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第十三話 国王との対面と拘束

 この事件により、王宮門前で大勢の警察がうろつくようになって数時間。彼らが現場検証している最中の王宮内にて。


「あの・・・・・・私も宜しいでしょうか?」

「えっ? ええ・・・・・・」


 振動刀に斬られた二人は、揃ってすぐに、王宮内の医療施設へと運ばれた。

 本来ならば、王族などの高貴な者が診察を受ける場だが、緊急事態だと晴子がここに二人を運ぶよう命じたのである。


 だが王宮医官が診断したところ、二人は急所をやられて、既に命はない状態であった。

 既に事切れた二人の身が、寝かされている部屋の中に、心配した晴子が、自ら訪れたのである。


 王宮内の外れの場所に訪れた、巨体の国王の姿に、医官が大分気圧されながら、晴子と二人の配下を部屋へと通す。


 ちなみにその配下は、先程テレビ電話に出た鹿太郎と、もう一人は同じ制服を着た獣人と思われる少女である。

 十代半ばと思われるが、こちらも鹿太郎と同じく守衛にしては若すぎる。

 金髪の頭の、両側の耳の形が、上向きに妙に尖っている。顔や服から覗く彼女の肌は、まるでカエルのように緑色であり、純人だらけのこの王宮内では、晴子と同様にかなり異質な外観である。


「ああ、さっき聞いたんだけどさ。あの殺人議員、聞き取りをしていたら、やっぱりあれだってさ」

「そうでしたか・・・・・・」


 その緑色の獣人少女の言葉に、晴子が悲しげに俯く。そしてベットで白布にかけられて横たわる二人に語りかける。


「どこのお方かは存じませんが、こちらの不手際で本当に・・・・・・すぐに桜花様をお呼びしますので・・・・・・」

「ああ、私は紺だ。そんでこっちが黄・・・・・・」

「「ひゃあっ!?」」


 突風のような一瞬の流れであった。

 晴子が語りかけた途端に、ついさっきまで死体だった二人が起き上がり、白布を手に取りながら、話しかけてきたのである。


 これに隣にいた医官達が、絶叫を上げてしまう。かくいう晴子と二人の配下も、突然のことに目を丸くして固まっていた。


「ああ・・・・・・今日で何回目だよ、死ぬの・・・・・・」

「まあ、久々の人里に出て来たんだ。今の世の中は、とても死にやすい社会だということじゃない?」


 傷はおろか、血染めで斬り捨てられた衣服も、今は元通りに綺麗なもの。そしてベッドに降りて、目の前の晴子達を、紺は興味深げに見つめる。


「しかし体格のいい人間ね・・・・・・服装からしてこの国のお姫様? それじゃここは王宮の中なのかしら?」

「えっと・・・・・・私は国王で・・・・・・確かにここは王宮ですけど・・・・・・」

「ていうかおまえら生きてたのか? さっき死亡確認がされたって聞いたが・・・・・・。まだ桜花が来てないけど、登喜子(ときこ)が修復したのか?」

(おうか? ときこ?)


