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第3話:腕試し 開花していく俺の能力★

【王都オラム中心部:闘技場】

俺とシェムハザの二人は、闘技場へとやってきていた。

目的は俺の実力を測るための腕試しだ。


他の住宅ブロックの住民もちらほらと観客席に座ってこちらを見ている。

ちょっとした見世物感覚で来たようだ。



そんな中、シェムハザが俺に話しかけた。


「コウヘイ君。準備はいいかい?」


「いつでもいけます。シェムハザさん。」


「OK。それじゃあ行くよ!」



言い終わるやいなやシェムハザは木剣を振りかぶって、俺の方へと突進してくる。

俺はその動きを止めるべく対戦相手に杖を向けた。


「雷《ドナー》! 氷塊《アイスカイル》!」


叫びとともに攻撃魔法が迸った。

電撃の槍、相手を凍り付かせる魔力の塊の二つがシェムハザへと撃ち込まれていく。



「初級魔法を使ってウォーミングアップするつもりだね! 最初から本気で来てほしかったんだけどな。」


木剣を水平に薙いで、シェムハザは二つの攻撃魔法を消滅させてしまう。


(やっぱ俺の攻撃魔法弱すぎない!? 全く効いてなくない!?)


俺の考えを余所に、シェムハザは俺の眼前へ急接近してくる。

目前まで迫ってきたシェムハザは、俺に話しかけてきた。


「さあ、君の魔法で僕の攻撃を防いでみなよ。早く本気を見せてくれ!」



俺はここに来て最初の戦闘のことを思い出す。

バフを掛けただけで、普通の少女をめちゃくちゃ強くできたんだ。

俺自身を強化すれば、シェムハザの一撃を防ぐことくらい造作もないはずだ。


「ステータスウィンドウ展開! 俺自身を『指揮下の戦力画面』から選択してバフを掛ければ......追加対象に俺が含まれてないぞ!?」


(どこだ? バフを掛けるには、画面から対象を選ぶ必要があるのに......もしかして、自分自身を強化することはできないのか!?)



慌てふためく俺。

顔を上げると、木剣の刀身部分が俺の顔の目の前にあった。


ゴン!


鈍い衝撃音とともに俺の意識は消えていった。





~~~~

勝負を終えた俺は、シェムハザから問い詰められていた。


「君、本当に魔物を撃退したのかい?」


「ええ、一応は。」


「攻撃魔法も初歩的なものだけだったし、威力も本来のものよりも低い。これじゃあ、魔物には全く効かないと思うんだけど。」


「そうですね。実際に全く効きませんでした。襲われていた子にバフ魔法を掛けたら、その子が滅茶苦茶強くなって簡単に撃退できました。」


「本気で言ってるの? 普通の少女を強化したところで何も変わらないはずだよ。」



俺の言葉をシェムハザは全く信じなかった。


それもそうだ。

RPGゲームなんかでもある程度強いキャラにかけてこそバフは意味が生まれる。

どんな強力なバフだったとしても、レベル1のキャラでボスキャラを倒せるようになんかならない。

俺が言ってるのはそのレベルの無茶苦茶なことだ。

それこそ『チート』でも使わない限りそのようなことは起こらない。


ん、『チート』?



(いやまさか、そんな都合のいいことあるわけないよな? だけど、物は試しだ。)



「シェムハザさん。あなたにバフを掛けてみてもいいですか?」


「どうしたんだい急に?」


「俺の能力が本物かどうか調べてみたいんです。騙されたと思って協力してください。」


「わかった。いいよ、やってみてくれ。」



俺は『指揮下の戦力画面』を開いた。

そこには追加対象としてシェムハザさんが入っていたので、『戦力の追加』ボタンを押して、彼を指揮下の戦力に編入させてみた。


バフを掛ける直前に、俺はなんとなく『戦術ウィンドウ』の方に目線を向ける。

最初に見たときは、白地図だったはずの画面。

今はその画面に周囲の地形と、敵味方を表すと思われるシンボルが表示されていた。


シェムハザさんを表していると思われる緑色のシンボル。

俺のものと思われる青色のシンボルの二つが、戦術ウィンドウの地図上に描写されている。


(やっぱりゲームの画面みたいだ。前は慌ててたから見落としていたけど、かなり便利そうだ。)



画面から目を離して、シェムハザにバフを掛けた。


「とりあえず身体強化《シュテルクング》と物理攻撃強化《フュズ・ヴァイト》を掛けてみますね。」



(前にやったみたいに、シェムハザさんの『支援対象に選択』の欄にチェックを入れて、魔法を使えば。)


「身体強化《シュテルクング》! 物理攻撃強化《フュズ・ヴァイト》!」


シェムハザに向けて俺は魔力を流す。

その直後に、シェムハザが青いオーラに包まれていく。


「少し身体の動きが軽くなった気がするが、その程度だね。そこまで強化されている感覚は無いけどな。」



そう言ってシェムハザは木剣で軽く素振りを始めた。


「とりゃあ」



ドゴン! ゴオオオン!!


明らかに素振りでは発生しない爆音が響く。

直後に観覧席の方から何かが崩壊する音が響いてきた。


「ぎゃー! 逃げろ!」

「やばい! 観覧席が崩れる!!」

「助けてくれ!」



「「......え?」」



ちょっと素振りをしただけなのに、その一振りで衝撃波が発生したようだ。

競技場の壁まで到達した衝撃波は、命中した箇所に大穴を開けて......観客席を崩落させてしまった。

幸い直撃した箇所には観客がいなかったものの、崩落が周囲に広がって周囲は阿鼻叫喚の大騒ぎになった。



「僕ちょっと素振りをしただけなんだけど......」

「俺ちょっとバフを掛けただけなんだけど…...」


「「どうしてこうなった!?」」





