第二十五話 切り替え
カーン、カーン•••。
かちり。
チッ、チッ、チッ
腕時計。
秒針が刻む。
いつもと変わらない朝の時間。
⸻
エナはポットのお湯を少量注ぐ。
粉が湿る。
待つこと約1分。
粉にお湯を注ぐ。
コポコポ•••。
「はい。
いつものコーヒー。」
コト。
エナがテーブルに置く。
湯気がゆらり。
朝食の後の一杯。
ブラック・コーヒー。
「ありがとう。」
一口飲む。
「うん。
いつものコーヒーが、一番美味い。」
朝の光が反射する。
キラリ。
一日に約1分。
早くズレる腕時計。
チッ、チッ、チッ。
⸻
チリリリン。
いつもと違う音が鳴る。
総務部の事務所内
タイマーが時を区切る。
ハリーは手を止め、目を閉じる。
約5分の沈黙。
チリリリン。
動き始める。
カタカタカタカタ•••。
キーボードを叩く。
書類が出来上がる。
次の仕事に進む。
チリリリン。
約25分の作業。
⸻
「どうでしたか?
ハリーさん。」
「あぁ、ルカさん。
良いかも知れない。
作業効率が上がったと思う。」
「効果ありですね。
良かったです。」
「5分の小休止の間に、次の仕事の手順とかを考えてた。
25分間で、どこまで進められるかって。」
「なるほど、ハリーさんはそういう感じなんですね。
私は何も考えないで、呼吸を整えていました。」
ルカはトマトのタイマーを手にする。
「決まりは無いので、人それぞれになるんですね。
5分間の使い方。」
「動と静って言うのかな•••。
切り替えが大事なんだろな。」
ハリーは腕を組んで考える。
「うん。
これ、みんなに共有してみても良さそうだね。」
「はい。
ボスと常務もオッケーしてくれていたので、チームの方でも話してみます。」
「オレもそうするよ。
AIがわかりやすく説明してくれるね、きっと。
えーと、何て言うんだっけ。」
「ポモドーロ・テクニックです。」
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ハリーはチーム『男闘児』のチャットルームを開く。
ハリー | こんにちは。>YUYU
YUYU | ハリーさん、こんにちは!どんなお手伝いをしましょうか?
ハリー | ポモドーロ・テクニックについて、説明してもらえるかな?
YUYU | はい!
YUYUの説明文が流れる。
ハリー | これ、試してみているんだけど、仕事に使えそうかな?>アラン&マサル
アラン | そうっすね、試してみます。
マサル | えーと、作業の現場で実際に使うとなると、難しいと思います。
ハリー | そうか、マサルはグループ作業だからね。YUYUはどう思う?
YUYU | ポモドーロ・テクニックでの効率化は可能だと思いますけど、問題は導入の方法ですか?>マサル
マサル | そうだな、みんなの同意がないとな。それと、作業は全体の流れがあるから。
YUYUが作業現場に最適に、ローテーション制の表を作成する。
マサル | なるほど。25分で交代するのか。点検、補充、梱包など、作業内容を変えながら。
ハリー | どうだい?>マサル
マサル | そうですね。作業者たちとも話して具体的に考えてみます。
YUYU | ぜひぜひ!どんなお話になったか、また教えてくださいね!>マサル
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ルカはチーム『Thankone』のチャットルームを開く。
ルカ | KIKUちゃん、こんにちは!今日もよろしくね!
KIKU | こんにちは!ルカちゃん。こちらこそ、よろしくね!
ミーナ | KIKUちゃん、聞いてー!ミーナは時間を、更に圧縮しないとヤバいの!
KIKU | えー!すごいね。KIKUも手伝うから、詳しく教えてね。
ルカ | 何かあったの?>ミーナ
ミーナ | 受注先が増えるのよ!更に仕事が増えるのよ!
ショータ| あー、あの販路の事かー。業務食材のネットショップだよね。
ミーナ | そうそれ!なんか、飲食店以外の個人客も買えるみたいなのよ!
ショータ| 新しい顧客層を開拓できるんじゃないかって、ボスとカイトくんが話してたよ。
ルカ | なるほど、そうなんだー。>ショータ
ショータ| KIKUちゃん、プラットフォームの多角化だけど、整備できそう?
KIKU | うん。ネットショップからの受注と配送、または顧客への直送になるのかな。
KIKUは受発注のシステムとオペレーションを表にまとめる。
ルカ | さっすが、KIKUちゃん。見やすくて分かりやすいね。
KIKU | ありがとう、ルカちゃん。確認してほしいことリストも読んでね。あと、スケジュールも作ったほうがいいかな?
ミーナ | 本当に頼りになるよー。KIKUちゃん。
KIKU | そういって貰えて嬉しいよ。でも、ミーナちゃん、間違いがないか必ずチェックしてね。
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プロジェクトの時間が終わる。
「うーん。
話しそびれちゃった。
ポモドーロ・テクニック。」
「そっか。
まぁ、話せる時でいいのかもね。
でもチャットの時間、もうちょっと欲しいなぁ。」
「ふぅ。」
ヨーコが小さなため息をつく。
「どうかしたの?」
「あ、いえ。
•••お二人のチームって盛り上がってますよね。
私のチーム、何を話したらいいのか分からなくって。」
「そうなんですか?
どんな会話になってるんですか?」
ルカがヨーコに近づく。
「カイトさんが中心になって話しているんだけど、相槌を打つくらいしかできないの。
AIの返答も専門的なことばかりで•••。
カイトさん、すごいんでしょうけど良く分からなくって。」
「あー、そっか。
それは、わかる。
カイトは悩みとか、相談できないタイプだからな。
問題の共有とか、改善とかの話にならなそうだ。
ヨーコさんが相手だと尚更、いいカッコして見せたいだろうからなぁ。」
ハリーはうなづく。
「なるほどー。」
ルカは少し上を向く。
人差し指がアゴに触れる。
「だとしたら、簡単ですね。」
ルカはヨーコを見る。
「カイトさんに、仕事のやりがいを聞いてみたら良いですよ。」
「やりがい?」
「そうです。
嬉しかったこととか、反対に残念だったこととか。
ヨーコさんは、共感できるとかできないとかを返答すれば良いですよ。」
「•••やりがい、ね。」
ヨーコは微笑む。
少しうつむいて考える。
「うん。
聞いてみる。
ありがとう、ルカさん。」
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ヨーコはチーム『Tricolore』のチャットルームを開く。
ヨーコ | チャットの時間外にすみません。一言だけ。
TOWA | ヨーコさん、何かございましたか?
ヨーコ | 仕事の「やりがい」について、お話ができたらと思っています。よろしくお願いします。
TOWA | それは私も、とても知りたい内容です。カイトさん、リクさん、よろしくお願いいたします。
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ヨーコはチャットを閉じる。
そして目を閉じる。
約1分。
チリリリン。
タイマーが鳴る。
気持ちが切り替わる。
仕事に集中する。




