廃スタジオ
イベント会場を出た頃には、
すでに空は夕暮れに染まっていた。
七人は目立たないよう、
二台の車に分かれて移動する。
Heroの車には、
Hero、Doll、湊
もう一台には、
Joker、Mirage、Knight、Mask
目的地は、
NoFaceから送られてきた廃スタジオ
車内には重い沈黙が流れていた。
助手席の湊は、
何度もカメラの画面を確認している。
そこには、
先ほど届いたレイの写真が表示されたままだった。
「……本当に、ここにレイがいるんでしょうか?」
湊が呟くと
Heroは前を見たまま答える。
「分からない…
罠の可能性もある。」
「それでも……行くんですよね?」
「当然だ。」
Heroの返事に迷いはなかった。
Dollが後部座席から湊を見る。
「レイさんは、きっと待ってるよ!」
「……はい。」
湊は写真を握りしめた。
「絶対に見つけます。」
一時間後
車は山間部に入った。
街灯はほとんどない。
やがて木々の間から、
古びた建物が姿を現した。
「……あれか?」
Heroが車を止める。
建物の入口には、
かつて撮影スタジオだったことを示す看板が
残っている。
文字はほとんど剥がれ落ちていた。
「古いですね……」
Dollが窓の外を見ると
Maskから通信が入る。
『周辺を確認しました。
電気は通っています。』
Knightが聞く。
「廃墟なのに?」
『はい。』
一拍
『誰かが最近まで使っていた形跡があります。』
Heroはエンジンを切った。
「全員、準備しろ!」
七人が車を降りる。
Heroを先頭に、
建物へ向かう。
扉は――
鍵が掛かっていなかった。
ギィィ……
重い音を立てて開く。
中は薄暗い
古い撮影機材や
壊れた照明に
壁に貼られたポスター
そして――
大量の写真を見て
湊が足を止めた。
「……レイ」
壁一面に、
星宮レイの写真が貼られていた。
イベントや撮影現場
自宅近くと思われる場所も
そして、
湊と一緒にいる写真まである。
「ずっと……監視してたのか?」
Jokerが低く呟くと
Mirageが写真を見つめる。
「これ、
レイがSNSに載せてない写真まであるわよ!?」
Knightが周囲を警戒する。
「つまり、直接撮影していた奴がいる。」
その時
「……待ってください。」
湊が一枚の写真を手に取った。
そこには、
レイが笑顔で衣装を作っている姿が写っていた。
しかし写真の裏側に、
文字が書かれている。
湊が読み上げる。
「『彼女は、いつも誰かのために笑う。』」
「……何だ、これ?」
Jokerが眉をひそめる中
湊は次の写真をめくる。
「『だから、本当の彼女を知る必要がある。』」
三枚目
『『湊』という仮面を被った男。』
湊の顔が強張った。
「……俺?」
Heroが写真を受け取ると
裏には続きがあった。
『彼は彼女を理解しているつもりだ。』
『だが、本当に理解しているのか?』
「……ふざけるな!」
湊が拳を握る。
その時
奥の部屋から――
カタン
小さな音がして
全員が一斉に振り向く。
Heroが手を上げる。
「静かに。」
六人が身構える。
HeroとKnightが前へ
MirageとDollが湊を挟み
JokerとMaskが後方を確認する。
ゆっくりと奥へ進む。
そして――
一つの扉に辿り着いた。
扉には、
**STUDIO B**
と書かれている。
Heroがノブへ手を掛ける。
「開ける。」
カチャ
扉が開いた。
部屋の中央に
一台の椅子が置かれている。
そこには――
誰もいない。
「……レイ?」
湊が駆け込むが、いない。
代わりに机の上に、
一台のモニターが置かれていた。
画面が突然点灯する。
『こんばんは。』
白い仮面…NoFaceだ。
Jokerが舌打ちする。
「またお前か!」
NoFaceは笑った。
『ようこそ、CKR』
Heroが画面を睨む。
「レイはどこだ?」
『焦らないで。』
「質問に答えろ。」
『彼女はここにいた。』
湊が叫ぶ。
「いた?」
『そう。』
『でも、もう移動した。』
湊の顔が青ざめる。
「どこへ!?」
NoFaceは答えない。
代わりに、
画面に一枚の写真が映る。
そこには――
CKRの事務所
そして六つの仮面
NoFaceが静かに言った。
『君たちは、まだ気付いていない。』
Heroの目が細くなる。
「何にだ?」
『この事件の目的は、
レイを消すことじゃない。』
『君たちをここへ誘い出すことでもない。』
『もっと大きなものだ。』
画面が切り替わると
そこには複数の人物の写真が並んでいた。
配信者
コスプレイヤー
動画投稿者
そして――
裏社会の人間と思われる人物たち
Maskが画面を見て息を呑む。
「……これ
知ってるのか?」
Heroが聞くと
Maskは答えた。
「はい。
この人物たち……」
一枚ずつ拡大する。
「全員、
過去にCKRが関わった事件と繋がっています。」
沈黙
Jokerが顔を上げる。
「まさか……」
NoFaceが笑う。
『そう。』
『君たちは今まで、
自分たちが事件を解決していると思っていた。』
『でも――』
白い仮面が画面いっぱいに映る。
『本当にそうかな?』
映像が切れたと
同時に――
建物全体の照明が落ちる。
「!」
湊が息を呑む。
Dollが叫ぶ。
「みんな、気を付けて!」
暗闇の中で――
カツン
誰かの足音が響いた。
一歩
また一歩と
Heroが前へ出る。
「誰だ?」
返事はない。
代わりに、
暗闇の奥で白い仮面が浮かび上がった。
「……NoFace?」
Jokerが身構える。
しかし――
仮面の人物は、
ゆっくり仮面を外した。
そこに現れた顔を見て、
湊が絶句する。
「……嘘だろ!?」
Heroも目を見開いた。
その人物は――
**CKRが過去に関わった事件で、
すでに死亡したはずの人物だった。**
「……どうして、生きてる?」
男は静かに笑った。
「久しぶりだな?CKR」
そして
「ここからが、本当の事件だ!」
暗闇の中で、
新たな敵が姿を現した。




