仮面達の準備
翌日
午前八時
CKR事務所のアトリエには、
普段とは違う緊張感が漂っていた。
壁一面に並ぶ衣装と
ウィッグに小道具
そして、
テーブルの上には「コスモライブフェス」の会場図が広げられている。
中央には大きく赤い印が付けられていた。
**ステージNo.7**
Heroが会場図を見つめる。
「イベントは三日後!
来場者は約二万人」
Knightが資料をめくった。
「出展ブースが四百以上でステージも複数ある。」
「人が多すぎない?」
Jokerが椅子を回しながら言う。
「逆に言えば、
俺たちも紛れやすいってことだよね?」
「そういうことよ♪」
Mirageが衣装ケースを開けると
中には何着もの衣装が綺麗に並べられていた。
「今回は全員、
別々のキャラクターで入るの?」
Heroが頷く。
「いや」
五人がHeroを見る。
「全員、同じ作品のチームとして参加する。」
「同じ作品?」
Dollが首を傾けると
Heroは一枚の資料を指差した。
「コスモライブフェスの企画ステージ」
そこにはイベント内で
開催される特別企画が記載されていた。
『仮面の宴――コスプレイヤー・ライブステージ』
Jokerが目を丸くする。
「うわ……
名前からして怪しい。」
Knightが苦笑する。
「偶然とは思えないな。」
Maskが端末を操作する。
「この企画、今回初開催です。
そして主催企業を調べたところ……」
画面に会社名が表示される。
「関連会社の一つに、
過去の失踪者が参加していた
イベント運営会社があります。」
Heroの目が細くなる。
「繋がったな」
Mirageが腕を組む。
「NoFaceはイベントそのものに関係しているの?」
「可能性は高いな」
Maskは続ける。
「ただし、
主催企業の中にNoFace本人と
断定できる人物はいません。」
「つまり……」
Dollが呟く。
「誰かが裏から動かしてるってこと?」
「そう考えた方がいい。」
Heroは会場図を見つめた。
そして、視線をNo.7ステージへ向ける。
「NoFaceは、俺たちをここへ呼んだんだ。
なら、俺たちもそれを利用する。」
Jokerがニヤリと笑った。
「潜入捜査ってこと?」
「そうだ。」
Heroは六人を見渡した。
「表向きはコスプレユニットとして参加して
裏では、NoFaceを探す。」
Knightが頷く。
「イベントスタッフとして入る人間も必要だよな?
俺がやる。」
「Maskは通信と監視を」
「了解」
「MirageとDollは
女性レイヤーとして会場の参加者から情報を集める。」
「任せて」
Dollが笑う。
「Jokerは?」
Heroが答えるより先に、Jokerが手を挙げた。
「俺は目立つ役でしょ?」
「その通りだ」
「やった♪」
Mirageが呆れたように笑う。
「こういう時だけ嬉しそうね?Joker」
「だって潜入なのに目立っていいんだよ?」
「意味分からないわ…」
そしてHero
彼は静かに一枚の衣装を取り出した。
黒と青を基調にした衣装
胸元には、
CKRのシンボルを思わせる六芒星が入っている。
Jokerが覗き込む。
「それ、Hero用?」
「ああ。」
「似合いそうね」
Dollが笑う。
Heroは衣装を見つめた。
「NoFaceは、俺たちを仮面の集団だと言った。」
「なら――」
その衣装をケースへ戻す。
「俺たちの仮面が、どれだけ強いのか見せてやる。」
その頃
どこかの暗い部屋で
無数のモニターが壁一面に並んでいた。
その画面には、
コスモライブフェスの会場図
そして――
CKR六人の写真
Hero
Mask
Joker
Doll
Mirage
Knight
その隣には、
朝比奈湊の写真も表示されている。
さらに
星宮レイ
白石優菜
過去の失踪者たち
全員の顔が並んでいた。
画面の前に、
一人の人物が立っている。
白い仮面を被った
NoFaceだった。
「必ず……来る。」
小さく呟く。
「絶対に。」
机の上には六つの仮面が並べられていた。
そして、
その中央には一枚の紙
そこには、
『CKR――六人の仮面を剥がす』
と書かれていた。
NoFaceは紙を手に取る。
「君たちは、自分たちが狩る側だと思っている。」
「でも――」
白い仮面に手を添える。
「今回の狩場を選んだのは、私だ。」
モニターの一つに、
星宮レイの姿が映る。
レイは静かに俯いていた。
NoFaceはその映像を見つめながら、
楽しそうに笑った。
「さあ……三日後だ。」
「最高の舞台にしよう。」
そして三日後
コスモライブフェス当日
東京
巨大な会場の周囲には、
朝早くから大勢のコスプレイヤーや配信者が
集まっていた。
カメラのシャッター音や
スタッフの呼び声に
参加者たちの笑い声
それに色とりどりの衣装
まさに――
「誰もが仮面を被る場所」だった。
会場の入口に
六人の男女が並んで立っている。
それぞれ違う衣装だが、
胸元には共通した六芒星のマーク
Jokerが周囲を見渡す。
「すごい人数…」
Mirageが頷く。
「これなら、誰がいても分からないわね。」
Dollが小さく息を吐く。
「でも……この中にNoFaceがいる。」
Maskがイヤホンを調整する。
『通信、全員繋がっています。』
Knightが小さく頷く。
Heroは会場の奥を見つめる。
「行くぞ!」
六人が歩き出す。
その瞬間
Heroのスマートフォンが震えた。
画面には、一件のメッセージ
差出人――
**NoFace**
本文は一行だけだった。
**『ようこそ、CKR。』**
Heroの目が鋭くなる。
その直後
会場の大型スクリーンが一斉に切り替わった。
予定されていたイベント映像が消えて
画面いっぱいに映し出されたのは――
**白い仮面**
そして会場中に、
加工された声が響いた。
『皆さん
本日の特別ステージを開始します。』
六人が立ち止まる。
『テーマは――仮面の向こう側』
会場からどよめきが起こる。
Heroは静かに拳を握った。
「……始まったな。」
NoFaceの声が響く。
『それでは――
最初のゲストを紹介しましょう。』
大型スクリーンが切り替わる。
そこに映ったのは――
「……レイ!」
朝比奈湊の叫び声が響いた。
星宮レイが、
画面の中でゆっくり顔を上げる。
そして
その背後から――
白い仮面が現れた。
『ようこそCKR
ここからが、本当のゲームだ。』




