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画面の向こう側

雨宮レイの動画の通知により

事務所の空気が、一瞬で張り詰めた。


誰も言葉を発さない


モニターに表示された通知だけが、

不気味な存在感を放っている。


『星宮レイ 新しい動画を公開しました』


「……そんなはず、ない!」


湊の声は震えていた。


「レイのスマホは警察が追跡中のはずです……」


Heroは静かに立ち上がる。


「Mask」


「はい!」


「動画を保存しながら再生しろ!

削除されても解析できるようにしてくれ!」


「了解」


Maskはすぐに動画をダウンロードし、

ネットワークを分離した解析用PCで再生を開始する。


画面が暗転したまま数秒後

やがて映像が映し出された。


そこは白一色の部屋で

壁も床も天井も真っ白だった。


中央には、一脚の椅子があり

そこに一人の女性が座らされている。


「……レイ!」


湊が思わず立ち上がる。


レイは両手を後ろで拘束されていたが、

目立った外傷はない。


しかし、

その表情には強い疲労が浮かんでいた。


レイはゆっくりと顔を上げると

カメラへ向かって口を開く。


「……湊

ごめんね?

心配、かけちゃった…」


「レイ!」


湊は画面へ駆け寄るが

その声は当然届かない。


次の瞬間


画面の外から、

一人の人物がゆっくりと歩いてきた。


白い仮面に

黒いロングコートを羽織っており

身長も体格も分からない。


ただ、

その存在だけが異様だった。


「NoFace……」


Jokerが小さく呟く。


仮面の人物はレイの後ろへ立つと、

肩へ静かに手を置く。


そして、

加工された声が流れた。


『歓迎するよ…CKR』


それを聞いて

六人の表情が変わる。


Knightが低く言う。


「俺たちを知ってるってことか……?」


『君たちが裏で何をしているか知ってるよ?』


Mirageの瞳が鋭くなる。


「調べられてるってこと?……」


『でも安心してくれ!

今日は戦うつもりはない。』


『君たちに招待状を届けるために配信してるんだ…』


Heroは画面を見据えたまま尋ねる。


「目的は何だ?」


NoFaceはゆっくりと首を傾けた。


仮面越しでも分かるほど、

その仕草には余裕があった。


『君たちならもう気付いているだろう?』


静寂の中

NoFaceは小さく笑ったように肩を震わせる。


『私はね……

人間が仮面を脱ぐ瞬間を見るのが好きなんだ♪』


『人気者も

配信者も

コスプレイヤーも

誰もが誰かを演じて生きている。』


『でも、本当に美しいのは――』


一拍置き、


『その仮面が剥がれ落ちた瞬間なんだよ!!』


事務所の空気が張り詰める。


Jokerが顔をしかめた。


「何言ってんだ?……」


Mirageも静かに呟く。


「歪んでるわね……」


NoFaceは二人の反応を楽しむように続けた。


『泣く者に怒る者

絶望する者や諦める者』


『その瞬間だけは、

誰も演技なんてできないだろ?』


『だから私は、その一瞬を集めているのさ!』


Dollはレイの姿を見つめながら、

小さく拳を握る。


「あの子まで……そのために?」


『星宮レイは、その中でも

とても美しい作品になりそうだからね♡』


「作品じゃない!」


湊が思わず叫んだ。


「レイは人間だ!」


NoFaceは静かに湊へ視線を向ける。


『元々美しい人間だからこそ価値がある。』


『動かない人形では意味がないんだ…』


『人間は心があるから壊れるのが面白い♪

壊れるから美しくなるんだ!』


Knightが拳を強く握り締める。


「……ふざけるな!」


低く押し殺した声だった。


「人の人生を、お前の趣味で壊すな!」


NoFaceはまるで聞こえていないかのように続ける。


『君たちCKRも同じじゃないか?』


『仮面を被り、別人を演じているだろう?


『私は少し方法が違うだけだよ♪』


Heroは一歩も引かず、

静かに言い返した。


「違う!」


その一言で空気が変わる。


「俺たちは誰かを守るために

仮面を被っているんだ!」


「お前は、

誰かを壊すために仮面を被っているだろ?!」


NoFaceは数秒間黙り込んだ後

くすりと笑う。


『君たちは私と違う…だからとても面白い』


『ぜひ、この先も見届けたいのさ…』


すると、

NoFaceはポケットから一枚の封筒を取り出した。


黒い封筒には、

白い仮面の紋章が描かれている。


『招待状の中身は、もうすぐ届くだろう』


『君たちは必ず来てもらうよ?』


『来なければ、星宮レイだけじゃない』


『次の配信者も

その次のコスプレイヤーも

誰も救えなくなる。』


事務所に重い沈黙が流れた。


HeroはNoFaceを見据えたまま、

静かに問い掛ける。


「場所はどこだ?」


NoFaceはゆっくりと指を一本立てた。


『開催場所のヒントをあげよう』


『そこは、

一日に何万人もの人が"誰か"を演じる場所で

カメラが何百台も並んで拍手と歓声が絶えず響く所』


『そして、誰も本当の顔を知らない。』


Mirageが息を呑む。


「まさか……」


Maskも同時に検索を始める。


「該当するイベントは複数ありますが、

一週間以内に開催される大規模イベントは

一つだけです。」


Heroは画面を見つめたまま、

小さく頷いた。


「やはり、そこか?……」


NoFaceは最後にゆっくりと手を振る。


『では、会場で会おうCKR』


その瞬間、

映像は激しいノイズに包まれ、

画面は完全に暗転した。


動画は終了したが、

事務所の誰一人として、

その場を動こうとはしなかった。 


次に始まる戦いが、

これまでとは比べものにならない

危険なものになることを、

六人全員が感じ取っていた。







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