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COSKILLER (コスキラー)―CKR(シクル)―  作者: 黒薔薇
死刑囚の元コスプレイヤー 久我 誠司(くが せいじ)
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9/54

消された記録

静まり返った廊下で

誰も、すぐには言葉を発しなかった。


最初に口を開いたのはHeroだった。


「……誰だ?」


声は静かだったが、

その静けさがかえって緊張を生む。


高橋は息を飲むが

指先が小さく震えている。


「病院の……副院長です。」


久我が顔を上げた。


「副院長?……」


その名前には聞き覚えがあったし

何度か話したことがある。


美咲の容体が悪化したとき、

「心配しなくて大丈夫です」と笑っていた男だ


「どういうことだ?」


久我の声が低くなると

高橋はゆっくりと言葉を選んだ。


「あの日……美咲ちゃんが亡くなった後…

カルテの一部が、急に閲覧禁止になったの。」


Maskの目が細くなる。


「一部?」


「ええ……」


高橋は頷いた。


「検査データと、投薬記録に……」

それと、主治医の所見も」


Mirageが静かに尋ねる。


「理由は?」


「教えてもらえなかった…」


高橋は俯く。


「でも……私、見てしまったの…」


全員の視線が集まる。


「副院長が言っていたのをね…」


震える声で


「『これは表に出すな』って…」


沈黙。


「『余計な問題になる』って……」


久我は何も言わず

表情も動かないで


ただ、

その目だけがまっすぐ高橋を見ていた。


Heroが聞く。


「証拠はあるか?」


高橋はすぐには答えなかった。


しばらく迷ってから、

小さく頷く。


「……あるわ」


今度こそ、空気が変わった。


Jokerが目を見開き

Dollも息をのむ。


Knightが短く言う。


「どこだ?」


高橋は周囲を見回してから

まるで誰かに聞かれていないか確認するように


そして、小さな声で言った。


「まだ……病院の中」


五分後

病院の一角


夜間はほとんど使われていない古い資料室の前に、

七人と一人が立っていた。


「ここよ…」


高橋が言う。


「電子化される前の書類が、

一部残されてる場所よ…」


Maskがドアを見る。


「鍵は?」


「私が持ってるわ」


高橋はポケットからキーホルダーを取り出した。


カチャ


静かな音とともに、扉が開くと

古い紙の匂いが漂ってきた。


部屋は狭く

棚がいくつも並び、

ファイルがぎっしり詰め込まれていた。


「……。」


久我はゆっくりと中へ入った。


ここにも来たことはない。


美咲が入院していた頃、

自分は病室と売店を往復するだけだった。


知らない場所だ。


そして――

知らない場所に、

美咲の記録が眠っている。


それが少しだけ悔しかった。


「探すぞ!」


Heroが言う。


「全員で分担しようか?」


「了解。」


「うん。」


「分かった。」


それぞれが動き始める。


久我も近くの棚へ向かい

指先でファイルをなぞる。


年度別に

診療科別や

それに患者番号別で

紙の束が並んでいる。


そのとき


「……久我!」


振り向くと

Knightだった。


「無理するなよ?」


「……してない。」


「そう言うけど…顔色が悪いぞ?」


「そうか?」


「そうだ…」


短いやり取りで

しばらくして

Knightがぽつりと言った。


「下手したら見つからない可能性もある。」


久我は黙る。


「それでも探す」


その言葉に

久我は小さく息を吐いた。


「……お前」


「なんだ?」


「意外と優しいんだな」


Knightは一瞬黙った。


そして


「そうか?」


真顔で返したら

久我は思わず吹き出した。


小さく

本当に小さく

笑ってしまった。


そのときだった。


「……あ」


Dollの声で

全員が振り向く。


Dollが一冊のファイルを持っていた。


その表紙を見て、

久我の呼吸が止まる。


そこには

患者名――

**久我 美咲**

そう、書かれていた。


誰も動かないで

Dollがそっと差し出す。


「……これ!」


久我は、ゆっくり受け取った。


指先が震えている。


重い

紙なのに。

やけに重かった。


そして

静かに、ファイルを開く。


一枚目は基本情報


二枚目は診察記録


三枚目は検査結果


ページをめくる


そして

あるページで

手が止まった。


「……何だ、これ?」


久我の声が掠れ

全員が近づく。


そこには

投薬記録が記載されていた。


だが

一行だけ

黒いペンで塗り潰されている。


不自然なほど、

丁寧に完全に

消されていた。


静寂。


そして

Maskが低く言った。


「……これ…多分」


顔を上げる。


「意図的に消されている。」


久我が息をのむと

Mirageも静かに呟く。


「隠したかった記録ね……」


誰も動かない。


そのとき

資料室の外から。


カツンと

靴音がした。


全員の視線が扉へ向く。


カツン


また一歩


誰かがいる


そして

静かな男の声がした。


「その記録を、見つけてしまいましたか?」


資料室の空気が、

一瞬で凍りついた。


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