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第三十四話 校内連続殺人事件

 さてそれから間もなくしての魔法学校にて。この場にて、明らかに学校関係者でない不審な者が“三名”校内に、警備員にも咎められることなく入り込んでいた。


 その内の二人は先程光二から要請を受けて、魔素人狩りに訪れた紺と黄。そしてもう一人は、現在授業中で教室にいる、ヒューゴのすぐ側の登喜子であった。

 本来生徒と教師以外の者が入ることのない学校の教室。だがこの日は、授業参観でもないのに、生徒達の机の後ろに、じっと教師でない大人が座り込んでいる。しかも背中に薙刀を抱えた、武装形態である。


「あの・・・・・・登喜子様。これは困るんですけど・・・・・・」

「えっ? 何がよ? 別に授業の邪魔してないからいいじゃない」


 それは堂々と言ってのけるのは、やはり登喜子であった。ヒューゴを初めとした、生徒全員が苦笑いしている中、彼女はヒューゴを守るために、自ら学校までついてきたのである。


「いやここに部外者がいる時点で・・・・・・。ていうかそんなにご子息が心配なら、学校を

休ませればいいでしょう!」

「馬鹿ね! 家にいれば安全なんて保証がどこにあるのよ!? 警察だって危険すぎて当てに出来ないのよ! それじゃあ休みなんて意味ないわ。どこにいても危険なら、私がつきっきりにするしかないでしょう!」


 狐耳女教師(以後、狐教師)の指摘に、それが当然と言わんばかりの主張をする登喜子。他人のことなどどうでもいいのか、もし他の生徒が事件に巻き込まれたら・・・・・・なんてことは微塵も考えてないようであった。


「ねえ・・・・・・あれ、あんたから言うことないわけ?」

「いや別に。あいつの奇行を、一々突っ込んでも仕方ないし・・・・・・」


 言い争いが始まっている登喜子と教師の様子に、生徒達は当のヒューゴも含めて、何も突っ込まずに傍観しているのであった。







 多くの生徒が授業中で、誰もいない学校の廊下を、紺と黄が意気揚々と歩いていた。和風デザインの制服のこの学校で、何故か洋風のセーラー服の女子が歩いている光景。

 今は誰もいないので何も感じることはないが。もし休みになって、生徒が廊下に出て来れば、その文化感の違いで、違和感が大きく出るだろう。


「いや・・・・・・迷ったわね。理事長と校長はどこ?」


 全く困った雰囲気はなく、朗らかに迷子宣言をする紺。わざわざここまで訪れて、せっかく学校の最高権威者に、親切にも暴力を振るって上げようとしているのに、向こうからの出迎えがないのでこうなってしまったようである。


「いっそこのまま、学校の散策をしばらく楽しんじゃおうかしらね~~」

「いや・・・・・・それはやめた方がいいんじゃ? 生徒が出てきたら、僕たち思いっきり浮きそうだし・・・・・・」

「そんなの堂々としてれば・・・・・・」

『いやーーーーーー!』


 最後の一文は、どこかから遠くから聞こえてきた、謎の悲鳴。常人より優れた聴覚を持った二人がその声を聞くと、大急ぎで何故か楽しそうに、その方向へと走って行った。







「お~~い! どうした?」


 気の抜けた声で、とある教室の扉を開ける。するとそこには紺達とは対称的な、殺伐した光景が広がっていた。

 明らかに生徒でも教師でも用務員でもない、異質な存在が入り子で来たことに、動揺する教室内の者達。だが紺達は、彼ら以上に動揺するものがあった。


 ・・・・・・そこは殺人事件の被害現場であった。多くの生徒達が、教室の奥の壁へと、押し固まるように引っ込んでいる中、ここの教師と思われるものが、魔力を帯びた剣を握っている。

 そしてそんな教師の足下には、頭と胴体が離ればなれなった、一人の生徒が横たわっていた。


 どうやら熱を帯びた斬撃によるものなのか、切断面が焼け焦げて、一切の流血なしの、生首と首無し死体。

 そしてその教師と思われる二十代ほどの祖人男性の剣は、炎の魔力を纏った剣である。これはもう、犯人が誰なのか明白であった。


「ちょっと君!? 一体何だね? 部外者が勝手に入ってきていいところじゃないぞ!」


 そんな風に、真剣な表情と口調で、歪みなく紺達を避難する教師。そしてその様子に、誰だか知らないが助けてくれといわんばかりの様子で、紺達に一斉に目を向ける生徒達。

 何となく事態が呑み込めた気がするが、とりあえず黄が問いただしてみた。


「いや・・・・・・僕たち、一応王室から許可を貰ってきたけど」

「うん? ああ、そう言えばそんな話があったな。しかしだからといって、急に授業に割り込んでくるのは感心しないぞ」


 実に真っ当な言い分で、足下にある死体を全く気にせず説教する教師。その教師は、自分に何かおかしな所があるとは微塵も思っていない様子、まさにいつも通りの振る舞いをしているように見える。


「・・・・・・授業って? その倒れてる首がもげた方は何? 人形ですか?」

「いや、そうではないぞ。実はこの子はとても困った生徒でね。ある生徒が徒党を組んで、一人の生徒に資金を暴力をもって徴収するという、素晴らしい行いをしていたんだが」

「素晴らしいっていうか、カツアゲだろそれ・・・・・・」


 この国でもそんな愚か者がいるのかと、紺の呆れ顔を無視して、教師は悟りきった顔で長々と説明を続ける。


「だがこの子は、気でも触れたのか、それをやめさせようとしてね・・・・・・。それでついさっき、それに関して追及していたんだが、全く自分の間違った行動を反省しないばかりか、他の生徒までそれに同調して、私とあの善良な生徒達を責め立ててきたんだよ・・・・・・。どうやらこの子のせいで、私の可愛い生徒全員が、悪の心に染められ始めていたようだ・・・・・・。仕方ないので、私自ら命を持って罰則を与えたばかりだ。どうやら私の強い思いが通じたようだ・・・・・・。この通り、皆が涙を流して震えながら、この愚か者に感化された間違った主張を反省する姿が・・・・・・ほごっ!?」


