仮面達の着替え
大型スクリーンに映し出された星宮レイの姿と
その背後に立つ白い仮面――NoFace
映像が途切れた瞬間、
会場中がどよめきに包まれた。
「え……何?」
「今の演出?」
「シナリオじゃないの?」
「星宮レイって、本当に失踪した人だよね?」
参加者たちは困惑しながら、
周囲を見回している。
そして――
スクリーンに映し出された**CKR**の文字
それを見た瞬間、
会場にいた何人もの参加者が
Heroたちへ視線を向けた。
「あの六人じゃない?」
「さっきスクリーンに出てた人たち!」
「CKRってあの人たち?」
「何者なの?」
スマートフォンが向けられ
カメラのシャッターが鳴る。
動画撮影を始める者まで現れた。
Jokerが周囲を見渡す。
「……え、何?」
「シナリオ?」
Dollも困惑した表情を浮かべる。
「イベントの演出だと思ってる人もいるみたい……」
Knightは周囲を警戒する。
「だが、このままじゃ動きにくい。」
Mirageが小さく息を吐く。
「NoFaceの狙いね…
私たちを会場中の視線に晒した。」
Maskがタブレットを確認する。
「SNSでも、
すでに映像が拡散されています。」
「『CKRとは何者なのか』
『星宮レイ失踪事件との関係は?』
かなりの速度で広がっています。」
湊が青ざめた顔でスクリーンを見る。
「……俺たちが目立ったら、
レイを探せない。」
Heroはしばらく黙っていた。
そして――
「作戦変更だ。」
五人がHeroを見る。
「皆…予備の衣装に着替えるぞ…」
Jokerが「ああ」と頷いた。
「それなら自然だね。」
Dollも笑う。
「ここ、コスプレイベントだもんね♪」
Mirageが続ける。
「着替えている人なんて珍しくないし♪」
Heroは湊を見る。
「湊もだ。」
「俺もですか?」
「ああ。」
Heroはカメラへ視線を向ける。
「お前はカメラマンとして動け。」
「レイを探していると悟られないように、
普通に撮影するんだ。」
湊はすぐに頷いた。
「分かりました。」
七人は会場内の更衣スペースへ移動した。
確実持ち込んでいた予備衣装を取り出す。
Heroは青と黒を基調とした騎士風衣装
Maskは眼鏡を掛け、髪型を変える。
Jokerは明るい色の衣装へ
Dollは可愛らしい人形を思わせる衣装
Mirageは白銀の髪をした幻想的なキャラクター
Knightは重厚な鎧を身につけた戦士
そして――
湊も服装を変えた
黒いジャケットにカメラバッグ
首から一眼レフカメラを下げる。
先ほどとは印象が大きく変わり、
完全にイベント参加者兼カメラマンに見える。
Jokerが湊を見て笑った。
「うん。これなら完全にカメラマンだ。」
湊は苦笑する。
「元々カメラマンなんですけど……」
「そうだったねwww」
Jokerが笑う。
Heroは全員を見渡した。
「ここからは、
さっきの衣装を着ていた人間とは別人として動く。」
「コードネーム呼びも徹底しろ!」
Maskが頷く。
「了」
Heroは湊へ向き直った。
「それと――
レイを見つけても、絶対に一人で近づくな。」
湊の表情が固まる。
「……分かりました。」
「必ず俺たちに知らせろ…
いいな?」
「はい!」
再び会場へ向かうために
七人は更衣スペースから出る。
先ほどまで向けられていた視線は、
ほとんどない。
参加者たちは別のレイヤーだと思っている。
Jokerが小声で笑った。
「成功だね!」
Maskが周囲を確認する。
「先ほどの映像を撮影していた人たちも、
こちらには気付いていません。」
Heroは頷く。
「よし…ここからが本番だ。」
七人は、
それぞれ別方向へ散ったが
通信だけは繋がっている。
『Hero、こちらMask』
「どうした?」
『会場内の監視カメラを確認していて
不審な動きをしている人物が
数名いるのが分かりました。』
Heroは歩きながら答える。
「写真は?」
『送ります。』
数秒後
Heroの端末に三人の写真が届いた。
その時――
「Heroさん。」
湊の声が通信から入った。
「どうした?」
「今、撮影していたんですが……」
「何か見つけたか?」
「はい。」
湊はカメラを構えたまま、
人混みの奥を見つめる。
「……あそこにいる男性」
Heroが視線を向ける。
人混みの中に
一人の男が立っている。
イベント参加者らしい服装
しかし――
胸元に小さなアクセサリーが付いていた。
**白い仮面を模したピンバッジ**
湊が低い声で呟く。
「……あれは、
NoFaceのマークと同じです。」
Heroの目が細くなる。
「全員、聞こえたな?」
『聞こえた。』
Jokerの声。
『見つけたってこと?』
『なら、追うか?』
Knightが尋ねる。
Heroは男から目を離さない。
「いや…まだ追わない。」
「俺たちは、何も知らない参加者だ。」
「相手に気付かせるな。」
その時――
男がゆっくり振り返った。
そして
人混みの向こうからHeroを見た。
一瞬
視線が重なる。
男は笑った。
まるで――
最初からCKRが
ここへ来ることを知っていたかのように
湊が息を呑む。
「……Heroさん」
Heroは静かに答えた。
「ああ…
向こうも、俺たちを見つけた。」
そして男は、
人混みの中へゆっくりと姿を消した。
Heroはその背中を追う。
「行くぞ!」
六人と湊は、
何食わぬ顔で歩き出した。
今度は――
CKRが狩る側だった。