 謎の人名に困惑する二人だが、鹿太郎が聞いたのは、振り向いた先の医者の方。

 彼らが必死で首を縦に振る。彼らの診断に、確かに間違いはないはずであった。


「傷もないが、いつのまに回復魔法を?」

「そんなことより、あれはどういうことだよ。ここじゃ話しをしに来ただけで、死刑なのか!?」


 紺と違って、かなり不愉快な声で問いかける黄。まああんな一方的に斬り殺されたのだから当然だが。


「そんなわけないだろ! あれはまあ・・・・・・諸々の事情があってな」

「諸々の事情って何だ? 太政大臣が俺らに暗殺命令を下したことか?」

「ああ、それはな・・・・・・」


 かなり剣呑な空気になってくる。黄の問いかけに、守衛達も中々うまい返答ができず、随分態度が低い。

 そんな空気を無視して、紺が本題とは全く別の問題を口にした。


「そんなことより、何か食べる物ない? もう朝から何も食べてなくてさ。まあ、私は食べなくても死なないんだけど、気分があまりのらなくなるっていうか・・・・・・」







 場所は移り変わって、王宮内の職員食堂にて。一般食堂と変わらない雰囲気の、幾つもの椅子が並べられた、飾り気のない大部屋にて。


 もう時間は過ぎて閉めてるはずのその場が、風変わりな客の出現で、再び開かれていた。

 その場にいる食事客は紺と黄の二人だけだが、それを監視する大勢の守衛達で、この食堂はやや重苦しい空気で賑わっていた。


 周囲に、鹿太郎達も含めた、武器を持った守衛達が囲む中、白くて長い食卓で、職員用の料理を、ゆっくりと食べ続ける二人。その近くには、専用の大型椅子に座る、晴子の姿もあった。

 本来この場は、彼女のような身分が来るのではないのだが、本人の志望で共に移動したのだ。

 守衛達が警戒する中で、晴子が戸惑いながらも、二人に様々なことを聞いてくる。


「せっ、千五百年も森の奥で・・・・・・貴方たちはいったい?」

「さあ? あまりに長くて、もう全部忘れちゃったわ」

「ていうか黄とかいうの。お前は冥界の鬼神達の仲間じゃないのか?」

「? いや知らないけど・・・・・・」


 彼女達のこれまでの経緯や、不死の能力のことを聞いて、晴子だけでなく、この場の誰もが戸惑っている。

 普通なら信じられる話しではないが、つい先程、ありえない復活を遂げたばかりである。

 これに晴子の傍にいた、鹿太郎達が先の声を上げた。


「さっきまでの話しだと、どうもお前達がいたのは“女神の森”みたいだが・・・・・・あの森に住むと、人が不死身になるなんてあるのか?」

「俺はまず、あの森に人が住んでたなんて話しに、むしろ驚きなんだけど・・・・・・」

「ていうかその女神の森って何? 前にも聞いたが、あそこは外じゃどういう風に言われるんですか?」


 そう聞き返すのは黄。以前にもあの女魔道士も口にしていたが、あの何も判らず暮らしていた森は、どうも外の世界では、かなり特殊な場所として認知されているようだった。


「良くも悪くも色々な・・・・・・魔力濃度が異様に濃くて、大昔は霊草なんかをよくとれる大事な資源地だったが、その内やばいモンスターも住み始めて、誰も近寄らなくなったとか・・・・・・ああちょっと待って」


 そう言って鹿太郎が、懐から取り出したのはネット接続可能な携帯、要はこちら側の世界でいうスマートフォン。それを操作して、何か色々な調べ物をしているようだ。


「ああ、何でも・・・・・・かない古い文献だと、千五百年ぐらい前までは、普通の森だったらしいな。その頃に、森の奥で若い女の姿をよく見かけられて、この森をおかしくした魔女とも女神とも言われるらしいが・・・・・・これはお前らのことか?」

「さあ? さっきも言ったけど、昔のことはあんま覚えてないのよね」

「ふうん・・・・・・しかし不死の女神なんては、何も書いてないな。そのランスロットって奴、どこでそんな話しを聞いたのやら・・・・・・」


 生憎ネットに書かれている範囲の情報では、紺達の事に関しては何も判らない様子。

 当の紺は、そんなことに最初から興味がない様子で、別の質問を投げかけてきた。


「ところでさ・・・・・・私は長いこと引き籠もって、外の世界の事全然知らなかったんだけど。あいつが言うには、ここは昔はゲード王国って国で、大蛇とか言う異国の侵略で、国を乗っ取られたそうだけど? それって本当?」


