制裁
資料室の外で
静かな男の声がした。
「その記録を、見つけてしまいましたか?」
扉の前に立っていたのは、
白衣を羽織った男だった。
五十代半ばで
整えられた髪に
穏やかな顔をしている。
だが、
その目だけは笑っていない。
高橋の顔から血の気が引いた。
「……副院長」
男はゆっくりと視線を向ける。
「高橋さん」
そして
久我を見た。
一瞬だけ、
その表情が固まる。
「……まさか」
久我が黙っていると
男の顔から笑みが消えた。
「君は……死刑判決を受けたはずでは?」
静寂。
そして
Heroが一歩前へ出た。
「質問するぞ?」
副院長が目を細める。
「君は?」
「答えろ!」
Heroの声は静かだった。
「この記録を消したのは、お前か?」
沈黙。
男は小さく息を吐いた。
「……だとしたら?」
その瞬間
資料室の空気が変わった。
Jokerから笑みが消え
Dollの目が冷たくなる。
Mirageが静かに男を見ると
Knightが一歩前へ出た。
Maskは無言で端末を起動する。
そして
Heroが言った。
「なるほど…」
その声には怒りもなく
ただ、静かな決意だけがあった。
副院長が口元を歪める。
「分かったところで、どうするつもりです?
私を裁くのですか?
警察でもない君たちが?」
すると
今まで黙っていた久我が口を開いた。
「……なんで?」
副院長が見ると
久我の声は震えていた。
「なんで、美咲の記録を消した?」
男はしばらく黙っていた。
やがて
「問題になるからです。」
その一言だった。
「新薬の件が公になれば、
多くの人間が責任を問われる。」
「病院も終わるし…研究も終わる。
だから、必要な処置でした。」
静寂。
「……必要?」
久我が呟くが
副院長は淡々と続ける。
「一人の患者の記録です。
それ以上でも、それ以下でもない。」
その瞬間
バンッ!と
大きな音が響いた。
久我の拳が棚を叩いていた。
「……一人?」
息が荒い。
「美咲は……」
声が震える。
「美咲は、人間だった……!」
誰も動かないで
副院長だけが黙って見ている。
すると
Heroが前へ出た。
「CKR」
五人が顔を上げ
Heroが静かに告げる。
「制裁を執行するぞ!」
副院長が鼻で笑う。
「……何をする気です?」
Heroは答えた。
「お前から、仮面を剥がす」
Maskが端末を掲げる。
「音声、録音済みよ♪」
Mirageがタブレットを持ち上げる
「病院の内部記録も確保したわ。」
高橋が震える手を上げた。
「私……証言します。」
Jokerが静かに笑う。
「逃げ道、なくなっちゃったね?」
Dollが副院長を真っ直ぐ見た。
「あなたが消そうとした子の名前」
そして
一文字ずつ、はっきりと言う。
「久我美咲は」
Knightが低く続ける。
「忘れさせない。」
最後に
Heroが告げた。
「これが、俺たちの制裁だ。」
資料室に
長い沈黙が落ちた。
副院長は初めて言葉を失っていた。




