第270話 ないない
仕事をしていくと、電話が鳴る。
「あ、俺が出る」
腰を浮かしたエーリカを制した。
「そうですか?」
「多分、ゾフィー、サシャ組だ」
そもそもウチに電話なんて滅多にないのだ。
「そうかもしれませんね」
エーリカが浮かした腰を下ろしたので立ち上がり、電話を取った。
「こちら、錬金術師協会リート支部だ」
『あ、ジークさん、こんにちはー。サシャです』
やはりサシャだ。
「ああ。こんにちは。どうした?」
『例の出張の件です。明日の朝一の便でそちらに向かうことになりました。昼ぐらいに着くと思います』
「早いな」
マルティナはともかく、こいつらは仕事の調整とかあるだろうに。
『稟議も何もなく、本部長が行ってこいって言うもんで……』
「そうか。こちらは助かる。どこに泊まるんだ?」
『私は皆さんが勧めるサイドホテルですね。ゾフィーさんはジークさんのところって言ってました』
あいつ、ウチが好きなのか?
いや、エーリカか。
「わかった。じゃあ、頼む」
『はい。こちらこそよろしくお願いします』
用件が済んだので電話を切ると、席に戻る。
「サシャさんでした?」
エーリカが聞いてくるが、ゾフィーとは思わないらしい。
「サシャだと思ったか?」
「ジークさんはゾフィーさんと言うか、同門の方に遠慮しないからわかりますよー」
ふーん……まあ、人間性を上げようと頑張っているが、あいつらには別にそんなことしなくていいしな。
「そうか。まあ、サシャだったな。明日の昼にゾフィーと一緒に来るらしい」
「おー、早いですね。楽しみです」
「そうだな」
あのエントランスにあるゴミの山を処分したいわ。
俺達はその後も仕事をしていき、この日も残業せずに帰った。
そして、勉強会をし、この日を終えた。
翌日、出勤すると、エントランスにある廃品の山が目に付く。
まだ銀やアルミ、ステンレス鋼の錬成に集中しているため、この廃品の山には手を付けていない。
エントランスを抜けて、共同アトリエに入った時にせっかくの新築なのになってちょっと思った。
「ジークさん、サシャとゾフィーさんは午後から来るのよね?」
仕事を始めると、アデーレが聞いてくる。
「そうだな。サシャのことを頼むぞ」
「いや、気にしすぎじゃない? あなた、サシャとも普通に話してたじゃないの」
アデーレが呆れる。
「なんかアデーレさんが来た時を思い出しますね」
「あの時も気にしてたもんね。なんか本当に受付嬢が好きでドキドキしている男の子みたい」
堂々とひそひそ話をするな。
そもそも受付嬢が好きな男って何だ?
どこに惹かれる要素があるかもわからんわ。
「やっぱいいわ。普通でいこう」
「そう言ってるじゃないの……それで午後からはあの廃品をやる感じ?」
そうだなー……
「せっかくだし、サシャにも錬成をやらせてやるか……」
マルティナは無理だし、ゾフィーは練習する意味がないからあの2人はひたすら廃品処理でいいだろう。
「まあ、せっかく来るわけだし、それが良いと思うわ。受付って本当に錬金術をやらないし、サシャだって錬金術師になりたくて、本部に就職したわけだしね」
「錬金術の喜びを知り、ウチに異動してくるわけだね」
「素敵です」
素敵ではないと思う……
「ジーク様、お迎えはどうします?」
ヘレンが聞いてくる。
「迎えとは?」
「アデーレさんにしても、ゾフィーさんにしても迎えに行ってたじゃないですか。大事なことですよ」
それはわかるんだが……
「ゾフィーが一緒だし、あいつら、多分、そのまま魚を食べに行くと思うぞ」
前もそうだったが、朝一の便に乗ると、こっちに着いた時にはちょうど昼時なのだ。
「それでも迎えに行かれた方が良いと思いますよ」
「俺? アデーレじゃなくて?」
「誘ったのはジーク様ですし、チームリーダーじゃないですか」
まあな……
「じゃあ、昼前に行くか」
ヘレンが言うんだからそうした方が良いだろう。
「そうしましょう」
俺達はその後も仕事をしていったが、昼前になったのでヘレンを抱え、空港に向かう。
「ジーク様、実際、受付嬢が好きなんですか?」
ヘレンまで聞いてきた……
「受付嬢に好きも嫌いもない。ただ、俺はそこまで社交的じゃないし、一門の他には同じ学校のマルタやサシャ、それに最近は見てないが、ヴォルフくらいとしか話さないだけだ」
ヴォルフ、どうしてるんだろ?
「まあ、そうですね」
「あと、やっぱり電話したら出てくるのはサシャだし、本部行ったら最初に会うのが受付だからな……アデーレの件があるから挨拶は欠かさないようにしているし、無視をしないようにしているのだ」
そうすると必然的には話す回数は多くなる。
「ふむふむ……なるほど。私が思いますにジーク様は積極的に話しかけてくる女性が良いと思います」
あれ? そういう話だったの?
「そんな奴おらんぞ。本部長かハイデマリーくらいだ」
あと知らない人が一緒の時のゾフィー。
テレーゼはちょっと時間が空くとすぐによそよそしくなる。
最近はそうでもないが……
「お母さんとお姉ちゃんじゃないですか……ちゃんといますよ。3人くらい……」
あいつらだろ。
どっちみち、身内じゃないか。
「あ、マルティナがいたぞ」
あいつも結構、話しかけてくる。
「ジーク様、悪いことは言いませんからそこだけはやめましょう。お互いにストレスマッハだと思います」
そこははっきりと頷ける。
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