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一日に約1分ズレる腕時計  作者: A.O.C.DESIGN
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第二話 コーディネート

夜が明けて朝日が昇る。


街に鐘の音が響く。


カーン。


カーン。


カーン。



日差しが小さな窓から差し込む。


鏡が光を反射する。


洗面台。


ハリーは洗顔をしている。


キラリ。


腕時計のガラスも反射する。


洗面台の傍ら。


チッ、チッ、チッ。


秒針が動いている。



「おはよう。」


「おはよう。

今日もいい天気ね。」


エナがキッチンから答える。


「あぁ、いい天気だ。

午後もよく晴れるみたいだよ。」


ハリーがテーブルに着くと、朝食が並べられていく。


「仕事は順調?」


「うん、順調。

あぁ、そうそう、新しい社員が昨日から入ったんだ。

感じのいい子でね。

仕事もできそうだよ。」


「この前言ってた中途採用の方ね。

若い子なの?

女の子?」


「うん。

若い女の子。」


「ふーん。」


エナはハリーの顔を覗き込む。


「な、何だよ。」


「べっつにー、何でもないわよー。

仕事できそうで、感じのいい、若くてかわいい女の子なんて、興味ないわよー。」


「気になってるのか。

てか、かわいいとは言ってないけど。」


「かわいくは無いのね。」


「いや、どっちかというと、かわいい、かな。」


「ふーん。

あたしよりもかわいいわよねーきっと。」


「んー、どっちかっていうと。」


「おいっ!」


エナは朝食のプレートを取り上げる。


「朝ごはん、いらないみたねー。」


「いるいる!

ごめん。

キミは美人だって言おうとしてたんだよー。

どっちかっていうとー。」


「あら!

そういうことね。」


プレートがハリーの前に戻る。


ベーコンエッグは半熟のサニーサイドアップ。

生野菜のサラダ。


横に並ぶ、トースト。

香味野菜たっぷりのスープ。

グレープフルーツジュース。


ハリーは玉子に醤油を垂らし、バターを塗ったトーストに載せる。


「ハリーって、目玉焼きには醤油。

•••なのよね。」


「うん。

これが一番うまい。」


ハリーは腕時計を見る。


6時15分。



リリーン。


駐輪場のいつもの場所に自転車を駐める。

事務所に入ると、すでにルカが掃除をしている。


7時45分。


「おはよう。

早いね。」


「おはようございます。

なんか、新しい職場って良いですよね。

天気も良いから早く来ちゃいました。」


「そっかー。

新鮮な気持ち、いいね。

こっちも清々しい気持ちになるよ。」


ハリーはバッグを置いて掃除を始める。


「ルカさんはさ、ベーコンエッグ食べる時、何か調味料使う?」


「え?

唐突ですね。

うーん、最近はハーブソルト系ですかねー。

レモン搾ったりもしますね。

ひょっとして、今日の朝は、ベーコンエッグだったんですか?」


「うん。

そうなんだ。

醤油かけたら嫁さんがさー。」


「醤油ってことは、お米ですね。」


「いや、パン。

トースト。」


「それはー、少し変わってますね。」


「そうかな。」


「そうですよー。

そういえば昨日のランチも。

サーモンのムニエルがメインなのに、ライスにふりかけでしたっけ。」


「え?

おかしかった?」


「組み合わせが完全におかしい、です。

ハリーさんてコーディネートを気にしないタイプなんですね。」


「うーん、あまり気にしないかもね。」


ルカは無言になる。

約1分。


ハリーはデスク周りの拭き掃除。

腕時計を見る。

7時58分。


「個性的で良いですよね。」


ルカが言葉にする。


「う、うん?」


「あ、すみません。

コーディネートを気にしない、の件でした。

いろいろ考え始めたら、つい時間が。」


「あー、考えてくれてたんだね。

センスない人だと思われたのかと思った。

実際、センスないけどね。」


ハリーは笑う。


「いえいえ!

そんな失礼な事は思ってないですよ!」


ルカはハリーの腕に目を移す。

「その腕時計も個性的だし、男性ならではの自分のこだわりって素敵です。

きっと、ハリーさん独自のコーディネートがあるんです。」


ハリーはまた腕時計を見る。


「さ、そろそろミーティングだね。

掃除用具は後で片付けよう。」



ミーティング開始。


ハリーの司会進行。


社長の一言。


常務の一言。


本日の業務の確認。


企業理念の唱和。


締めの挨拶。


ミーティング終了。


そして各部署でいつも通りの業務が始まる。

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