~~~~

1時間後


「あなたたちやり過ぎですよ。事故でしたし、怪我人が出なかったので許して差し上げますが。」


「「すみませんでした。メタトロン騎士団長。」」


闘技場の中心で俺とシェムハザは正座させられていた。

原因は、先ほど俺たちが起こした事故だ。

そんな俺たちに、目の前に立つメタトロンが再び口を開く。


「それにしても、コウヘイ君のバフはあり得ないほど強力ですね。それを複数人に掛けることは可能ですか?」


「多分可能だと思います。」



そう言って、俺は『指揮下の戦力画面』を開いた。

それを目の前の団長に見せながら説明を行った。


「この画面でバフをかける対象を選べます。複数人相手は試していないですが、画面を見た感じ複数人にも対応してそうです。」


シェムハザが答えて、メタトロンが後に続く。


「不思議な魔法だね。こんな画面を映し出す魔法なんて僕は聞いたことないよ。」


「私も初めて拝見しました。この画面を見た感じ、数百人くらいの軍勢にもバフを掛けられそうですね。少し試してみましょうか。」


パンパンと手を叩くメタトロン。


「闘技場を修理しているオートマタを全て持ってきて下さい。」



彼は俺に告げる。


「二百体くらいいます。その全てにバフを掛けてみてくれませんか?」





~~~~

更に1時間が経過した。


「まさかこの僕がオートマタごときに負けるなんてな。それもたった五体を相手にしただけで......」


ボロボロになったシェムハザがそうぼやいた。

普段であれば、シェムハザは100体以上のオートマタと同時に戦っても容易に勝てる。

だが、俺のバフを掛けられたわずか五体のオートマタに、彼は敗北を喫したのだ。



彼の言葉を聞いた俺は、さっきの腕試しの試合で彼が言った台詞を意趣返しのつもりで言ってみた。


「本気出さないと駄目なんですよね? シェムハザさん。」


「一本取られたなコウヘイ君。さっきの戦いで『本気で来てほしかったな。』なんて言うんじゃなかった。ただ単に君が活躍できる条件じゃなかっただけだったね。」



上機嫌でアハハと笑う俺たち二人。

同じく上機嫌になったメタトロンがつぶやいた。


「五体だけではなく、二百体のオートマタにも同時にバフを掛けられるとは驚きました。対象が増えるほど一体あたりの強化具合は減るみたいですが、それでもアホみたいな強さに強化されるとは思いもしませんでした。」


「正直自分でも驚いてます。」


「それもそうです。バフを掛けた程度でここまで強くなることはありません! それに『作戦指揮魔法』も使えるとのことですね。」



メタトロンの言葉に俺は頷く。


「『指揮下の戦力』に加えた相手に指示を出すことは可能みたいですね。ただ、あくまでも指示を出すだけで、必ず従うわけではないですが。」


シェムハザが思わず声を上げる。


「それで十分じゃないか! 上官の命令に部下は必ず従うわけじゃない。そもそも戦闘中に正確に命令を伝えること自体難しい。それを簡単に実現するなんて凄すぎるよ。」


(ぶっちゃけこれが必要になる状況にはなりたくないな。『兵器とかが好き』なだけで『戦争』が好きなわけじゃないし。)



