黒曜会からの誘い
翌日――
CKR事務所兼アトリエ
朝からアトリエには、
いつもの音が響いていた。
ミシンの駆動音に
ウィッグを整えるブラシの音や
工具が触れ合う小さな金属音
そして――Jokerの声
「これ、絶対俺に似合うって!」
「まだ着てもいないのに?」
Dollが呆れたように笑う。
「そこがJokerらしいわね…」
Mirageがウィッグを整えながら笑った。
Knightは作業台で工具を並べ、
Maskはノートパソコンを開いて
昨夜のデータを解析している。
その少し離れた場所では、
YONAGIが一人で衣装の袖を確認していた。
昨日までなら、
彼女は「協力者」という立場だった。
しかし今は違う。
黒曜会の人間としての顔も、
CKRの仲間としての顔も知った六人と一緒にいる。
YONAGIはふと、
アトリエを見回した。
壁に並んだ布や
色とりどりの糸に
完成した衣装
そして、
七人分のコスプレ衣装を見て呟く。
「……不思議ね」
Dollが顔を上げる。
「何が?」
YONAGIは少し笑った。
「私がここにいることよ?
昨日までは、あなたたちを外から見ていたのに…」
Jokerがソファから顔だけ出す。
「今は?」
YONAGIは少し考え――
「……メンバーとして中にいる感じがします。」
Dollが微笑む。
「じゃあ、もう仲間だね♪」
YONAGIは一瞬驚いたような顔をしてから、
小さく笑った。
「……はい!」
Heroがその様子を黙って見ていると
やがて、Maskが口を開く。
「解析結果が出ました。」
全員の視線が集まる。
「昨日の七つの部屋を管理していたシステムですが、黒曜会の内部ネットワークと
一部接続されていました。」
Knightが眉をひそめる。
「つまり黒曜会が関わっていたと?」
「可能性は高いです。」
YONAGIの表情が変わった。
「……それなら」
Heroが見る。
「何か知ってるのか?」
「いえ…」
YONAGIは首を横に振る。
「私が所属していた範囲では、
あんなシステムは見たことがありません。」
「ただ……」
一拍。
「黒曜会には、表向きの活動とは別に、
情報収集や潜入を専門にしている人たちがいます。」
Maskが画面を見つめる。
「迅もその一人?」
「そうです。」
YONAGIは答えた。
「迅は特に優秀でした。」
Heroが静かに尋ねる。
「だから次期幹部候補なのか?」
「……はい。」
その瞬間だった。
――コンコンと
アトリエの扉が叩かれた。
それを聞いた
全員が一斉に顔を上げる。
Knightが立ち上がる。
「またか?」
Maskが端末を確認する。
「外に二人います…」
YONAGIの表情が一瞬で変わった。
「もしかしたら……黒曜会です!」
Heroが見る。
「分かるのか?」
「ノックの仕方が黒曜会の合図です。」
YONAGIが立ち上がる。
「私が出ます!」
Heroが頷いた。
「頼む。」
YONAGIが扉を開けると
そこには、黒いスーツを着た男女が二人立っていた。
二人はYONAGIを見ると、
静かに頭を下げる。
「久しぶりだな、YONAGI」
「……久しぶりね?」
「黒曜会から伝言だ。」
男が封筒を差し出すと
YONAGIはそれを受け取ったが
すぐには開けなかった。
「迅の件も?」
男は少しだけ視線を逸らす。
「……ああ」
YONAGIの目が細くなる。
「彼は何を考えてるの?」
女の方が静かに答える。
「それは、我々にも分からないんだ…
ただ、迅は今回の件をかなり重要視している。」
YONAGIが黙っても
男は続ける。
「お前も戻ってこい…」
「黒曜会に?」
「ああ…」
「……今の私はCKRの人間でもあるのよ?」
その言葉に、
二人が少し驚く。
「そうか…………」
男はそれ以上追及しなかった。
「なら、三日後に自分で答えを出せ」
YONAGIは頷く。
「ええ、分かったわ…」
二人が去っていくと
扉を閉めて
YONAGIはしばらくその場に立っていた。
Jokerが口を開く。
「……同胞ってやつ?」
YONAGIは小さく頷いた。
「ええ…」
そして手の中の封筒を見る。
「私にとっては、昔から知っている人たちです。
でも――」
YONAGIはCKRの六人を見る。
「今は、
あなたたちと一緒にいることも捨てたくない。」
Dollが優しく笑う。
「だったら、両方ちゃんと自分で選べばいいよ♪」
YONAGIは少し目を伏せた。
「……ありがとう。」
Heroが静かに言う。
「三日後だ…
黒曜会が何を考えているのか、その時に確かめる。」
YONAGIは頷いた。
「はい。」
その後――
アトリエには再び、
ミシンの音が戻った。
Jokerは衣装を広げ、
「やっぱりこれ俺が着る!」
と騒ぎ、
Knightが、
「まだ任務も決まってないだろ?」
と呆れる。
MirageはYONAGIの衣装を確認し、
「ここの装飾、少し直した方がいいわね?」
Dollは七人分の衣装を並べる。
Maskは情報を整理し、
Heroは
テーブルに広げられた黒曜会の資料を眺めている。
YONAGIもその輪の中にいた。
七人の
それぞれ違う仮面を持つ者たち
表ではコスプレイヤー
裏では――それぞれ違う世界を知る者たちの
その二つの世界が交わろうとしていた。
Heroが静かに顔を上げる。
「三日後、黒曜会へ行く。」
6人全員が頷くと
YONAGIも、しっかりと頷いた。
「私も行きます。」
そして彼女は、
自分の衣装へ視線を落とした。
その表情には、もう迷いだけではなく
決意が宿っていた。
**三日後――**
CKR七人は、黒曜会と向き合う。
その先に待っているものが、
勧誘なのか…
取引なのか…
それとも――
もっと大きな罠なのか…
まだ誰も知らなかった。