 その話に、この場は少し気まずい雰囲気になる。要は紺は今、目の前にいる者達を、野蛮な侵略者ではないかと口にしているのだ。


「ああ、まあ・・・・・・それはな・・・・・・」

「それは事実ですよ・・・・・・。この国は私の祖国に武力制圧されて出来上がった国です。それを指示したのは、大蛇帝国の(みかど)の私の大叔母です」


 鹿太郎が言いづらそうにしている中、真っ先に肯定の返答をしたのは晴子であった。

 そして属国となったこの地の国王の自分が、その侵略者の首領の親族であることもである。

 更に詳細な説明を、国王が自ら続けていた。


「紺様達は何も覚えておられないそうですが、恐らくお二方が森に篭もられたときと、今のこの国は、果てしなく変わってしまっておられると思います・・・・・・」

「そうなんだ? まあ、確かに違和感はあったけど・・・・・・」

「ええ、私の祖国は、異世界と交流する術を手にしてから、異世界の多くの科学技術を取り込んで、自国を急速に発展させました。・・・・・・その発展に欲をかいたのでしょうね。更なる発展を求めて、他国の土地を奪い取る事を始めたんです。それはこの国だけでなく、このゼウス大陸の多くの国が、大蛇帝国に制圧されました。それらの国は、旧権を全て根絶された上に、文化や技術を、急な勢いで、大蛇帝国のあるアマテラス大陸の様式の者に書き換えられてしまっています・・・・・・」


 紺達が見てきた、この国の街や人々の、和洋折衷な光景。

 そして少し前まで、剣と魔法の古風世界だった場所に、列車や浮遊車両が飛び交い、街には大型テレビが設置されている、違和感ある光景。

 それらは全て、ほんの十数年前から、侵略国家によって、国そのものが改造されている最中であるがゆえの光景だったのである。


「このようなことをしてきたせいで、やはりこの国の人々には、私達を恨む方は多いみたいです・・・・・・。今日もかつてのこの国を愛した方に、私が殺されかけてしまいまして・・・・・・。正直あのような方々に、私はどう答えればいいのか何も・・・・・・」

「殺されかけ? いや死ぬ可能性なんてゼロだっただろお前の場合。どうせ毒盛っても大丈夫だから、毒味役もついてねえし」

「雅弘、口を慎め!」


 国を奪った者達の、代表格の一人である己の立場に、晴子は悲しげに俯いていた。

 もっとも緑色の獣人の少女=雅弘が、また礼儀のない補足をしていたが。


「ふうん・・・・・・そんな嫌な思いをするぐらいなら、なんで国王なんかになったのよ?」

「べっ、別に好きでなったわけではありません。私もどうして、こんな臆病者が、こんな大役に・・・・・・」

「ああそれはな。見た目も中身ごついからだよ。化け物みたいな見た目な上に、めっちゃ固くて馬鹿力だからな。何でも小さい頃、相撲ごっこで熊をぶっ飛ばしたとか。こんな物騒な奴を国王にすれば、誰も新政権に逆らわなくなるだろうと、上は考えたそうだぜ」


 バチン!


 二度目の遠慮のない発言をする雅弘に、近くの守衛が無言ではたく。それに大して痛がる素振りもなく、雅弘はせせら笑っていた。


「私としても、どうにかこの国の人達に、詫びることをしたいと思うのですが・・・・・・。実は私、政治の事なんて、殆ど知らないんです。今後の議会の予定も、全部光二様が担当することになって、実質私はもうお飾りで・・・・・・」

「別にいいんじゃないのか? 難しいこと考えず、ただ天辺に座ってるだけで済む仕事なんて、うらやましいぐら・・・・・・」


 バチン!


「ほげっ!?」


 雅弘に対する二度目のはたきをしたのは黄であった。この一撃は効いたようで、雅弘は叩かれた頬を抑えて悶絶している。


「はあ・・・・・・それは少し困った話ね。私あいつらから、あんたらを倒す手助けをしろって、頼まれて外に出てきたんだけど・・・・・・」


 紺のこの言葉にまた場の空気が変わった。今まで以上に剣呑な様子で。この後の紺の言葉次第では、両者の殺し合いになりかねない事態である。


「えっと・・・・・・紺様達は、どうなさるおつもりでしょうか?」

「知らん」


 晴子の率直な質問に、紺は実に単純な回答を率直に返す。これはこれで困る会話であった。


「さっき言ったけど、私らまだ、外のに出て一日しか経ってないしさ。どっちの味方をすればいいとか、判るわけないでしょうが。なんかあいつは、文化とか技術とかの話とは別に、大蛇が重税でこの国の民を苦しめてるとか言ってるそうだけど?」