 もうこれ以上は聞いていられないと、説明の途中で紺が飛び出し、正面から教師の顔面に、正拳突きを喰らわせる紺。顔が潰れ、衝撃で首の骨が真後ろになって倒れる教師。今までにも見てきた光景だ。


「「おおおおっ!」」「やったぞすげえ!」「ざまあみろ! いかれ教師!」


 教師が倒れながら折れた首と顔面が再生していく中、この状況を見た生徒達が、先程カツアゲをしていたという者達含めて、全員が歓声をあげるのであった。






 程なくしてこの学校で起きた殺人事件が警察に報告されて、現在学校に多くの警察車両と警察官が押しかけてきた。

 当然授業は全て中止で、校舎から退出されていた大勢の生徒達が、校舎前の校庭で様々な会話をなしていた。


「冗談かと思ったけど、マジだったのかよ? やばすぎだろ・・・・・・」

「あの先生、いつもで温厚で優しげな感じだったけど・・・・・・信じられないわ」

「噂だと悪霊がはこびって、多くの人が狂わされてるとか。それなら判らなくもないが・・・・・・」

「いや不味いってこれ・・・・・・これじゃいつ誰が狂って人を襲い出すか・・・・・・」

「ああでもこれで今日は学校は休みだな~~それで今日はどこいく?」


 そんな喧騒を行う者達の中に、紺と黄、そして登喜子とその子供らも当然いる。そんな会話を聞いている紺が、黄がヒソヒソと話しかける。


「ねえちょっと・・・・・・あれって、もう十年以上も前から洗脳されてるはずよね?」

「うんそうだよね・・・・・・それで今まで温厚で優しい先生と思われてるんなら、事件が起こるまで誰一人、あの人の本性に気付かなかったっていうことだよな・・・・・・。本人に悪意が全くないせいで、事が起こるまで誰にも見抜けないってことか?」

「うわ・・・・・・魔素人こわ・・・・・・。これじゃいつ誰が事件を起こすか、判ったもんじゃないわ・・・・・・」


 そんな二人とは大分離れた位置で、登喜子がヒューゴに話しかける。


「ヒューゴ・・・・・・ネル・・・・・・今日から学校へ行くのも禁止よ。警察どころか、学校すら信用おけないわ」

「ああうん・・・・・・どっちみ学校はしばらく休校だろうけど・・・・・・」

「じゃあやっぱしばらく早めの春休みですなぁ♫ じゃあ今度はどこに・・・・・・」

「外出も禁止に決まってるでしょ!」

「最近の姐さん、正論を言いすぎて、らしくないですぜ・・・・・・」


 さて各所でそんな会話をされている中で、事件が起きた校舎から、多数の警察に囲まれながら、とある若い男女が現れた。


「あいつ誰だっけ?」

「バーカ、理事長と校長だろ、顔ぐらい覚えとけ。まあ俺も名前は知らないけどよ」

(理事長と校長!?)


 事情聴取でもされるのか、警察に連れられながら、生徒達の群れを横断して、警察車両のある駐車場に向かっていく二人。そんな様子を見て会話する生徒達の声を聞いて、紺達が大きく反応した。


「ちょっとどいて・・・・・・はぁ!」

「「!?」」


 ゴン! ゴン!


 それは瞬時の出来事であった。紺が生徒達をかきわけながら、理事長と校長のすぐ側に出ると、いきなり問答無用に飛び出す。

 優れた身体能力によって放たれる、瞬足の踏み込みと拳。それに警官達は、止める暇もなく。紺は二連打で一発ずつ、理事長達の顔面を殴りつけたのである。


「「!!??」」


 いきなりの事態に訳が判らず唖然として、一気に喧騒を止める生徒一同。そして理事長と校長は、先程の教師と同じように、顔が潰れて首が折れて倒れ伏す。


「ちょっと紺! いきなりすぎだろ!」

「きさま何をしている!?」


 紺を追いかけて慌てながら現場に飛び出す黄。そしてこの事態に一斉に刀や銃を抜き、紺達を臨戦態勢をとる警官達。

 我に返った生徒達には、逃げ出すものと興味を持ってその場に留まる者の、二組に分けられることとなる。


「そんなピリピリしないの・・・・・・いまこいつを正気に・・・・・・あら?」


 そこで紺はおかしな事に気付いた。不死身の魔素人は、例えで致命傷を負っても、すぐに生き返る存在である。それは紺達に殴られ、呪いが解ける直前であっても同じである。

 だが今倒れ伏した、理事長と校長は、未だに傷が再生する様子がないのだ。ただ痙攣しながら、コンクリートの地面に赤い沼を作りながら、沈黙するだけである。


「何かしらね・・・・・・再生が遅いけど?」

「多分だけど・・・・・・この人達、魔素人じゃなかったんじゃ?」

「ああなるほど・・・・・・だった当然死ぬわよね。あっはっは!」


 見込み違いをしていたことに、軽い笑い声を上げる紺。そんな軽い調子の二人とは裏腹に、警察達は今日ここで、二度目の殺人事件を起こした者達に、悠然と声を上げた。


「貴様を逮捕する!」


 ちなみに一連の事件の被害者の、首を斬られた生徒と、顔を潰された理事長達は、この後で桜花の時間を巻き戻す魔法で生き返りましたとさ。


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