俺の懸念を余所にメタトロンが話しかけてきた。


「『戦術ウィンドウ』で戦場全体を俯瞰することも出来るんでしたよね?」


「ええ、敵味方の位置が周囲の地形と一緒に表示されます。敵の位置も自動で見つけてくれるみたいです。」



その答えを聞いて、二人は俺を褒め称える。


「本当に規格外だね。味方を強化する以外にも戦闘指揮まで執れるなんて。」


「ああ、全くです。このような人材は他におりません。」



二人に褒めちぎられて、少し照れた。


「だけどさ、この威力だと味方に当たると同士討ちが頻発するよ。実際に使うときはもう少し効果を減らしてね。」


シェムハザは俺に釘を刺すことも忘れなかった。


「......善処します。」



さすがに今日はやり過ぎたな。

反省反省。

でも、正直ここまで人に褒められた経験が無かったからとてもうれしいな。



俺がそんなことを考えている中、シェムハザが話しかけてきた。


「次のレイドには参加するべきだ! 大活躍すること間違いなしだよ! 参加を希望してくれるかい?」


「もちろんです! 一緒に邪悪な魔物共を蹴散らしてやりたいです! 是非戦わせてください!!」


(あれ? やっぱり、俺の中の何かが変わった気が......気にしすぎか。)


変な考えが頭をよぎったが、ぶっちゃけどうでもいいと思った。

だって、俺は以前の未熟な俺ではないんだから。



役立たずだと思っていた自分が活躍できる!

この喜びを誰かに伝えたい!

そう思って、二人に声を掛けた。


「サーシャおばさんに早くこのことを伝えたいです! あと、オス......カ......さんだっけ? 彼にも......」



なぜかよく知っているはずの人物の名前が思い出せなかった。

困惑する俺にメタトロンが答えた。


「オ......なんとかさんとは誰ですか?」


「同じBブロックに住んでいるひ......あれ、そんな人住んでいたっけ? あの家は前から空き家だったような?」



今度はシェムハザが話しかけてきた。


「腕試しの時に頭を打っておかしくなったんじゃないか? 今日は早く休むべきだ。」


俺は答えた。

言いようのない違和感を感じながら。


「そう......ですね。疲れているみたいです。」



最後にメタトロン騎士団長が質問を投げかけてきた。


「確認しますよ。君はオ(・)ス(・)カ(・)ー(・)を覚えていますか?」


「ええ、覚えてい......るわけありません! 誰ですその人?」


「「よろしい。今日は帰っていいよ。」」



二人に促されるままに自宅へと帰っていった。

家に帰る途中、空き家が増えている気がした。


まあ、気のせいだろう。

違和感も疲れていた所為だろうな。

シェムハザさんも少し暗い顔だった気もするけど、気のせいだろう。





第四話に続く







ここまでで導入は終わりです。

第4話から物語が大きく動いていきます。

また、主人王であるコウヘイもこの回から大活躍していきます。

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