから、誰も気づけないし、気づけるわけがなかったのだ


「で、結果的にウイルスの頭脳戦で全人類が感染してゲームオーバー!!致死率は驚異の100%!!もともと、感染力の強いウイルスを作る実験で生まれたから、当然、感染力も強いわけで、まぁ、ほんと、一瞬で全人類は感染しちゃって東京とかみたいにバッタバタ倒れて行っちゃったわけだよ」


にわかには信じがたし話である

知能を持つウイルスも致死率が100%という話も…あと、もう一つ、疑問がある…


「さぁ、名も知らぬ未来人君。君が何を疑問に思っているかなんて私には手に取るようにわかるぞ。そのなぞもひも解いてあげるとしよう」


そう言って、謎にドやりながら「ニンゲン」は話を続けた



その「ニンゲン」は突如として刃物を取り出す


「…先に言うけどさ…ドMじゃないからね?」


そう謎の発言をした後、あろうことかその「ニンゲン」は自身の左腕を刃物で刺した


「まっ…!?」


思わず声が出てしまった

それもそうだ

突如として、自身の体を刃物で刺したら誰でも声に出るものだろう

あと、まだ一日程度しかたっていないが、人柄がよいとでもいうのだろうか

私はすこしこの「ニンゲン」に愛着がわいてしまった

だからこそ、なおさら、心配というか…大きな声が出てしまったのかもしれない

でも、何故だ?なぜ自分の体を刺したのだ?

「ニンゲン」は自身で刺した傷口を抑えている

だが、普通、こういう時は苦悶の表情をすると思うのだが…

「ニンゲン」はいつも通り、笑っている

それに、刺し傷はよく見たら抑えているというより…

ただ、手を添えているだけ…?

やがて、その「ニンゲン」は手をどける

そこには衝撃的な光景が広がっていた


「なっ…!?」

「これが証明になるかわかんないんだけど…なんでかわかんないけど僕不死身なんだよね~」


見れば、その傷は完全にふさがっていた

すぐさま、幻覚を疑う

もともとその場所には傷口が無かったのではないかと

だが、それを否定するように傷口があった場所からは実際に血が垂れていた

不死身?そんなことありえるのか?

次から次へと非科学的なことが起きまくっていて、頭が痛くなってくる

到底信じられることではないが、今まさに映像内で起こってしまっていることなため、信じるしかない

こんな状況で編集とかできるとは思えないし、された痕跡もない


「んまぁ痛いことには変わりないし、不死ではあるけれど不老ではないからいつかどっかでくたばると思うんだけどね~」


不死ではあるが不老ではないのか…

普通”不死”とあれば、名の通り死なないと勝手に思っていたが…

どうやらそういうわけでもないみたいだ


「言うことはこんくらい?あー奈良に来た意味は実は特に無いよ。なんとなく、大仏の掌の上で話したかっただけなんだよね~。まぁ、いいじゃん。仏教関連で死者とか弔えるでしょ」


そう言うと、その「ニンゲン」は大仏の掌の上から飛び降りる


「いてっ...」


...なぜ、飛び降りたし...



「でさぁ~、その時、言ってやったのよ!!僕は暑いのも紫外線も嫌いだから(日焼け止め)クリームの一つくらいくれてもいいじゃないか?ってそしたらさ!?『お前を太陽の力で乾燥させてカピカピにしてやる。』とか言いやがんの!!僕もさ、そいつがケチって知ってたからなんも言わなかったけどさ!!なんかもっと直接言って欲しいよね。ほんとにあいつは許さない。まぁ、もう死んだから許さないもくそもないけど」


それから、しばらく謎のトークタイムが続いた

いや、ほんと、何の話をしているんだ?この「ニンゲン」は?

と言うかさっきから本当に謎のトークが続きまくっている

しかもその内容がまぁ、ひどいものだ

せっかくだからいくつか紹介してあげよう


①「僕、トイレの後は手を洗わないタイプなんだよね~。なんていうの?なんか嫌じゃん」


②「嫌だ!!皿洗いなどしたくない!!昔、皿を一度に10枚割ったことがトラウマなんだ!!あと、洗剤がもこもこするのが気に食わない!!」


③「ひょ…漂白剤?その話題はやめよう。昔、僕のお気に入りのドラゴンのパジャマをママがあろうことか漂白しやがったんだ。人生で一番殺意がわいた瞬間だったね」


といった感じだ

な、ひどいものだろう?

私自身としてはトイレの後は手を洗って欲しいし、皿を10枚一度に割るのは酷すぎるし、漂白剤に関してはなんか私がその話題を出したせいみたいになっているが、シンプル自滅である

と、そんなことを考えていた時だった

その...「ニンゲン」が…だ...


初めて笑みを崩した


だが、それはほんの一瞬ですぐに...その「ニンゲン」はまるで貼り付けるように笑顔を作った

それはまるで見間違いかどうか疑うくらいに

そして、見れば、その「ニンゲン」は何やら絵のようなものを踏みつけていた


「これは踏み絵って言ってさ、主に私はこの宗教には所属してませんよ~っていう印的なものなんだけどさ、僕、この人たち嫌い。だからこそ、踏みつけてやる」


その絵は二人、いや、3人の旧人類が書いてあり、真ん中にリンゴに似た木が生えている絵だった

木の奥の「ニンゲン」の性別はわからないが、前の二人組はそれぞれオスとメスであろう

ただ、何故嫌いなのか

私にはそれがわからない

裸の同類が嫌だったのか?

いや、そんな理由ではないだろう

そもそもこんな絵を見たことが私はない

つまりはこの絵の意味を知ることは不可能と言うわけだ

それこそ、何かの資料や本にでも書いていない限り…

ん…本?

いやまて…やはり何かで見た気がする…

ん~…だめだ…思い出せない

この件についてはまた、後日詳しく調べることにしよう


「でも木の奥の子は好きなんだよね~子供っぽくてかわいいじゃん?」


確かに子供っぽい…が…

私にはその「ニンゲン」…?がどうみても到底かわいいとは思えなかった

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