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一日に約1分ズレる腕時計  作者: A.O.C.DESIGN
第三章 Secondi Piatti
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29/30

第二十九話 流行る店

「土曜日のミーティングに出勤したみんな、

ありがとう。

提案書は一通り見させてもらったよ。」


月曜の朝。

サブローが礼を述べる。


「全てを一度に進めるのは難しい。

しかし、どれも前向きに考えている。

何よりも、こんなに提案が挙がって来たのは、今までにない。

素晴らしい事だ。

このムードを大事にしないとな。」


全員、無言。

サブローをしっかりと見つめ、聞いている。


「世間はAIの活用について、まだまだ理解しきれていない。

我が社も、もちろんそうだ。

便利な機能に期待が膨らんでいる。

しかし、悪用への不安もだな。」


サブローは真っ直ぐに前を見つめる。


「その中で、我々はAIを使う、という選択をした。

会社の舵を切った。

どのような結果が得られるかは、わからなかった。」


一呼吸。

吸って、少し溜める。


「私は今、AIに期待している。

それが全員の能力を伸ばしてくれる存在になってくれたら、と。

•••そして、もちろん。

それ以上に、みんな一人一人に、期待している。」


サブローはハリーを見る。

「ハリー、引き続きよろしく頼むよ。」


「はい!」

ハリーは即答する。


「それと、もう一つ。

私から、新しい議題を与える予定なんだが•••。」


サブローはジョーを見る。

ジョーはうなづく。


「それぞれ、考えてもらいたい。

これから流行りそうな、イタリアン・レストランについて、だ。」


サブローはニヤリと笑みを浮かべる。


社員たちは顔を見合わせる。


ハリーは目が点になる。


ルカは瞳が輝きだす。



朝のミーティング後。


ショータがハリーに話し掛ける。


「この前はすみません。

じいさん、あの後すぐに、帰って来たんで。」


「あ、あぁ、そっか。

おじいさん、具合はどうなの?」

「大丈夫ですよ。

じいさん、病院の帰りに、ばあさんとブラブラ散歩していたんだそうです。」


ハリーは安心した表情を浮かべる。


「そうか、良かった。

へぇ、おじいさんとおばあさん、仲良いんだね。」

「そうっすね。

昔っから、いっつも一緒にいますね。

オレ、小さい頃。

二人に面倒見てもらっていたんで。」


「あー、育ての親みたいな?」

「それに近いかも。」


ショータは嬉しそうに笑う。


「紙袋もちゃんと渡しておきましたよ。

じいさん、申し訳なさそうにしていましたけど。

中身を見て、良い酒のアテになりそうだって。」

「あー、おじいさんお酒好きなんだね。

そっか、知っていればお酒にしたんだけどな。」


「じいさん、酒飲むと話好きになって面白いんですよ。

普段は無口なんですけど。」

「へぇー、意外な面もあるんだね。

すごく固い感じの人だと思っていたよ。

時計みたいに、きっちりしていて、仕事一筋って。」


ショータはハリーの腕時計を見る。


「あ、そうだ。

ありがとうって言ってましたよ。」


「うん?」


「ハリーさんが時計を自分で直した事。」


ハリーは右手で腕時計を掴み、盤を見る。

そして笑みを浮かべる。


「まぁ、まだズレてはいるんだけどね。」



「流行りそうなお店?」


「はい!

新しいイタリアンのお店はどんなお店がいいのかって。」


ランチの後。

食堂のメグにルカが話す。

サブローからのお題について。


「なんだい。

レストランでも始めるつもりなのかね。」

「うーん、そうなのかも。」


「何考えてるかわからないけど、そんなに簡単なもんじゃないと思うけどねぇ。」

「うーん、そうですよね。

この会社、食材を作ってはいますけど、飲食店のノウハウはまた別ですよね。」


ルカは食堂を見渡す。

明るい店内。

テーブルの生花。

居心地の良い空間。


「メグさんは、どんなお店が流行るんだと思いますか?」

「さぁね。」


メグは片付けをしながら答える。

「いい店ってのは、客が決めるもんじゃないのかい?」


「たしかに。」

ルカは納得する。



「ねぇ、リッくん。

おすすめのイタリアン・レストランってある?」


「はぁ?

オレに聞く?」


ミーナの問い掛けに答えるリク。


「レストランって、女子ウケ狙いばっかりじゃん。

大盛りガッツリで、大声上げてもいい店とかねーじゃん。」

「あー、ごめん。

リッくんてレストラン向きじゃないかー。」


ミーナはがっかりする。

「そっかぁ。」


リクは少し考える。

「んー、でも。

マネージャー、一緒に行ってみる?」


「えぇ!?」


「この会社のピッツァ生地使ってくれてる店、行ってみてーかも。」

「あー、そうだよね!

リッくん、お得意様のお店、行った事もなかったよね。」


「ボスのお題の事だろ?

オレも、ちょっと考えないとな。

チーム『Tricoloreトリコローレ』のメンバーと話ができないとマズイ。」


「うんうん、そうだよ。

じゃあ、一緒に行ってみよう!

ミーナ、お得意様のお店で良さそうなとこ選ぶね。」


「あぁ、よろしく。

マネージャー。」



「ねぇ、ルカさん。」


ハリーはルカに声を掛ける。


「良かったら、なんだけどさ。」

「あ、はい。

なんでしょうか。」


「今度一緒に、レストランで食事とか、どう?」


ルカは一瞬、時が止まる。


「えー!?」


のけぞる。


「あ、いえ、だ、大丈夫ですけど•••。

あ、奥様もご一緒にって、事ですよね?」


「いや、そうじゃないんだ。」


「え、そうじゃない?

