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幼馴染の依頼人

CKR事務所の応接スペースへ案内された朝比奈湊は、緊張した面持ちでソファに腰を下ろした。


テーブルには、

Dollが淹れた温かいコーヒーが置かれる。


「……ありがとうございます。」


湊は両手でカップを包み込むように持ったが、

一口も口をつけようとはしなかった。


Heroは向かい側へ腰を下ろす。


「落ち着いて話してくれ…

俺たちは依頼人の話を最後まで聞く。」


湊は静かに頷くと、

カメラバッグから数枚の写真を取り出した。


イベント会場で撮影した写真に

春の桜並木での一枚や

夕焼けの海辺で撮られた幻想的な写真


そこには、

様々なコスプレ姿で笑う星宮レイが写っていた。


Mirageは写真を手に取り、

思わず笑みを浮かべる。


「……いい写真だわ♪

自然な笑顔で、とても素敵。」


湊は少しだけ表情を和らげた。


「レイは作品を作ることが好きだったんです。

衣装も、小道具も、

撮影場所も全部こだわっていて……

俺は、その作品を写真として残すサポート役でした。」


Dollは写真を見つめながら頷く。


「この衣装……全部手縫いなの?」


「はい。いつも徹夜ばかりしてました。」


Dollは苦笑した。


「その気持ち、すごく分かるよ♪」


事務所の奥にあるアトリエでは、

何台ものミシンが並び、

色とりどりの布や複数のトルソー、

制作途中の衣装が所狭しと置かれている。


壁には完成したウィッグや武器、

小道具が整然と並び、

小さな工房のような空間が広がっていた。


その景色を見回した湊は、

懐かしそうに目を細める。


「……レイなら、この場所を気に入ったと思います。

こういう空間が、大好きだったので…」


Jokerが気になっていたことを口にする。


「二人って恋人?」


湊は照れくさそうに笑った。


「違いますよ!

趣味を一緒に楽しめる幼なじみです。」


「高校の頃から一緒に作品を作ってきました。」


「俺が写真を撮って、レイが衣装や小道具を作る。

そして二人で作品を完成させる。

それだけの関係です。」


少し間を置き、

小さく続けた。


「……でも、それだけで十分でした。」


部屋が静まり返る中

Knightが話題を戻した。


「最後に会ったのは?」


「三日前です。

廃スタジオで撮影して、

そのまま夜に配信するって言ってました。」


Maskがメモを取りながら尋ねる。


「配信場所は誰かに知らせていましたか?」


「いいえ…

場所は秘密で、俺にも教えてくれませんでした。」


「配信が始まるまで、

どこにいるのか分からなかったんです。」


Heroは腕を組む。


「犯人は事前に場所を知っていた?……」


「それにしても…偶然とは考えにくいな。」


Maskは大型モニターへ配信映像を映し出した。


レイが笑顔で

衣装制作を進める様子と

その蕎麦で

機材を運ぶ湊の姿が映り

そして映像が止まる。


「ここをご覧ください。」


画面の隅の鏡の奥に、

白い仮面をつけた人物が一瞬だけ映っていた。


Mirageが目を見開く。


「最初から……いたの?」


Maskは映像を巻き戻す。


メイキング映像


ロケ地へ向かうレイと

機材を運ぶ湊。


その背後の林や

街角のガラスに

車の窓


どの場面にも、

数フレームだけ白い仮面が映り込んでいた。


Knightは息を呑む。


「ずっと監視されてたってことか?……」


Maskは音声解析も始める。


雑音を除去し、

ノイズを強調すると、

小さな声が浮かび上がった。


『――本当の自分を、演じたことがある?』


事務所の空気が一瞬で冷え込む中

Jokerが顔をしかめた。


「誰だよ……こいつ?」


「音声は加工されていて

性別も年齢も判別できません。」


その時だった。


Maskの指が止まる。


「……少し、おかしいですね?」


Heroが振り向く。


「どうした?」


「この事件だけではありません。」


Maskは検索画面を開き、

ここ数年の行方不明事件や未解決事件を表示した。


検索条件は、


・ライブ配信中

・動画投稿者

・失踪

・コスプレ

・配信者


「……ありました。」


画面に複数の事件が並ぶ。


登録者百五十万人のゲーム実況者

深夜配信中、突然悲鳴を上げて失踪


登録者三万人のメイク配信者

コラボ配信の翌日から更新が止まり、

現在も行方不明


登録者五千人の新人Vlog配信者

廃墟配信中に映像が途切れ、そのまま消息を絶つ


登録者十二万人のコスプレ配信者

イベント後の自宅配信中に失踪


登録者八百人の高校生配信者

雑談配信を最後に姿を消していた。


Dollが息を呑む。


「こんなに……」


Mirageも画面を見つめたまま呟く。


「人気配信者だけじゃないってこと?

登録者が少ない人まで狙われてる……」


Maskはさらに解析を続ける。


「共通点があります。」


全員がモニターへ視線を向けた。


「全員がライブ配信中、

あるいは動画投稿直前に失踪していて

遺体は一人も発見されていません。」


「さらに、配信の最後には必ず異変が起きています。」


Maskは各動画を順番に再生した。


ゲーム実況者は

画面の奥を見つめた直後に悲鳴を上げ、配信が終了


メイク配信者は鏡に映る白い仮面へ気付き、

振り返った瞬間に映像が暗転


廃墟配信者は誰もいない通路から足音が近づき、

カメラが倒れた。


コスプレ配信者はコメント欄を見て青ざめ、「誰……?」と呟いた直後に配信が切れた。


高校生配信者は画面の外へ目を向け、

小さく悲鳴を上げて映像が止まっていた。


事務所に重苦しい沈黙が流れる。


Mirageが唇を噛む。


「……全員、レイさんと同じってこと?」


Maskは静かに頷いた。


「そして、もう一つあります。」


モニターには

コメント履歴やDMの記録が表示される。


どの被害者も、

失踪する数日前から同じアカウントと接触していた。


**NoFace**


『本当の君を見せて?』


『君はまだ仮面を被っている。』


『次は、本当の姿になろう!』


『演じるのは、もう終わりだ。』


Jokerが立ち上がる。


「全部こいつじゃん……!」


Maskは画面から目を離さず続けた。


「登録者百五十万人でも、

八百人でも関係ありません。」


「NoFaceは人気ではなく、

自分なりの基準で標的を選び、

監視し、接触しているようです。」


Knightが険しい表情を浮かべる。


「最初から

狙いを決めて近づいてたってことかよ……」


「はい。」


Maskは静かに頷く。


「少なくとも

五年以上前から活動している形跡があります。」


Heroは腕を組み、

低く呟いた。


「つまり……レイは偶然狙われたわけじゃなくて

最初から、標的だったということか…」


湊は青ざめた顔でモニターを見つめていた。


「じゃあ……レイも、

その人たちみたいに?……」


Heroは静かに言葉を遮る。


「まだ決まったわけじゃない。」


「レイは生きている可能性がある。

大丈夫だ…

俺たちが必ず見つけ出す。」


その瞬間――。


**ピコン**


事務所に通知音が響いた。


全員のスマートフォンへ、

一斉に同じ通知が届く。


**『星宮レイ 新しい動画を公開しました』**


室内の空気が凍りつく中

湊の顔から血の気が引いた。


「そんな……嘘だろ?……」


Heroはゆっくりスマートフォンを持ち上げ、

Maskを見る。


「……Mask」


「モニターで再生してくれ。」


「犯人が、

俺たちに何を見せようとしているのか――

確かめるぞ!」




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