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COSKILLER (コスキラー)―CKR(シクル)―  作者: 黒薔薇
死刑囚の元コスプレイヤー 久我 誠司(くが せいじ)
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11/54

剥がれた仮面

資料室は静まり返っていた。


副院長は何も言わず

ただ、目の前の六人を見ている。


そして

久我誠司に


「……馬鹿な。」


かすれた声だった。


「証言一つで……何が変わる?」


Maskが静かに答える。


「一つじゃない。」


端末を操作すると

モニターにデータが表示された。


「削除された投薬記録や

アクセス履歴。」


「それに…

改ざん前のバックアップに

そして、先ほどの自白。」


副院長の顔色が変わる。


「な……」


Mirageが続ける。


「さらに内部証言が加わる。」


高橋が小さく頷いた。


「私だけじゃありません。」


全員が彼女を見る。


高橋は震えながらも、まっすぐ前を見ていた。


「……他にもいますよ…」


「知っている人がね…」


副院長が目を見開く。


「馬鹿な……」


「皆、怖かっただけです。」


高橋の声は震えている。


「でも……忘れてなんていません。」


沈黙。


副院長が後ずさる。


「違う……」


「私は病院を守ろうと……」


「研究を……」


「多くの患者を……。」


そこで


「違う。」


久我が口を開いた。


副院長が顔を上げると

久我は静かに言った。


「守ったんじゃない。」


一歩。


前へ出る。


「切り捨てたんだ。」


また一歩。


「美咲を。」


副院長の唇が震える。


「……。」


「名前も。」


「記録も。」


「生きていた証拠も。」


久我の声は、驚くほど静かだった。


怒鳴りもしない。


泣きもしない。


ただ。


真っ直ぐだった。


「だから。」


胸元の手紙を握る。


「俺は許せなかった。」


沈黙。


「でも。」


そこで言葉を切る。


久我は手の中の便箋を見た。


『誰かを嫌いになりすぎないで。』


美咲の文字。


その言葉が、胸の奥で響く。


長い沈黙のあと

久我はゆっくり顔を上げた。


「……でも、美咲は。」


息を吸う。


「きっと、こんなことは望まない。」


全員が彼を見る。


久我は副院長を見つめた。


「あなたを許すわけじゃない。」


「何もなかったことにもできない。」


「だけど。」


声は震えていた。


それでも、最後まで言い切る。


「あなたがやったことを……ちゃんと残してほしい。」


副院長が固まる。


「消さないでくれ。」


静かな声だった。


「美咲が生きていたことを。」


「なかったことにしないでくれ。」


資料室が静まり返る。


副院長は何も言わない。


しばらくして。


肩が、小さく震えた。


「……私は。」


掠れた声。


「私は……。」


初めて。


目を伏せた。


「……怖かった。」


誰も口を挟まない。


「もし公になれば。」


「終わると思った。」


「全部……。」


声が途切れる。


「だから……。」


それ以上、言葉が出ない。


Heroが静かに言う。


「終わらせたのは、お前だ。」


副院長が顔を上げる。


「一人の患者の記録を消した瞬間。」


「その時点で。」


「お前自身が、医者として終わっていた。」


静寂。


副院長は何も言えない。


そして。


ゆっくりと。


力なく椅子へ腰を下ろした。


—


そのとき。


遠くで、サイレンの音が聞こえた。


全員が顔を上げる。


Maskが画面を見る。


「来た。」


「通報したのか?」


Knightが聞く。


Maskは頷く。


「ああ。」


Jokerが小さく笑う。


「仕事早い。」


Heroは副院長を見る。


「逃げるか。」


副院長は首を横に振った。


「……もう。」


小さく笑う。


「逃げられない。」


Mirageが静かに言う。


「それでいい。」


高橋が涙を拭う。


久我は何も言わない。


ただ。


手紙を胸に抱いていた。


サイレンが近づいてくる。


そして。


Heroが、久我の隣に立った。


「終わりじゃない。」


久我が見る。


Heroは前を見たまま言う。


「ここから始まる。」


「……何が。」


「真実を残すこと。」


静かな声だった。


「お前の罪も。」


「美咲のことも。」


「全部だ。」


久我はしばらく黙っていた。


やがて


小さく頷く。


「……ああ。」


窓の外。


赤い光が近づいてくる。


もう、逃げない


そう思った。


胸の中で。


初めて、美咲の声が少し近くなった気がした。


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