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一日に約1分ズレる腕時計  作者: A.O.C.DESIGN
第三章 Secondi Piatti
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25/29

第二十五話 切り替え

カーン、カーン•••。


かちり。


チッ、チッ、チッ

腕時計。


秒針が刻む。


いつもと変わらない朝の時間。



エナはポットのお湯を少量注ぐ。

粉が湿る。


待つこと約1分。


粉にお湯を注ぐ。

コポコポ•••。


「はい。

いつものコーヒー。」


コト。

エナがテーブルに置く。


湯気がゆらり。

朝食の後の一杯。


ブラック・コーヒー。


「ありがとう。」


一口飲む。


「うん。

いつものコーヒーが、一番美味い。」


朝の光が反射する。


キラリ。


一日に約1分。


早くズレる腕時計。


チッ、チッ、チッ。



チリリリン。


いつもと違う音が鳴る。

総務部の事務所内


タイマーが時を区切る。

ハリーは手を止め、目を閉じる。


約5分の沈黙。


チリリリン。


動き始める。

カタカタカタカタ•••。

キーボードを叩く。


書類が出来上がる。

次の仕事に進む。


チリリリン。


約25分の作業。



「どうでしたか?

ハリーさん。」


「あぁ、ルカさん。

良いかも知れない。

作業効率が上がったと思う。」


「効果ありですね。

良かったです。」


「5分の小休止の間に、次の仕事の手順とかを考えてた。

25分間で、どこまで進められるかって。」


「なるほど、ハリーさんはそういう感じなんですね。

私は何も考えないで、呼吸を整えていました。」


ルカはトマトのタイマーを手にする。


「決まりは無いので、人それぞれになるんですね。

5分間の使い方。」


「動と静って言うのかな•••。

切り替えが大事なんだろな。」


ハリーは腕を組んで考える。


「うん。

これ、みんなに共有してみても良さそうだね。」


「はい。

ボスと常務もオッケーしてくれていたので、チームの方でも話してみます。」


「オレもそうするよ。

AIがわかりやすく説明してくれるね、きっと。

えーと、何て言うんだっけ。」


「ポモドーロ・テクニックです。」



ハリーはチーム『男闘児おとこ』のチャットルームを開く。


ハリー | こんにちは。>YUYU

YUYU | ハリーさん、こんにちは!どんなお手伝いをしましょうか?

ハリー | ポモドーロ・テクニックについて、説明してもらえるかな?

YUYU | はい!


YUYUの説明文が流れる。


ハリー | これ、試してみているんだけど、仕事に使えそうかな?>アラン&マサル

アラン | そうっすね、試してみます。

マサル | えーと、作業の現場で実際に使うとなると、難しいと思います。

ハリー | そうか、マサルはグループ作業だからね。YUYUはどう思う?

YUYU | ポモドーロ・テクニックでの効率化は可能だと思いますけど、問題は導入の方法ですか?>マサル

マサル | そうだな、みんなの同意がないとな。それと、作業は全体の流れがあるから。


YUYUが作業現場に最適に、ローテーション制の表を作成する。


マサル | なるほど。25分で交代するのか。点検、補充、梱包など、作業内容を変えながら。

ハリー | どうだい?>マサル

マサル | そうですね。作業者たちとも話して具体的に考えてみます。

YUYU | ぜひぜひ!どんなお話になったか、また教えてくださいね!>マサル



ルカはチーム『Thankoneサンコーネ』のチャットルームを開く。


ルカ  | KIKUちゃん、こんにちは!今日もよろしくね!

KIKU | こんにちは!ルカちゃん。こちらこそ、よろしくね!

ミーナ | KIKUちゃん、聞いてー!ミーナは時間を、更に圧縮しないとヤバいの!

KIKU | えー!すごいね。KIKUも手伝うから、詳しく教えてね。

ルカ  | 何かあったの?>ミーナ

ミーナ | 受注先が増えるのよ!更に仕事が増えるのよ!

ショータ| あー、あの販路の事かー。業務食材のネットショップだよね。

ミーナ | そうそれ!なんか、飲食店以外の個人客も買えるみたいなのよ!

ショータ| 新しい顧客層を開拓できるんじゃないかって、ボスとカイトくんが話してたよ。

ルカ  | なるほど、そうなんだー。>ショータ

ショータ| KIKUちゃん、プラットフォームの多角化だけど、整備できそう?

KIKU | うん。ネットショップからの受注と配送、または顧客への直送になるのかな。


KIKUは受発注のシステムとオペレーションを表にまとめる。


ルカ  | さっすが、KIKUちゃん。見やすくて分かりやすいね。

KIKU | ありがとう、ルカちゃん。確認してほしいことリストも読んでね。あと、スケジュールも作ったほうがいいかな?

ミーナ | 本当に頼りになるよー。KIKUちゃん。

KIKU | そういって貰えて嬉しいよ。でも、ミーナちゃん、間違いがないか必ずチェックしてね。



プロジェクトの時間が終わる。


「うーん。

話しそびれちゃった。

ポモドーロ・テクニック。」


「そっか。

まぁ、話せる時でいいのかもね。

でもチャットの時間、もうちょっと欲しいなぁ。」


「ふぅ。」

ヨーコが小さなため息をつく。


「どうかしたの?」


「あ、いえ。

•••お二人のチームって盛り上がってますよね。

私のチーム、何を話したらいいのか分からなくって。」


「そうなんですか?

どんな会話になってるんですか?」

ルカがヨーコに近づく。


「カイトさんが中心になって話しているんだけど、相槌を打つくらいしかできないの。

AIの返答も専門的なことばかりで•••。

カイトさん、すごいんでしょうけど良く分からなくって。」


「あー、そっか。

それは、わかる。

カイトは悩みとか、相談できないタイプだからな。

問題の共有とか、改善とかの話にならなそうだ。

ヨーコさんが相手だと尚更、いいカッコして見せたいだろうからなぁ。」

ハリーはうなづく。


「なるほどー。」


ルカは少し上を向く。

人差し指がアゴに触れる。


「だとしたら、簡単ですね。」


ルカはヨーコを見る。


「カイトさんに、仕事のやりがいを聞いてみたら良いですよ。」


「やりがい?」


「そうです。

嬉しかったこととか、反対に残念だったこととか。

ヨーコさんは、共感できるとかできないとかを返答すれば良いですよ。」


「•••やりがい、ね。」


ヨーコは微笑む。

少しうつむいて考える。


「うん。

聞いてみる。

ありがとう、ルカさん。」



ヨーコはチーム『Tricoloreトリコローレ』のチャットルームを開く。


ヨーコ | チャットの時間外にすみません。一言だけ。

TOWA | ヨーコさん、何かございましたか?

ヨーコ | 仕事の「やりがい」について、お話ができたらと思っています。よろしくお願いします。

TOWA | それは私も、とても知りたい内容です。カイトさん、リクさん、よろしくお願いいたします。



ヨーコはチャットを閉じる。


そして目を閉じる。


約1分。


チリリリン。


タイマーが鳴る。


気持ちが切り替わる。


仕事に集中する。

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