最後の仮面
夜
廃スタジオを出た七人は、
急いでCKR事務所へ戻っていた。
車内には重苦しい空気が漂っていて
誰も口を開かない。
やがて、
Dollが小さく呟いた。
「……NoFaceは、
ずっと私たちを見てたのかな?」
Jokerが窓の外を眺める。
「たぶんね…」
「俺たちがどんな依頼を受けたのか
誰を救ったのか
全部知ってたってわけだな…」
Knightが拳を握る。
「気味が悪いな…」
Mirageが続ける。
「でも、それだけじゃないわ…」
「え?」
「NoFaceは私たちをただ監視していたんじゃない。」
MirageはHeroを見る。
「理解しようとしてたんじゃない?」
Heroはしばらく黙っていた。
「……ああ。
だからこそ厄介だ。」
CKR事務所に着いて
扉を開けた瞬間――
全員が足を止めた。
荒らされた形跡はない。
ミシンも
衣装も
ウィッグも
何も壊されていない。
ただ一つ
壁に掛けられていた六つの仮面。
そのうち一つだけが――
床に落ちていた。
Maskが近づく。
「……誰かが触った。」
Heroが仮面を拾うと
裏側に、小さな文字が刻まれていた。
**『仮面を外せ』**
その瞬間
Maskの端末が鳴る。
「Hero」
「どうした?」
「解析が終わりました。」
画面には、
NoFaceが過去に使用した
複数の通信記録が表示されていた。
Maskはその中の一つを拡大する。
「この通信経路……
以前、CKRが使っていたものです。」
全員が驚く。
「俺たちの?」
「はい……
でも、外部には公開していません。」
Heroは画面を見つめる。
「つまり……
NoFaceは、昔から俺たちの情報を持っていた。」
Maskは頷く。
「さらに調べた結果――」
画面に、一人の人物の名前が表示された。
その名前を見た瞬間
Jokerが息を呑む。
「……こいつ」
Knightも目を見開く。
「まさか」
Heroは静かに名前を読み上げた。
「――神崎零士」
かつてCKRが過去に関わった事件であり
その時家族を失った少年
そして――
事件後に
行方不明になった人物
Maskが続ける。
「死亡記録はありません。」
「つまり、生きていたってこと?」
Dollが呟くと
Mirageが言う。
「NoFace……
本名は神崎零士だったのね?」
Heroは目を閉じた。
「……あの事件から始まっていたのか?」
その時
事務所のモニターが勝手に点灯した。
白い仮面…
NoFaceだ。
『正解だよ♪』
全員が画面を見る。
『やっと思い出してくれたね♪』
Heroが画面を睨む。
「レイを返せ!」
『もちろん♪
君たちが、私の最後の質問に答えてくれたらね?』
Heroは答える。
「質問?」
NoFaceが笑う。
『君たちは、人を救っているつもりだけど…
本当にそうなのかな?』
『罪人を裁き、
裏社会の人間を始末し、
時には法律の外で答えを出す。』
『君たちは私と何が違う?』
6人が沈黙する中
NoFaceは続ける。
『だから――
私は君たちの仲間になりたかったのさ…
君たちの仮面の一つになりたかった。』
Heroの表情が変わる。
「……断る!」
即答だった。
『……なぜ?』
「お前は、人を救っているんじゃない。」
Heroは静かに言う。
「人を自分の理想に閉じ込めているだけだ!」
NoFaceの笑みが消える。
「仮面は、自分で選ぶものだ。
誰かに被せるものじゃない。」
一瞬
画面が静止する。
そして――
NoFaceが低く笑った。
『……なら、最後の舞台へ来てよ』
画面に住所が表示された。
その場所は――
**星宮レイが最初に配信を行った、
あの廃スタジオ**
『そこで全部終わらせよう』
映像が消えると
Heroは立ち上がった。
「行くぞ!」
Jokerが仮面を手に取る。
「今度こそ、終わらせよう。」
Knightが頷く。
「レイを取り戻す。」
Dollも静かに立ち上がると
Mirageが最後に尋ねた。
「Hero」
「ん?」
「……これが、本当に最後よね?」
Heroは六つの仮面を見る。
そして――
静かに答えた。
「ああ…今回で終わらせる。」
六人は仮面を被り
湊もカメラバッグを肩に掛ける。
そして七人は、
最後の舞台へ向かった。
**NoFaceとの、最後の対峙へ**




