1-8:きれいなものがすき
……え、なに?
今、なにかに触れた気がした。
聞こえたというか、見えたというか。
なんかこう、思考の中を通り抜けたような。
かん、てい? すきる?
え、いつもの思考の切れっ端?
じゃあお約束いきましょっか、と脳内で前置きをしてから、美桜は手に持ったままのダイヤモンドの指輪を睨みつける。
「えいっ!鑑定!!!」
ε≡ ε≡ ε≡ ゆ ≡ び ≡≡ わ ≡≡≡
何やら不自然な思考が脳内を通過した気がした。
(え?)
え、じゃあ、と、今度は台座の地金にだけ集中してもう一度、
今度は脳内で叫ぶ。
(鑑定!!!!)
ε≡ ε≡ ε≡ プラ ≡ チ ≡≡ ナ ≡≡≡
(あっ、確定っぽい)
そう脳内で結論付けると、まずそっと箱を棚に置き、
それから母上のベッドにダイブした。
──そして、口には出さずに思考で叫ぶ。
(いや!!いや!!
あのさ!!
何!?……あれ。
みょーに使えるんだか使えないんだかわからないわね……。
いやまあ、真偽がわかるだけでも十分使えるとは思うけど。
スキルあるってそういえばアイリスちゃんさんが言ってたの忘れてたわ。これのことね?
他にどんなスキルがあるのかしら、なんで取れた?
……いや、そこは明白かも。明らかに鑑定士がやるようなことしたもんね、あたし。
だから、スキルがとれた。
ということは、そのスキルの名前に相当するような行為をすれば取れる……?
え、絶対どこかに攻略本あるでしょこんなん。
さすがにめんどいから探し出して取れるスキルは全部取らなきゃ。
人生は有限。そして攻略本はどうせどっかに転がってる……まあ貴族なら秘匿すると思うけど、ウチだって、腐っても伯爵家だし、手に入るっしょ。
よーーーし!みなぎってきたわぁ……
……あ、もっと検証続けなきゃ。)
よし、と美桜はベッドに埋もれた状態で閉じていた目を開ける。
── 風呂上がりの母上と目が合った。
「あっ」
「なに、してたの、かしら?」
……さすがの美桜でも多少こわいもんはある。
◆ ◇ ◆
…
……
「そう!これはパパがまだ学生だった頃に、 "親の金では買いたくねぇ" なんて言って、冒険者見習いを必死にやって生傷作りながら貯めたお金で買ってくれたネックレスなのよぉ〜。
まったく、あの頃の可愛げはどこに行ったのかしら」
「あは……あはは……」
ずっとこの調子である。
「……まあ、ちょっと可愛らしすぎてちょっと今の私には合わないけれどね。
でも、こうやってたまに眺めるの。やっぱりお金だけじゃなくて、必死に稼いで必死に選んでくれたっていうところがねぇ。……でもお金も大事よ。セラ貴方は賢いのだから、貴方より賢い人、が ──
── いるのかはわからないけれど、
しかし、とにかくイケメンを落とすのよ!男を転がすのが女!
いいこと?選ぶのはこっちなの。惚れたら負け。」
「あれ……、母上は父上に惚れてらっしゃらないのですか……?
── あんなに」
一瞬で母上は赤面した。
「ん゛ん゛っ……。いえ、そういうことも、あるのですよ。
悔しくなんかないですわ。あれは、あのときの彼が本当に……」
何かを言いかけ、口を動かしかけてから、きゅっと結び、
そしてきっぱりと切られた。
「……いえ、まだ貴方には早かったわね、この話はおしまいです、ほら寝なさい。」
「ええーーー!?!?!?」
「はい、おしまいです。
ああ……、それだけ宝石が好きなのはよく伝わりました。
今度一緒に買いに行きましょうね。私に似たのね……。」
母上は、 "ふふ" と零した。
── まあ、宝石とかは昔から好きでしたけど。
そういう母上と巡り会えて、よかった。
……ところで、冒険者って、なに?
あのモードに入ったママの話は、長い。




