第十五話 共 有
「3チーム?」
「はい。
チームA、チームB、チームCといった形で。
•••どうでしょうか。」
ハリーとジョー。
「うーむ。
よくわからないから、もっと良く説明してもらえるかな。」
ハリーの表情が強張る。
「はい。
えーと、プロジェクトチームは、うまく行かない場合があるようです。
メンバーだけが進んでしまい、社内で孤立してしまうケースです。
•••ですが、チームが3つあれば、会社全体が動いて行くと思うんです。」
「うむ、なるほど。
チームの孤立というのは確かにありそうだね。
うーん、そしたら例えば、どんなメンバー構成になるんだ?」
「生産管理部、企画部、総務部から1名ずつで1チームです。
それが3つです。
チームでそれぞれAIを利用しますが、自分の部署で他のチームのメンバーとも情報を交換する。
そういうイメージです。」
ジョーは少し黙る。
「•••他部署のメンバーとチームとして活動。
しかし、自部署に戻っても、相談できる仲間がいる。
そういうことだね。」
ハリーの強張った表情が、少し緩む。
「はい、そうなるだろうと、思っています。」
「しかし、関わる人数が多すぎる気がするな•••。」
「•••そうですね。
各部署、人手が余っているわけではありませんので。
そこまでの余裕があれば良いんですけど。」
「うむ。
•••よし、わかったよ。
キミの考えは理解した。
ボスに伝える。」
「はい!
よろしくお願いします。」
深く頭を下げる。
⸻
社長室。
「•••ということだけど、どう思う?
ボス。」
「それは、面白い発想だな。
良いんじゃないか。
3チーム。」
「仕事量が増えすぎでは?」
「減らすためのプロジェクトだろ?
成果が出れば問題なくなる。
それに•••。」
サブローは嬉しそうに笑う。
「ふふ。
•••社内がさ、もっと明るくなりそうだ。」
ジョーはサブローを見つめる。
⸻
総務部事務所。
コン、コン。
カチャ。
「戻りましたー。」
ルカが入る。
ハリーは腕時計を見る。
午後4時20分。
「もう終わったの?
ミーナさんのサポート。」
「はい。
まだサポートが必要だと思いますけど。
慣れるまでは。」
「うん、そうだよね。」
ハリーはルカに伝える。
ジョーに話した提案内容。
それをサブローが承認した事。
「えー!
スゴいアイデアですね、それ!
チームを3つもなんて。」
「ルカさんのおかげだよ。
3つのセルって言ってたでしょ。」
「えぇ?
そんなの、全然、別の話•••。」
「同じだと思ったんだ。
一つのチーム、一つのセル、一人の仕事。
それを話せる人がいるだけで、孤立しない。
負担も減る。」
「そんな事•••、普通、思いつきませんよ。」
ルカはハリーを見る。
ハリーは照れる。
「でも、AIって。
複数の人で共有できるんですね。」
「え?」
ハリーは固まる。
「え?」
ルカは首をかしげる。
一拍の間。
「•••できないのかな?」
ハリーのひたいが汗ばむ。
「•••ええーっと。
ハリーさん、ま、まさかー。」
ルカはスマートフォンを急いで取り出す。
慌てて手からこぼれる。
「ああああ、っとぉ。」
パシ!
掴む。
「生成AIのビジネス利用についてー!」
スマートフォンに唱える。
画面を見つめる。
読む。
くまなく。
約1分。
「ど、どうなの?」
ハリーが問い掛ける。
ルカは息を大きく吸う。
「ふぅ。」
肩が下がる。
「•••大丈夫です。
ビジネスプラン、あります。
社内での共有、問題ありません。」
ハリーは椅子にもたれる。
汗を拭く。
笑う。
ルカは口が尖る。
椅子に腰掛ける。
ハリーの顔を見る。
一緒に笑う。
⸻
「ただいまー。」
ハリーの帰宅。
「お帰りなさい。」
エナが微笑む。
しかし、すぐに表情が曇る。
「どうかした?」
「あのね、その腕時計の事だけど。」
エナの視線が落ちる。
「•••直せる人、いない。
•••かも。」
ハリーはエナを見つめる。
抱き寄せる。
「そっか。
大丈夫だよ。
問題ない。
•••ありがとう。」
⸻
チッ、チッ、チッ。
変わらない音。
時を刻む。
いつもと同じ間隔で。
しかし僅かにズレている。
正確な時間からは。
それでも時計は時を刻む。
他とは違う間隔でも。
チッ、チッ、チッ。