「それは・・・・・・」


 この紺の言葉に、晴子がまたもや戸惑う。それに鹿太郎が、即座に変わるように話を続けた。


「それに関してだがな・・・・・・お前らが会った、そのランスロットという男は恐らく・・・・・・いやそれはいい」


 何かを話そうとした瞬間に、何故か急に鹿太郎までも話しを急に止める。

 周りの守衛達や雅弘が、何故か鹿太郎に冷ややかな眼差しを向けており、何か話しづらいことがあるのかと、紺達が不審に思う。


「何よ、言うことがあるならはっきり言いなさいよ」

「そんなことよりさ・・・・・・そのランスロットとの落ち合い場所ってここか? 最初これ見たときは、何の地図か判らなかったけどよ」


 雅弘が急にそう言って取り出したのは、血濡れの書類用紙袋である。それはまさに森を出る前に、ランスロットが紺に差し出した物に違いなかった。

 これを見たとき、ずっと平静だった紺が、今になって始めて怒り出す。


「ああっ!? それ勝手に出してみたわね!? 何のつもりよ、人の持ち物を勝手に・・・・・・」

「いや、そうは言ってもよ。最初お前らもう死んだと思ったし、警察も身元確認が必要だと思ったはずだしよ・・・・・・」


 ちなみにその警官達は、皇宮外にて数人ほど、紺達を待って待機中。国王の指示で大人しくしているが、紺達が建物外に出たら、すぐにでも彼らの取り調べに出るだろう。


「警察か・・・・・・僕らまだ外に出て一日だけど、この国の警察によい気分じゃないな。そんなことよりそれ返して! まさかコピーとか取ってないよな!? どっちの味方になるにしたって、情報を横流ししたなんて疑われたら、こっちの気分が悪いんだよ!」


 黄も今までになく怒っている。別に書類を人に見せるなと言う約束はしてないが、そんなことをせずとも、今のが完全に道義から外れていることぐらい判る。

 だからといって、反乱者の情報を、破棄しろとかいわれても、王宮側としても困る話だが。


「それと今の話しを、他の誰にも言うな! その地図、今まで何人見たか知らないけど・・・・・・」

「あのなあ・・・・・・そんなこと言われたって・・・・・・」

「・・・・・・判りました。お返ししましょう」


 晴子が急にそう言って、いきなり雅弘の手から書類を奪い、紺達に差し出す。これに他の守衛達も当惑しだした。


「これに関してコピーとは取ってないのですよね?」

「ああまあ・・・・・・」

「ではここで紺様達からお聞きした、反乱者の話は他に流さないと誓いましょう。皆様も宜しいですよね?」

「「!?」」


 この国に仇なす者の情報を、国王自ら伏せると言い出すという、ますますおかしな事態が起きてしまった。


「お二方が仰るとおり、人様のお持ち物を勝手に見た挙げ句、それを他所に流すというのは、あまりに不誠実な話しです。それが例え、犯罪や国政に関わる話しであっても。こういうのは例え、効率悪くとも、私達が自らの力で得なければ・・・・・・」

「ええやだよ!」


 この国王の言葉に、何の迷いもなく、堂々と楯突く者が現れた。それは先程書類を取られて、不機嫌状態の雅弘である。


「折角あの害虫共の居所が分かりそうなのに、何でそんな遠慮が必要なんだよ。お前馬鹿じゃねえの?」

「ちょっ・・・・・・国王の命令ですよ!」

「さっき自分でお飾りって言ったくせに? もういいや、外の警察共に、このこと話してくるわ!」


 そのまま背を向けて、外に通じる通路へと歩き出す雅弘。どうやら本気の国皇の命令に逆らう気のようだ。

 そしてその行動を止めようとするものは、晴子以外にいなかった。


「止めて下さい!」


 ゴキッ!


