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COSKILLER (コスキラー)―CKR(シクル)―  作者: 黒薔薇
死刑囚の元コスプレイヤー 久我 誠司(くが せいじ)
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3/6

仮面の審理

車の中は静かで

雨に濡れたコートの重さだけが、

現実として残っている。


久我誠司は窓の外を見ていた。


流れる街の光は、

どれも遠く見えた。


「……それで?」


久我がぽつりと呟く。


「俺をどこに連れて行く気だ?」


前に座るHeroは振り返らない。


「安全な場所だ」


「曖昧だな?」


「正確には“まだ誰にも知られていない場所”だ…」


後部座席でJokerが笑う。


「要するに隠れ家。秘密基地ってやつさ…」


「子供かよ…」


久我が吐き捨てるが、

その言葉に反応する者はいない。


車は都市を抜けていく。


高架下に工場跡地

やがて、

看板のない建物の前で止まった。

 

扉が開くと、

そこは意外な空間だった。


コンクリートむき出しの無機質な部屋で


しかし壁には――


衣装やウィッグ、メイク道具に

そして大量のモニターがある。


それを見て

久我は目を細める。


「……なんだここ?」


Dollが軽く手を振る。


「CKRの拠点だよ〜」


「表向きは“衣装制作スタジオ兼清掃事務所”」


Maskが淡々と補足する。


「誰が見てもコスプレ施設に見えるだろ?

誰も疑わない構造にしてあるのさ…」


久我は呆れたように息を吐く。


「趣味が悪いな…」


Heroが振り返る。


「本題に入るぞ?」


空気が変わり

モニターが一斉に点灯した。


そこに映ったのは――

あの三人の顔だ。


久我が殺したとされる“被害者”


だが次の瞬間

映像が切り替わる。


別の映像と資料と音声


久我の眉が動く。


「……それは?」


Maskが言う。


「彼らの“表に出ていない記録”だよ」


## ■一人目の男


医療系企業の役員で

表向きは新薬開発の功労者


だが画面には――


* 未承認薬の人体実験

* 患者データの改ざん

* 死亡例の隠蔽


久我の表情が固まる。


---


## ■二人目の男


病院の理事で

映像には内部告発音声


「患者は実験対象として処理されるから

記録は“自然死”に変更」


---


## ■三人目の女


行政と繋がる医療ブローカーで

資金の流れや隠蔽ルートに

それに加えて証拠隠滅の指示書作成


久我は何も言わずにただ画面を見ている。


やがて、小さく笑う。


「……なるほどな…」


Heroが静かに言う。


「これが俺たちの“調査結果”だ」


久我は目を細める。


「つまり?」


Dollが答える。


「世間は“3人の善人が殺された事件”として見てる」


「でも実際は」


Jokerが軽く手を広げる。


「“隠蔽されてた加害者が処理された事件”

だったってことさ…」


久我の視線が揺れるが

それを見てHeroが話を続ける。


「問題は、世間がそれを知らないことだ…

だからお前は

“ただの殺人犯”として処理されたってことだ」


沈黙。


雨音がまだどこかで聞こえる気がした。


久我が低く言う。


「それを……どうするつもりだ?」


Heroは答えた。


「覆すのさ」


「どうやって?」


その問いに、Maskが淡々と返す。


「証拠は揃っているが…

ただし、公的には通らない」


久我は眉をひそめる。


「それじゃあ…意味ないだろ?」


その瞬間、Heroが初めて振り返った。


「ある世論を動かして

裁判を“再構築”する」


久我は鼻で笑う。


「そんなの無理だ!」


Jokerが笑う。


「普通ならね?」


Dollが小さく続ける。


「でも私たち、

“普通じゃない方法”専門だからね?」


Heroが久我に一歩近づく。


「目的はひとつだ!

お前の死刑判決を“終身刑に変える”こと」


久我は一瞬黙る。


「終身刑……?」


「そうすれば」


Heroは静かに言う。


「まだ“真実を暴く余地”が残るだろ?

