第二十一話 名 前
生成AI利活用プロジェクトチーム。
略してAIPT。
メンバー決定。
初めのお題。
『名前』。
どんな名前になるのか。
お楽しみに。
⸻
カタカタカタ•••。
キーボードを打つ。
ハリーは社内報を作っている。
事務所で一人。
「さてと、あとは明日のランチだな。
メグさんからのメッセージは、と。
まだ来てないな。」
ハリーはポケットから取り出す。
小型の内線電話機。
「あ、メグさん。
明日のランチメニューは予定通りですか?
あ、はい。
了解です。
えぇ、えぇ、なるほど、はい。
わかりました。」
カタカタカタ•••。
メグから従業員への伝言。
提供時間が遅れてしまった事への謝罪。
助けてくれたアランへの感謝。
「明日は、豚バラ肉のロースト。
ローズマリー風味か、これまた美味そうだなー。」
ハリーは目をつむる。
目に浮かぶ。
美味しそうに食べる従業員の顔。
それを眺めるメグの顔。
カタカタカタ•••。
仕上げの1分。
早くて美味しいランチ。
仕事への想い。
ハリーはメグの伝言に添える。
感謝の言葉。
「よし、社内報が出來た。
さて帰るか。」
帰り支度をするハリー。
スマートフォンを手にする。
エナに帰り時間のメッセージを送る。
「あぁ、そうだ。
ヨーコさんに連絡を、と。」
ハリーは電話を掛ける。
「•••そう、良かった。
じゃ、予定通り明日から。
よろしく頼むね。」
電話を切る。
カチ。
事務所が暗くなる。
パタン。
カチャ。
ドアが閉まる。
⸻
次の日。
ドアの前。
いつもより早めに到着したハリー。
しかし、先に女性が待っている。
「ヨーコさん!
おはよう、良かった。
元気そうだね。」
「はい、すみません。
しばらくお休みしてしまいまして•••。
ご迷惑をお掛けして、申し訳ございません。」
「気にしないで大丈夫だよ。
感染症にかかったら、最善を尽くすのみ。
だよ。」
事務所に入る二人。
掃除を始める。
「おはようございます!」
ルカが出社。
ヨーコと目が合う。
「•••。」
「おはよう、ルカさん。
その人がヨーコさん。
予定通り、今日から復帰だよ。」
透き通るような肌の女性。
優しく穏やかな表情。
「ルカさん?」
「あ、すみません。
み、見とれてしまいました。」
「ヨーコです。
ルカさん、初めまして。
あなたのことはハリーさんから聞いてます。
社内報でも紹介されてましたよね。」
「初めまして。
ルカと申します。
•••ほんに、よろしくお願いします。」
「ほんに?」
「あ、すみません。
出身、京都なもので。」
「そうなのね。
雅な印象がありますね。
素敵です。」
「い、いえいえ!
そんな!
ヨーコさんの方がずっとお綺麗で、優雅ですよ。」
ハリーが口を開く。
「ルカさん、なんだかいつもより丁寧だね。
品があるっていうか。」
「それは•••。
こんなに素敵な方を前にしたら、そうなってしまいます。
きちんとしなきゃって。」
「あー、そっか。
オレはまぁ、それほどでは無いって事だねー。」
「ちょっと、ハリーさん!
そう言うこと言わないでくださいよー。」
ルカの両手がグーになる。
「ははは。
冗談だよ。」
ヨーコは微笑んでいる。
「お二人、打ち解けているんですね。
私とも気軽に接してくださいね、ルカさん。」
「あ、はい!
よろしくお願いします。
ヨーコさん!」
⸻
社員が集まる。
ミーティング前。
「おざーっす、ハリーさん。
AI見ました。
壊れた時計、大事にしてるんすね?」
マサルがハリーに問い掛ける。
高身長で体格の良い男。
間近で見るとさらに大きく感じる。
「あ、あぁ。
そうそう。」
「おはよーざいます、ハリーさん。
なんで壊れた時計なんて使ってるんすか?」
今度はショータ。
ストレートに聞いて来る。
「あー、いや。
まぁ、壊れていても役には立つからな。
ははは。」
ハリーは腕時計を見る。
1分前。
「さて、そろそろみんな、輪になって。」
サブローとジョーが現れる。
朝のミーティングが始まる。
挨拶の後、サブローが正式に発表する。
AIPTメンバー。
チーム1: ハリー、アラン、マサル。
チーム2: ミーナ、ルカ、ショータ。
チーム3: カイト、リク、ヨーコ。
役 員: サブロー、ジョー、カナエ。
それぞれが顔を見合わせる。
期待と不安が入り混じる。
「まず、チーム名を話し合って決めるように。
名前の由来も添えること。」
ジョーがサブローに続く。
チャットルームの構造を説明する。
一人とAIの個人ルーム。
三人とAIのチーム・ルーム。
全員とAIの大ホール。
役員三名は全てを見ることが可能。
ミーティング終了後。
「ねぇ、ミーナ、ショータさん、名前どうしよっか。」
「うーんと、ミーナルカショータ。」
「あっそれ、良いっすね。」
「えぇ!?
もう決まり?
AIにも聞こうよー。」
「ヨ、ヨーコ、さん。
げ、元気そうで、良かった、っす。」
「カイトさん、心配してくれていたんですね。
ありがとう。」
「何、キンチョーしてんのカイト。
とりあえずお二人、ヨロ!」
「リクさん、よろしくね。」
「•••。」
「•••。」
「あ、アランくん、マサルくん。
よろしく頼むね。」
高身長の二人がハリーを挟む。
「よろしく。」
「どうも。」
解散。
それぞれの部署へ向かう。
「あ、そうだ!」
ルカ。
「生成AIにも、名前を付けてあげませんか?」
⸻
社長室に二人。
「ヨーコくんが戻って、全員集まったね。」
ジョーがサブローに話し掛ける。
「あぁ。
やっと手が空くな、ジョー。
彼女がいなくて大変だったろ。」
「そうだね。
経理業務に付きっきりだったな。」
コポコポ•••。
急須に電気ポットのお湯。
ジョーが注ぐ。
「やっと落ち着いて、朝の煎茶が飲めるよ。」
蓋をして蒸らす。
約1分。
湯呑みに注ぐ。
湯気がふわり。
サブローは外を眺める。
明るいうす曇り。
樹木の枝葉が風に揺れる。
鮮やかな緑の葉。
カサカサ。
カサカサ。