 その瞬間にとても嫌な音が聞こえた。

 今の音源が何かというと、警察に向かおうとした雅弘の肩を、晴子が慌てて後ろから掴み出したのが原因の音である。


 晴子と雅弘の体格差だと、幼児を止めるような、簡単に止められる体制。

 だが焦った晴子は、その時に掴むときの手加減を忘れてしまったようであった。


「ほげぇえええっ!? 何すんだこのデカ女!?」


 雅弘の悲鳴と共に、慌てて晴子が手を離すと、雅弘は肩を押さえてその場でのたうち回る。

 そして見上げる形で、晴子に怒りの声を上げると、肩を砕きかけた当人がたじろいでいた。


「ごっ、ごめんなさい!? すぐに医者を!」


 すぐ近くにいた医官達が、迅速に雅弘を担ぎ上げて、医療施設に運び込む。この一晩で、二人目の患者が出てしまう珍事態である。

 その場で白い目をしながら、黄が口を出した。


「まあ・・・・・・この地図のことは、もう秘密にするってことでいいんだよね?」

「はっ、はい・・・・・・お騒がせして申し訳ありません・・・・・・」


 なんだか結構重い決定が、お飾りの筈の国王の判断一つで決められてしまった。

 周りがどう言えばいいか悩んでいる中で、黄がもっと深刻なことを口にしてきた。


「それで太政大臣はまだ来れないんですか? 僕たちを殺そうしたのって、事実なんだよね?」

「えっ!? いや・・・・・・」

「それは忘れてくれないか? どうせお前ら死なないんだし、そんな気にすることないだろ?」


 鹿太郎のそんな無責任な追及にも、勿論彼は退く気はない。


「馬鹿馬鹿しい・・・・・・それで納得する人がいるわけないだろ! 太政大臣はどこだよ!?」

「ああ、私も少し会いたいなぁ・・・・・・外に出てから、妙にキチガイに会うし、その辺が気にかかるのよね」

「ええと・・・・・・光二様は今、お仕事中で・・・・・・今は確か、東館の客間で・・・・・・」

「晴子・・・・・・素直に答えるなよ」


 鹿太郎が呆れる中、当の二人は何故か、関係のない食堂内の一角の壁に目を向ける。

 なんとそこには、まるで観光案内のように、この王宮の見取り図が、大きく壁に掲示されているのである。

 そこにある現在地と、東館の位置を、この距離から優れた視力で見極める。そして二人は早速立ち上がった。


「ありがとう、じゃあ私ら行ってくるわ。ああところで、私の刀はどこ? 会う前に返して欲しいんだけど」

「そんなの返すわけないし、そして行かせるか! お前ら、こいつらを取り押さえろ!」


 言葉を返したのは、鹿太郎とは別の、今まで黙っていた守衛。

 どうも身分の高い人物らしく、彼の指示で他の守衛が一斉に構え出す。気が早く銃口を向けたり、刀を抜く者までいた。


「やれやれ物騒ね・・・・・・でも私ら、殺されても死なないし、そんなの無駄よ」

「私の話を聞いてなかったのか? 殺すのではなく、取り押さえるんだよ」


 この夜、一日の内に様々な事が起きすぎた王宮内。籠城時に使用する予定だった、皇宮内の地下牢に、不死の女神は監禁されることとなる。

 ちなみに例の地図は、結局の所、一切が秘匿されることとなった。元々血濡れで、殆ど見れない状態だったこともあって。







 そしてこれもまた余談であるが。門前で紺が斬られた時に、血に濡れた彼女の身体や、門前の地面を吹いた布巾やモップが、妙な変異を起こしていた。


 布巾は突如、少し身体を拭いただけで、人の体力を全快させる魔法の布巾と化し、捨てるはずだった職員が、こっそり売って大儲けしていた。

 またモップは、水も何もつけなくても、少しこすっただけで、床の汚れをとてつもない効率で落とす魔法のモップと化し、その後の王宮に勤める掃除人達に重宝されることになる。


 ついさっきまで何の力もない備品が、何故このような魔道具に変じたのか? 全ては謎のまま、世にも不思議な話しであった。

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