第十四話 スゴいでしょ
「それじゃ、よろしく頼むね。」
「はい。」
ジョーとハリー。
生成AI利活用PT。
適任者の選出。
「•••うーむ。
適任者って言ってもなぁ。
オレ自身、使いこなしていないんだよなぁ、AI。」
ハリーは考え込む。
総務部。
企画部。
生産管理部。
組織図を眺める。
約1分。
腕時計を見る。
「とりあえず、お昼にしよっと。」
⸻
「こんにちはー。」
ハリーは食堂に入る。
「あ、ハリーさん来た!
こっちですよー!
こっち!」
ルカが手を振る。
「ルカさん、ミーナさん。
お疲れさまー。」
ハリーは二人のテーブルに合流する。
「ハリーさん!
ハリーさんの言ってた通り!
ほんっとに、魔法だった!
でもね、AI使ってないんだって!
使わなくっても、魔法!」
「あ、あはははー•••。
もう、ミーナってばー。
そんなに大げさに言わなくても•••。」
ハリーは微笑む。
「うんうん、やっぱり活躍してるんだね。
さすが、ルカさん。」
「いやいやいやいやー。」
ミーナは午前のことを話す。
「•••って感じでね。
今は、発注業務を簡単にしてもらってるとこ。
表計算のアプリで。」
「え?
まさかルカさん、プログラミングもできるの!?」
「まさか!
そんな高度なことまでは出来ませんよ。
セルに関数入れてる程度です。」
「あ、そかそか。
それくらいならオレでも。」
ミーナは少しムッとする。
「生産ラインに渡す指示書も出来るんだよ!」
「あ•••、そっか!
なるほど、確かにそれも発注だ。」
「お客さんからの注文を入力すると、数字が計算されるんだよ!」
「•••あぁ、それはそうだよね。
でも、オレも挑戦したことあったけど、完成しなかったんだよなー。」
「ほらほら!
ルカはそれを作っちゃうんだから、スゴいでしょー?』
ミーナは得意気に話す。
「•••いやいやいや、スゴいって思ってる!
思ってるってば。」
⸻
ガヤガヤ。
賑やかな声が聞こえてくる。
生産管理部の男たち。
ミーナは声を掛ける。
男たちは元気に応える。
⸻
ルカが問いかける。
「完成しなかったってことは、途中で行き詰まったんですよね。」
「うん。
なんだったっけなー。
難しいって思ったのって。」
「ひょっとして、在庫量じゃないですか?
そこ計算しないと、在庫あるのに毎回発注しちゃいますから。」
「ん?
あー、多分それだ!
そうそう。
考えながら入力しているうちに、訳がわからなくなるんだよ。」
ハリーは頭をかく。
「•••でも、どういう関数になるの?
めちゃくちゃ長くなるよね。」
眉間にシワが寄る。
目が細くなる。
「私の場合はー、セルを三つ使うんです。
現在、過去、未来ー、って感じで。」
ハリーは固まる。
間を置いて、ハッとする。
「•••あぁ。
そっか。
そんなことだったんだ。
一つのセルじゃなくても良いんだよね。」
眉間のシワが広がる。
「え?
今のでわかったんですか?」
「いや、わかんないけど、ね。
そのアイデアを聞いて、広がったんだよ。
イメージが、いろいろと。」
ハリーは両腕を広げる。
「スゴいね、ルカさん。
本当に!」
「ほら、スゴいでしょー?
ハリーさん!」
ミーナが続く。
ルカは首をかしげる。
「え?
ルカさん、スゴいの?
なになに、聞かせてよ。
マネージャー。」
リクが合流する。
男たちが集まる。
⸻
ランチタイム。
仄々と明るい食堂。
穏やかな時間。
デーブルには小さな花瓶。
真紅のガーベラが微笑む。
ピンクのスプレーローズが添う。
⸻
パサ、パサ。
小さなベランダに太陽が差す。
部屋の中は薄暗い。
カーテンが開いた窓。
景色は見えない。
パサ、パサ。
そよ風になびく。
たくさんの洗濯物。
「お客さまのお掛けになった電話番号は•••。」
スマートフォンを持つエナ。
目を閉じる。
通話を切る。
「あーぁ、•••ここもダメ、かぁ。」
コト。
スマートフォンを置く。
テーブルの上。
画面の表示。
街の時計店。
息が小さくこぼれる。




