↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~   作者: 出雲大吉
第8章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
312/330

第312話 知らなくても仕方がないな


 マリアンネと話をしていると、メルヒオールが部屋に入ってきた。


「諸君、時間だ。筆記担当の者は各部屋に向かってくれ」


 メルヒオールがそう告げると、周りの者が立ち上がり、続々と部屋から出ていった。

 この部屋にはメルヒオールや俺達を含め、10人しか残っていない。


「皆、筆記もやるのか」

「私達は初めてだからじゃない? 多分、次からは両方を担当することになる」


 次があるかね?


「残っている君達は待機だ。トイレ等以外はなるべく、外に出ないでくれ」


 メルヒオールはそう告げると、席についた。


「暇ね。こんなことなら書きかけの設計図でも持ってくれば良かった」

「俺は本でも読む」


 王都に来る前に買った【嫌われているのは好かれる第一歩! まだ諦めるな!】を読む。


「あ、流行っているシリーズのやつじゃない」


 知っているらしい。


「リート支部の本棚には全シリーズがあるぞ」

「え? あれが? どんな職場よ……」


 レオノーラが集めているからな。

 なお、全員読んでいる。


「お前も読んだか?」

「【複数の女性との付き合い方】を買って、職場で読んだ。後輩に距離を置かれたわね。私は上手くやりたかっただけなのに」


 その言葉をそのまま伝えたらより距離を取られると思うぞ。


「俺もそれは引かれたな。良いことも書いてあるんだが」

「表紙が悪いのよね。でも、びっくりなのがそのシリーズがめちゃくちゃ人気なこと。世も末ね」


 なんでこいつって自分のことを棚に上げるんだろう?