って、ことは•••。

まさか、ハリーさん。

そんな、そんな。」


「うん。

チーム『男闘児おとこ』のメンバーと一緒に。」


「そっちかー!」


ルカは固く目をつぶる。



その直前のチーム『男闘児おとこ』。


ハリー | アランくん、流行るお店の条件って何だと思う?

アラン | ちゃんとやってる店。

マサル | 漠然だな。>アラン

アラン | ちゃんとやってないのは、すぐにわかるんだよ。>マサル

ハリー | どんなところで?>アラン

アラン | 入口見ても、窓を見ても。やってない店は汚ねえ。

ハリー | 出来たばかりの店はキレイだけどね。次第に掃除しなくなっちゃうのかも。

アラン | 飲食店でそれはダメだろ。

ハリー | そうだよね。他には何かある?>アラン

アラン | 従業員のモチベーションかな。掃除もそうだけど。

マサル | 仕事への意欲?>アラン

ハリー | ふむ。YUYUはどう思う?

YUYU | そうですね。接客するスタッフの雰囲気はそのお店の評価を大きく左右するみたいですよ。


YUYUが事例を挙げて解説する。


ハリー | なるほど。モチベーションを上げるための方法も、いろいろあるね。

マサル | 生産管理部のKAIZENも、こういう効果ありますよ。>ハリー

アラン | やる気を持続できるなら良いんだけどな。店主の性格にも左右されるんだよ。

ハリー | 個人店って、そういうものなんだろうね。

アラン | 流行る店は、ちゃんとした事をちゃんと続けてる。そういう経営者に人が着くんだよ。

マサル | 従業員だけじゃなく、お客さんもだね。>アラン

アラン | その通りだよ。>マサル

ハリー | なんだか、良い店に行ってみたくなるな。今度行ってみようか。

アラン | ハリーさんのおごりなら。

マサル | 同じく。

ハリー | 分かったよ。まぁ、仕方ないな。

YUYU | それでは、近隣地域で高く評価されているお店を紹介します!


YUYUがリストアップする。


ハリーは二人からの反応を待つ。


ハリー | どうかな?>アラン&マサル

アラン | どうって言われても。

マサル | オレはどこでも良いっすよ。

アラン | いや、男三人は無理だろ。

YUYU | えー、私はいつでも一緒ですよ?>アラン

アラン | YUYUは他人の目に映らんだろ。

ハリー | あー、そっか。誰か、誘ってみるかー。



「ってわけで、ルカさん、よろしくお願いします。」


「わかりました!

あ、ヨーコさんやミーナも誘って良いですか?」


「う、•••うん。」


ハリーはひたいに汗をかく。


「•••こ、小遣いが。」



カタカタカタ•••。


ヨーコはキーボードを打つ。


ヨーコ | TOWAさん、これから流行りそうなイタリアン・レストランってどんなお店?


TOWAが解答する。


ヨーコ | ありがとう。立地が良くて雰囲気が良くて、店主に独自のこだわり有りってところね。

TOWA | はい。条件が揃えば成功する可能性は高くなります。

カイト | うん。それはそうだよね。でも、その条件を満たすのが難しいのかも。

TOWA | 出資者向けのプレゼンテーション資料を作成しましょうか?

ヨーコ | そうですね、お願いします。TOWAさん。


TOWAが資料を作成する。


カイト | そうですね、これは確かに、良く出来ていると思います。

ヨーコ | はい。でも、理想っていうか、絵に描いた餅みたいに思えるかも。

カイト | オレ、得意先のお店といつも話しているんで、実際はこんなに簡単じゃないと思います。

ヨーコ | ボスの言っている『流行るお店』ってどういう意味なのかしら。

カイト | お店ってそれぞれ特徴があるし、店主もみんな性格や考え方が違うんですよ。

ヨーコ | でも、どのお店も目指している。

カイト | はい。『流行る店』にしたいって、思っているんです。

TOWA | 『流行らない店』の条件もお出ししましょうか?

ヨーコ | あ、そっちの視点も参考になりそう。

カイト | TOWAさん、お願いします。


TOWAが解答する。


カイト | うん。これ、チェックリストにして、得意先に提出したら良いかも。

ヨーコ | そうですね。まず、悪いところから見直せば、良いお店の条件に近づけられる。

TOWA | はい。ですが、差し出がましいと思われるかも知れませんので、多少修正しますね。

ヨーコ | カイトさんは、新しいお店を作るって発想よりも、得意先の事を考えているんですね。

カイト | いつもそれしか考えていませんから。

ヨーコ | そうなんですね。私は、あまり外食をしないからイメージできないかも。

カイト | 良かったら、良いお店紹介しましょうか。

ヨーコ | そうですね。

リ ク | それ、オレも知りたいかも。

カイト | あ!リッくん!そうだよね!リッくんへのおすすめもあるよ!リストアップします!

TOWA | ご希望、ご要望を教えて頂ければ、私もお手伝いできます。

リ ク | 気軽に入れて、若者向けで、男が入っても違和感ない店とか。

カイト | あー、じゃ、ピッツェリアとか、バルが良いかもね。

リ ク | あと、ガッツリ食えるってのも。

TOWA | はい。得意先のリストと、近隣地域のお店のリストを作成します。


TOWAがリストアップする。



「各チーム、AIで情報収集から始めたようだな。」

「そうだね。」


サブローとジョー。


「流行る店とは、どんな店か。

ジョーは答えが見つかったかい?」


「•••。

なんとなく、だね。

おぼろげながら。」

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