第303話 大丈夫か?
クリスと夕食を食べると、その場で解散し、ホテルに戻った。
シャワーを浴び、夜景を眺めながらウィスキーのロックを飲む。
もちろん、金属探知機も作っている。
「いやー、美味しいご飯でしたね。大満足です」
ヘレンはご機嫌だ。
なお、ドロテーもはちみつを食べて満足そうだった。
話はつまらなかったが。
「良かったな。本当にレオノーラとの食事についてこないのか?」
「行きませんよ。もう私がいなくても気まずくなることもないでしょ」
前にアデーレとサイドホテルに行った時にそんな話もしたな。
今はアデーレと2人でも大丈夫だ。
もちろん、レオノーラもエーリカも。
「まあな。さて、ヘレン、先に寝ていいぞ。俺はこれを仕上げてしまう」
ウィスキーのロックを飲み干すと、本格的に金属探知機の作業に入る。
「いえ、私も起きています」
優しい子だ。
今日はずっと起きていたから眠いだろうに。
俺も明日は朝から会館に行かないといけないし、さっさと終わらせよう。
「ありがとうな」
その後、ひたすら作っていき、1時を越えた辺りで完成したので就寝した。
翌日、ちょっと眠かったが、頑張って起きると、準備をし、1階のバイキング会場に向かった。
そして、適当に料理を取ると、席につき、ヘレンと食べていく。
「美味いな」
「さすがですよね。私、ここのバイキングが好きなんです」
知ってる。
お前もだし、三人娘もだ。
今回は違うホテルにしようかみたいな話も出たのだが、結局、ここになったのはこのバイキングが大きいと思う。
「俺も前回は最後の朝に食欲がなかったからな。やはり美味いと思う」
思えばあの時にはすでに兆候が出ていたんだよな。
あの時に薬を作って飲んでいればあんなに辛くはなかっただろう。
俺は学習できる人間なので次からは気を付けようと思う。
俺とヘレンは朝食に舌鼓を打つと、ホテルを出て、会館に向かう。
「他の試験官ってどんな人ですかね?」
「ジジババだ。3級以上だからそうなる」
俺が試験を受けた時も試験官は基本的に40オーバーばかりだった。
「ケンカを売ったらダメですよ?」
「売らない。時間の無駄だ」
そもそも興味がない。
3級以上ということは皆、実力があるんだろうが、だから何だという話である。
しょせんは全員、俺以下の凡夫共だ。
まあ、そもそも一緒に試験を見るだけだから才は関係ないのだが。
「ジーク様、お弟子さんや年下の方、それに後輩には優しいですけど、年上には当たりがきついですからね」
そんなつもりはないが、向こうのスタンスだろうな。
下の人間と上の人間では俺に対する態度が違うのだ。
俺自身は何も変えていない。
ただ、一門は昔から変わっていないからちょっと違うし、受付の人間には優しくしている。
「話すこともないだろ。黙々と試験官としての職務を全うするだけだ」
「だといいんですけど……」
歩いていくと、会館に着いたので見上げる。
相変わらず、無駄に大きく、税金の無駄遣い臭がぷんぷんする。
「さて、説明会場は……」
「あそこでは?」
ヘレンが尻尾で指した先には【国家錬金術師試験説明会場】と書かれた看板がかけられていたので行ってみる。
すると、玄関があったので中に入り、近くに受付があったのでそちらに向かった。
「おはようございます。試験官の方ですか?」
若い女性が聞いてくる。
「ああ。リート支部のジークヴァルト・アレクサンダー3級国家錬金術師だ」
「えーっと……」
女がリストのようなものを確認する。
「あ、ありました。ジークヴァルトさんですね。2階に行ってください。ジークヴァルトさんは10級の実技試験を担当していただくことになります」
ん?
「もう決まったのか?」
「はい。いつもは希望なんかを聞いて、話し合いと代表の権限で決めていたのですが、今年からはあらかじめ、私達、運営委員で決めました」
アウグストの不正があったからか。
こりゃ本当にマルティナを始めとするツェッテル一門の担当にはならんな。
「わかった」
「あ、それとですけど、ジークヴァルトさんは採点に参加いただけますか?」
採点……本部長は前にやらなくていいって言っていたが……
「いつだ? 俺はリート支部だから帰らないといけないぞ」
「試験の翌日から始めます。人手が足りないので1日でも良いので参加して欲しいんですが」
10級も含めると、試験を受ける人間は本当に多いからな。
地方を含めると、軽く万を超える。
「わかった。試験の翌日とその翌日は用事があるが、3日後にやろう」
翌日は陛下と会うし、その翌日はレオノーラとディナーがある。
ディナーは夜だが、多分、昼は3人娘と出かけると思う。
「ありがとうございます。それではその日に同じ2階の部屋に行ってください。毎年のことですが、しっちゃかめっちゃかですから」
しっちゃかめっちゃか……
「独り言だが、そんなんだから試験解答の書き換えなんて起きるんじゃないのか?」
そんな状況なら簡単にできそうだ。
「…………ちょーっと考えてみますね」
遅いわ。
運営委員会とやらはバカしかいないのか?
「そうしろ。試験官を信用するな」
「そうします」
女が頷いたので近くの階段に向かった。
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