死んだら終わりだ…」


「生かすことに意味があるんだ……」


久我はゆっくり天井を見上げる。


「……変な組織だな…」


Heroは即答する。


「よく言われる」


久我は少し笑う。


「いいぜ!」


その一言に、

空気がわずかに変わり

Heroが確認する。


「条件は?」


久我は目を細める。


「俺の話を使うなら

最後まで“真実”から逃げるなよ!」


Heroは頷いた。


「当然だ」



その瞬間

モニターの一つに、

新しい映像が流れ

Jokerが呟く。


「……あ、始まった」


久我が振り向くと


そこには――

すでにネット上に拡散され始めた

“断片的な情報”が出てきた。


医療データの漏洩や

内部告発音声に

SNSの匿名投稿


世論が、

動き始めていた。


Heroが静かに言う。


「これは…第一段階だ

もう“物語”は書き換わり始めている」


久我はその画面を見つめ

そして、小さく言う。


「……俺は本当に殺人犯なのか?」


その問いに、

誰もすぐには答えなかった。


ただ――

仮面の六人だけが、

静かに立っていた。


モニターの光が、

薄暗い拠点を青白く照らしていた。


久我誠司は椅子にもたれながら、

その光景を見ている。


六人の仮面は、

全員そこにいた。


だが“黙っている者”はいなかった。


Heroが最初に口を開く。


「これが、今回の事件の三人だ」


画面を指す。


「表では被害者だが…裏では加害者だ」


すぐにMaskが続ける。


「医療データは全部解析済みだ」


淡々とした声


「改ざんのログも、削除履歴も復元できるよ♪」


Dollが椅子の背にもたれながら言う。


「でもそれさ、

普通の人は見ても信じないやつだよね?」


軽い声だが、

目は笑っていない。


Jokerが手をひらひらさせる。


「だから面白いんじゃん♪」


「“真実”ってさ、

だいたい信じてもらえない方が本物っぽいし?」


Knightが短く遮る。


「感情論は後だ!

問題はどう通すかだろ?」


久我はそのやり取りを見ながら、

低く言う。


「……お前ら、本当にバラバラだな?」


Heroが答える。


「違うぞ?

それぞれ役割が違うだけだ」


そこに、

紫の仮面のDollが軽く手を挙げる。


「じゃあさ、

その“役割説明”ちゃんとしてよ?」


「新入りもいるし」


そう言いながらDollが

久我を指さして言うと

Heroが少しだけ間を置く。


「必要なら説明する」


Maskがすぐに補足する。


「Heroは統括と判断」


「私は情報解析と改竄検出」


Jokerが横から割り込む。


「僕は現場の空気ぶっ壊し係〜」


Dollが笑う。


「私は潜入と“演技”で

主に嘘つくのが仕事」


Knightが淡々と言う。


「排除と防衛」


そして最後に、

赤い髪の女――Mirageが静かに言う。


「私は“見えないものを見せる”

世間の世論操作と情報誘導がメイン」


久我はその全員を見回した。


「……戦隊ものかよ?」


Jokerが笑う。


「それ言われるの三回目くらいだね〜」


Heroがモニターを指す。


「本題に戻すぞ!」


Dollが軽く身を乗り出す。


「ねえ、その3人さ…

“ただの悪人”じゃないよね?」


Maskが即答する。


「記録上は“善人”だった…

だから隠蔽できた」


Mirageが静かに続ける。


「世間は“見たい現実しか見ない”

それを逆に利用する」


Jokerがニヤッとする。


「つまりさ…」

悪人を“悪人に見えるように”する戦いじゃなくて

“真実を見せる戦い”にするってこと」


Knightが短く言う。


「結果は同じだがな…」


久我はその言葉を聞きながら、

目を細める。


「……俺の罪は?」


一瞬、静かになる。


Heroが答える。


「事実としては残るが…」


Maskが続ける。


「ただし意味が変わる」


Dollが少しだけ優しく言う。


「“殺人”じゃなくて、

“暴露された連鎖の最後”になる」


Jokerが肩をすくめる。


「要はさ…

ストーリーの編集だよね?」


Mirageが静かに言う。


「世論は“物語”で動くから…

私たちはそれを書き換える」


久我はしばらく黙っていた。


雨の音がまだ耳に残っている気がする。


そして低く言う。


「……狂ってるな…」


Jokerが即答する。


「よく言われる〜」


Heroが一歩前に出る。


「お前の死刑判決は

“物語の終点”として扱われている…

だからそれを俺達で変える」


Maskが補足する。


「まず世論を割って次に証拠を流す」


Mirageが続ける。


「最後に“再審の空気”を作る」


Dollが笑う。


「その間、

私たちは“ただのコスプレ集団”として動くけどね?」


久我は眉をひそめる。


「それで通るのか?」


Heroが答える。


「通す」


Knightが短く言う。


「通らせる」


Jokerが軽く手を叩く。


「言い方こわ」



沈黙。


そしてHeroが最後に言う。


「お前はもう“殺人犯”として扱われている…

だがそれは“完成した事実”じゃない…」


久我はゆっくり息を吐いた。


「……変な連中だな」


Dollが笑う。


「それ、加入条件みたいなもんだよ?」


その瞬間、

モニターに通知が走ると

Mirageが目を細める。


「拡散、開始!」


Maskが確認する。


「第一波、成功」


Jokerが笑う。


「ほら来た!」


Heroが静かに言う。


「始まったな♪」



久我は画面を見ると


そこには――

三人の“裏の顔”が、

断片的にネットへ流れ始めていた。


そして久我は、

初めて気づく。


この六人は「話している」だけじゃなくて

それぞれが同時に“戦っている”。


そのときHeroが言った。


「これがCKRのやり方だ」


久我は小さく笑う。


「……面倒くさい組織に捕まったな俺」


Jokerが即答する。


「ようこそ〜」


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