第309話 怖いものは怖い
翌日、少し遅めに起きた俺は1階のレストランでバイキングの朝食を食べた後、部屋に戻り、本を読んでいく。
やることがないのだ。
「ヘレン、昨日の話だが、もし、ジーンに行ったリート組が戻りたいと言ってきたらどうするべきだ?」
「ジーク様はどう思われますか?」
うーむ……
「リート支部は人手不足だ。幸い、3人娘は優秀だし、もしかしたらサシャが来てくれるかもしれない。だが、もし、サシャが来てくれたとしても、あの規模の町で5人はきつい。倍以上はいてもいい。だから戻ってくれるなら歓迎すべきと思う。一方で上手くやれるのかという心配もある。お前が言ったように俺は下の者にはまだなんとかなるが、上の者には難しいだろう」
リート組は間違いなく、俺より年上で協会に所属しているキャリアは上だ。
「これは難しい問題だと思います。まずエーリカさんとレオノーラさんは歓迎するでしょう。というのも、歓迎しないわけにはいかないからです。彼女達にとっては新人の頃からお世話になっている先輩です」
それは俺もそう思う。
「選り好みをしている余裕はないしな」
「ええ。ですが、どうなんでしょう? 昨日のマリアンネさんの言葉がすべてです」
どの面下げて戻ってくるのか……
リート組だって、ほぼ新人のエーリカとレオノーラだけが残ればリート支部がどうなるかはわかっていただろうしな。
実際、かなりヤバかった。
仕事はお情け、港町なのにメインである船の仕事も受けられなかった。
民間だったら早々に潰れている。
はっきり言って、どっかの薬屋と変わらない。
「俺はよそ者だから気にしないが……」
「私の予想ではジーク様、アデーレさん、もし、サシャさんが来ればサシャさんの3人と元リート組が対立します。エーリカさんとレオノーラさんは板挟みですね。支部長さんでは仲介が難しいです」
そうか……
「なら理由を付けて、断った方がいいか?」
「それが難しいところなんです。断る理由がありません。地元に帰るというのはごく自然なことです。悪気はないですけど、田舎の噂は早いですよ?」
確かに早いな。
リートでは俺のことを知らない奴はいないんじゃないかって思うし、マルティナの店のことも職人連中やヴァルター、マライアは知っていた。
つまり俺が地元に帰ろうとしている錬金術師の異動を断ったこともすぐに町に共有されてしまうのだ。
地元民は良く思わないだろう。
「面倒な……」
「ここは本部長さんに相談しては? ジーン支部が縮小化したらかなりの数の錬金術師があぶれることになります。その後の異動先の斡旋を促してもらうのです。どこも人が足りていないでしょうし」
それでも地元に戻りたいという可能性もあるが……
「わかった。本部長に話してみる。ただ、このことはエーリカとレオノーラには伝えるな」
「わかってます。相談するならアデーレさんが良いと思います」
わかっている。
その後も本を読んでいくと、昼になった。
ルームサービスでも頼もうかと思って、メニュー表を取ると、ノックの音が聞こえてきた。
しかも、3つだ。
「開いてるぞ」
そう答えると、予想通り、3人娘が部屋に入ってきた。
「お久しぶりですー」
「やっほー。浮気してない?」
「ねえ、本当に誰がノックしたのかわかる?」
まだやってるのか。
「エーリカ、レオノーラ、アデーレだろ」
しゃべった順番通りだ。
「「「おー……」」」
何が?
「そんなことより昼食にしようと思っているんだが、お前らは食べたのか?」
「まだですね。空港に着いて、まっすぐホテルに来ましたから」
「一緒に食べようって誘いに来たんだよー」
「部屋で食べる?」
4人なら外でもいいが……
「明日が試験だし、部屋にするか。ウイルスが蔓延しているかもしれない」
試験の最大の敵は風邪だ。
「わかりました。ジークさんは何にします?」
「俺はパスタで良い」
そう言って、メニューをエーリカに渡す。
すると、3人で見始めた。
「私もパスタにします」
「私もー」
「じゃあ、私もそうするわ」
皆、パスタね。
「じゃあ、注文しておくから荷物とかを置いてこいよ」
「はーい」
「お願いね」
「よろしく」
3人が部屋から出ていった。
「ヘレンはどうする?」
「ステーキです」
さすがに肉食だな。
「わかった。注文しよう」
電話を取り、ルームサービスを注文した。
そして、そのまま待っていると、3人娘が部屋に戻ってくる。
「そういえば、ジークさん、試験官の説明はどうだったんですか? なんか予定が変わったって下で聞きましたけど」
席についたエーリカが聞いてくる。
「今回から色々と試験監督のやり方が変わったらしい。それで昨日の午前中で終わった」
「え? 変わったんですか?」
「いや、試験自体は変わってないし、これまで通りに受けてくれればいい。変わったのは管理体制の方なんだ。これまでと同じく、リラックスして、余裕を持って試験に臨んでくれ」
この3人はそれで受かる。
エーリカはもちろんだし、レオノーラの座学もアデーレの実技も間に合った。
「それは良かったです」
「ちょっとびっくりしたね」
「そうね」
アデーレは前回の試験の不正のことを知っているから察しはついているだろうな。
「そういえば、アデーレ、飛空艇は大丈夫だったか?」
前回も行き、帰りとビビりまくってた。
「大丈夫よ。もう何回も乗ってるしね」
ほう?
「ずーっと私の手を握っていたのに何を言ってるのさ?」
「ずーっと下を向いていましたね」
「ちょっと考え事をしていただけよ」
嘘つけ。
アニマルセラピーのヘレンがいないからだろ。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
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4巻を出せるのも皆様の応援のおかげですし、ありがたい限りです。
ぜひとも手に取って読んでいただければと思います。
また、電子の方では1~3巻もセールをしていますし、まだ読んでない方も読んで頂けると幸いです。
よろしくお願いします!