 お前も買ってるだろ。


「俺は役に立っている。人として成長できた」


 多分……


「ふーん……それは?」

「これも悪くないと思う」


 嫌われているし。


「そう……暇ねー」


 俺達はやることがないのでひたすら時間を潰し、待っていた。

 すると、扉が開き、40代くらいの男性が入ってきた。


「メルヒオール支部長、明らかに体調がおかしい者がいます。病院に行けと言っても拒否していますが、いかがしましょう?」


 そういう奴もいるだろうな。


「他の受験者に迷惑だ。病院につれていけ。誰か応援に行ってくれ」

「じゃあ、私が行きます」


 マリアンネが立ち上がった。


「暇ではないみたいだな」

「そうみたいね」


 マリアンネは苦笑いを浮かべ、報告に来た男と出ていった。

 その後も本を読んでいったのだが、数十分後に今度は50代くらいの女性が部屋に入ってくる。


「メルヒオール、カンニングだよ」

「ハァァ……今年もか。誰か応援に行ってやってくれ」


 本当に全然、暇じゃないな。

 こういうことのために俺達が待機しているわけだ。


「私が行きます」


 そう答えて、立ち上がり、女性のもとに向かった。


「じゃあ、こっちだから」


 女性と共に部屋を出ると、階段を下りる。


「カンニングはやはり毎年のことか?」


 俺が試験を受けた時にも連れ出される奴がいた。


「毎年、10人くらいかねぇ? 地方の10級を受ける受験生はその10倍以上だよ」


 多いな。


「その紙を作る時間で覚えてほしいものだ」

「まったくだよ。カンニングペーパーで上がる点数なんてたかが知れてるのにそれでこれまでの勉強がパーになるなんてバカのすることさ」


 同意見だ。


 俺達は1階まで降りると、部屋の前で蹲っている若い男とそれのそばにいる50代くらい男性がいた。


「応援か。すまないが、中で受験生を見てくれ。基本、見るだけだ」


 カンニングがなかったらな。


「わかった」

「すぐに戻るからそれまで頼む」


 男性と女性がカンニングした受験生を連れていったので中に入った。

 そして、軽く受験生を見渡し、知り合いがいないことを確認すると、前の方にある席につく。

 皆、真面目に問題を解いているようで問題なさそうだなと思いながら待つことにした。


 たまに歩いて、不審なところがないかをチェックしながら待っていると、30分くらいでさっきの男性が戻ってきたので交代し、3階の待機室に戻る。

 すると、マリアンネもすでに戻っており、席についていた。


「そっちも終わったか?」

「ええ。顔が真っ青だったし、よく来たわって思うわね。担架で運ばれていった」


 カンニングした奴とは違い、これまで頑張ったんだろうな。

 さぞ無念だったことだろう。

 でも、そういう奴は次で受かるから安心してくれ。


「大変だな」

「そうね。そっちは?」

「カンニングだ」

「あー……よくやるわね。確か、カンニングによる不正って1年間、試験を受けられなくなる罰則があるわよ」


 そうなのか。

 それでもやる奴はアホだな。


 その後も待っていると、何回か応援を頼まれ、俺達とは違う人達が部屋から出ていった。

 そうこう慌ただしくしていると、12時を回り、続々と試験官達が戻ってくる。


「諸君、午前中はご苦労だった。多少、問題はあったが、想定の範囲内だ。午後からも頼む。それとこれから採点用紙を配るので名前を呼んだら取りに来てくれ」


 メルヒオールがねぎらいの言葉をかけると、順番に名前を呼んでいく。

 すると、俺の名前が呼ばれたのでメルヒオールのもとに行き、書類を受け取った。

 元の席に戻ろうと思ったが、さっきの50代くらいの女性が手招きをしていたのでそっちに向かう。


「何だ?」

「あんたがジークヴァルトかい。大きくなっていたからわからなかった」


 え? 知り合い?


「すまない。いつ会っただろうか? 人の顔を覚えるのが苦手でな」

「あー、いや、会ったのはかなり前だよ。あんたが子供の時だね。クラウディアの弟子だろ?」


 本部長を呼び捨てか。

 そういえば、俺を含め、一門は子供の頃、本部を見学したことがある。

 もう15年くらい前のことだ。


「ああ。子供の時に会ったのか?」

「一回だけだから覚えてなくても仕方がないよ。私はヴァネサ。昔はクラウディアの上司だったんだよ」


 本部長の上司か。

 当たり前だが、本部長にも若い頃はあるし、上司だって普通にいる。


「じゃあ、本部か。どこのチームなんだ?」


 知らんぞ。

 ほとんどの奴を知らないけど。


「いや、もう引退しているよ。でも、たまにこうして手伝いで呼ばれるんだ。あんたも204号室の担当だろ? このアルノーと私も204号室の試験官だ」


 ヴァネサの横にいる50代くらいの男性が軽く手を上げた。


「どうも」

「じゃあ、ちょっと食事をしながら打ち合せをしよう」


 ヴァネサとアルノーが席についたので俺も座り、受付でもらった弁当を広げた。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【このライトノベルがすごい!2027】
投票先

【新作】
終末世界の帰還錬金術師 ~日本に戻ったら人類と悪魔が戦争をしていましたが、異世界で勇者になれなかった俺達はスルーして適当に生きたいと思います~

【予約受付中】
~書籍~
10/20(火)発売予定
週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~(3)

11/14(土)発売予定
魔法なき世界の異端魔導士 ~冤罪で捕まりかけた大魔導士は異世界で自由気ままに旅をします~(1)

11/30(月)発売予定
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~(2)

【新刊】
~漫画~
その子供、伝説の剣聖につき(1)
web版(カクヨムネクスト)はこちら

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(2)

左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)

~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(3)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(4)

覇王令嬢の野望 ~絶対平和主義の少女に転生した最強女帝の帝国再建譚~(1)
web版はこちら

宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~(1)

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜(2)

【現在連載中の作品】
スマホ転移で始める異世界ゆるゆる生活 ~日本の商品が高値で売れたのでスローライフを目指すことにしました~

魔法なき世界の異端魔導士 ~冤罪で捕まりかけた大魔導士は異世界で自由気ままに人生をやり直すことにしました~

元暗部の英雄、再び暗躍する ~娘のために正体を隠して無双していたら有名になっちゃいました~

宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

【漫画連載中】
その子供、伝説の剣聖につき
コミックグロウル

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜
カドコミ
ニコニコ漫画

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua
― 新着の感想 ―
過去にジークが、陛下の名の下に制定された国家資格での不正は大罪 と言っていることから、カンニングで受験資格1年停止では軽すぎるような、、、
本部長の若い頃とよく似てる、と言われるのだろうか。人間力が上がった今なら、素直に話を聞けそうだ。
なんてスムーズな職場コミュニケーション…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。