第十八話 聞いてみな
週が明けて月曜日。
青い空。
白い雲。
新緑の若葉。
開いた窓。
ひんやり涼しい。
朝の空気。
⸻
社長室。
「役員3名、社員9名。
年額、約60万円か。」
サブロー、カナエ、ジョー。
見積書を見る。
「・・・結構な金額ね。」
カナエが腕を組む。
サブローは横目でハリーを見る。
ハリーの目が泳ぐ。
「まぁ、こんなもんだろ。
人を雇うより、よっぽど安い。」
トン。
「そうね。」
トン。
「異論はないよ。」
トン。
役員の承認印が揃う。
「ありがとうございます。」
ハリーは手続きをする。
生成AIビジネスプラン。
契約完了。
「いよいよ、始まりますね。」
ルカの言葉。
ハリーはうなずく。
ゆっくりと。
「まずは何から始めますか?」
画面を見つめる。
ハリーとルカ。
カナエとジョー。
サブローは窓の外を見ている。
ハリーは口を開く。
「えーっと。
•••何から?」
頭をかく。
「おーい。」
カナエのツッコミ。
「はっはっは。」
サブローが笑う。
「さては、考えていなかったな。
まぁ、まずは、公開している情報を載せることなんじゃないか?
会社の概要やら、沿革やら。
この会社を紹介してみな。」
「な、なるほど。
やってみます。」
ハリーとルカはAIに伝える。
会社の概要をレポートにするよう指示する。
出来たレポートを役員たちが確認する。
「へえ〜、スゴい早さで出来ちゃうのね。」
カナエが感心する。
修正を加えて完成。
ルカはAI に尋ねる。
一般的にビジネス利用する場合の注意点。
一般社員が利用する場合の禁止事項。
当社における最適なルール。
ジョーが口を開く。
「ボス、組織図を載せても大丈夫そうですね。」
「うむ、しかし念の為、名前はカタカナにしておこうか。
苗字も無しで。」
ハリーがAIに尋ねる。
3チームによる利用方法。
AIが最適な環境を整える。
レポートがまとまる。
「面白くなりそうだな。
よし、そしたら、あとはみんなに任せよう。」
サブローに視線が集まる。
「私も使ってみるけどな。」
「はい。
よろしくお願いします!」
「あぁ、そうだ。
ハリー、何かAIに質問してみてくれ。
初めの質問が堅苦しいと、みんな恐縮するかも知れない。
お前の考えで、面白いようなこと聞いてみな。」
「えぇ!?」
「だってお前、何も考えていなかっただろ?」
「あぁー、はい。
そうですね。
ちょっと、部署に戻ってから考えても良いですか?」
「いいよ。
じゃ、よろしく頼む。」
肩を叩く。
トン。
⸻
「それでは、失礼します。」
ハリーとルカは社長室を出る。
「あれ?
ハリーさん、総務はこっちですよ。」
「ついでだから、企画部に寄って行こう。」
⸻
『企画部』。
コン、コン。
「失礼します。」
カタカタカタ•••。
気付かない四人。
「みなさん、お疲れ様です。」
「あ、ハリーさん。
すみません、気が付きませんでした。
お疲れ様です。」
四人は立ち上がり頭を下げる。
「ごめんな、みんな。
ちょっとだけ時間いいかな。」
ハリーは説明する。
生成AI利活用プロジェクトについて。
利用方法やルールについて。
「それで、プロジェクトチームなんだけど•••。
各部署で三人ずつだから、ひとり余っちゃうんだ。」
「あ、はい。
ボスから、そう聞いてます。
とりあえず、デザインのナルミは今回はパスで良いかと。
すでに専用のAIを使っていますので。」
うなずくナルミ。
「そっか。
そしたら•••。」
ハリーは棒を取り出す。
三本。
それぞれ名前が書かれている。
ハリー。
ルカ。
ヨーコ。
「アランくん、ショータくん、カイトくん。
くじ引きで決めるから、引いてみてもらえる?」
ルカが棒を握る。
「どうぞー。」
三人が固まる。
「•••あ、だ、誰からに、する?」
カイトが硬くなる。
「お前からでいいだろ、カイト。」
クールに返すアラン。
「ジャンケンしよ。」
ショータはマイペース。
三人、右手の拳を出す。
「じゃ、勝ったヤツから引く。
いいな?」
「オッケー。」
「あ、最初はグー!
ジャン、ケン、ポン!」
「あー!
くっそー、負けたー。」
カイトが悔しがる。
「悔しいんならカイトからで良んじゃね?」
ショータがツッコむ。
「いや、ジャンケンするならクジ要らんだろ。」
ナルミが更にツッコむ。
「こいつは負けたことが悔しいだけだ。
じゃ、オレ引くぞ。」
アランがくじを引く。
棒を見る。
「オレ、ハリーさん。
よろしくお願いします。」
ハリーは微笑む。
「よろしく。
こちらこそ。」
カイトとショータはジャンケン。
「ポン!」
「あー、クッソ、また負けた!」
「ボク引きまーす。」
ショータがくじを引く。
「あ、やったー!
ボクは、ルカさんチームです。
ルカさん、ショータって言います。
工場のラインの設計とか、部材の設計とかやってます。
よろしくお願いします。」
「うわ!
それ、面白そうな仕事ですね。
こちらこそ、よろしくお願いします。
ショータさん!」
カイトがつぶやく。
「ってことは、オレ、ヨーコさんのチームかぁ。
•••そっかぁ。」
頭をかく。
「よろしく頼むよ、カイトくん。」
微笑むハリー。
背中を軽く叩く。
⸻
ハリーとルカは総務部に戻る。
「生産管理部は午後だな。
作業開始前に行かないと。」
ハリーはデスクのパソコンを動かす。
「さて、ハリーさん、何を質問しますか?
AIに。」
ルカは興味津々。
ハリーは考える。
「うーん。
•••なんでも良いんだよな。
でも、なんでも良いが一番ムズイんだよな〜。」
「ふふ。
そうですね。」
ハリーは腕時計を見る。
「時計の直し方、とか?」
ルカの顔が渋くなる。
「うっわー、難しそう•••。」
「あ、そっか。
みんなが読んで、面白いって思えるようなのが良いんだよな。
うーん。」
ハリーは窓の外を見る。
青い空。
白い雲。
「孫悟空の筋斗雲に乗りたい。
とか。」
「あはは!
子供ですか!?」
「え?ダメ?
そしたら•••。」
ルカの顔を見る。
「三蔵法師が現代人に送るアドバイスは?
とか。」
「うーん、そうですねー。
それは、アリですね。
面白そうです。
でも、お説教っぽいのが返ってくるかもー。」
「うーん、悩むー。」
ハリーはまた腕時計を見る。
チッ、チッ、チッ。
「うん、そしたら。
一日に約1分ズレる腕時計を、私は使っています。
あなたはどう思いますか?
とか。」
ルカの目が輝く。
「それ、ハリーさんっぽい!
それ良いです!」
「よーし、決定。」
カタカタ•••。
キーボードを打つ。
「なんだか、ちょっと、緊張するね。」
「はい。」
ルカはハリーの腕時計を見る。
チッ、チッ•••。
タン。
エンターキーを打つ。
•••チッ。
最初の一文が現れる。
サラサラ•••。
文章が流れて行く。
瞬く間に。




