仮面の終幕
夕方になり
イベント終了のアナウンスが流れる中、
CKRと美月の七人は貸し倉庫街へ向かっていた。
薄暗い倉庫街には人気がなく、
遠くで電車の走る音だけが響いている。
Maskがタブレットを確認した。
「鍵番号S-214は
この先です。」
Knightが周囲を見回す。
「静かすぎるな…」
Mirageも頷く。
「なんか…歓迎されているみたいで気味が悪いわ…」
Heroは歩みを止めない。
「罠でも行くぞ!
ここまで来て引き返す理由はない。」
美月は小さく息を吸った。
「……お兄ちゃん」
Dollがそっと肩を抱く。
「もう少しだからね…」
やがて、
一つの倉庫の前へたどり着く。
扉には『S-214』のプレートが付けられていた。
Heroは美月から受け取った鍵を差し込んだ。
カチリ――
静かな音と共に、
扉が開く。
中は薄暗く、
照明が一つだけ灯っている。
部屋の壁一面には、
額縁に入れられた無数の写真が入っており
失踪した
人気男性コスプレイヤーたちの
笑顔の写真ばかりある。
イベントで撮られた一枚や
何気ないオフショットなど
その全てが丁寧に飾られていた。
「……」
誰も言葉を失う。
美月は震える声で呟いた。
「お兄ちゃん……」
部屋の一番奥
そこには天宮奏斗の写真が何十枚も飾られていた。
Jokerは苦い表情を浮かべる。
「本当にコレクションにしてたんだな…」
Mirageが静かに言う。
「愛情じゃないわ…
これは…執着よ」
その時だった。
パチンと
部屋の照明が一斉に点灯する。
「ようこそ」
奥から、
あの女性が姿を現した。
今日は白いワンピースでもコスプレ衣装でもない。
飾り気のない黒い服で
仮面もウィッグも外した素顔だった。
穏やかな笑みを浮かべ、
アルバムを胸に抱いている。
「来てくれて嬉しいわCKR」
Heroは一歩前へ出た。
「天宮奏斗はどこだ?」
女性は首を傾げる。
「そんなに急がないで…
ちゃんと生きているわよ♪」
美月が叫ぶ。
「返してください!」
女性は悲しそうに微笑んだ。
「いやよ!
返したら…
また誰かに取られてしまうでしょう?」
「人気者はみんなそう…
ファンも、SNSも、仕事も同じ…
誰のものでもなくなってしまう。」
「だから私が守るのよ!」
Knightが低く言う。
「監禁を守るとは言わない!」
女性は静かに首を振った。
「違う!
私は居場所をあげてるだけ!」
Maskが一歩踏み出した。
「失踪した五人も…
全員ここにいたんですね…」
女性は頷いた。
「みんな優しかったわ♡
最初は逃げようとしたけど…
最後は笑ってくれた。」
「……それは、お前がそう思い込んでいるだけだ!」
Heroの声は静かだった。
「人は所有物じゃない!」
「仮面も衣装も
本人が選ぶから意味があるんだ!」
その言葉に、
女性の笑みが初めて揺らぐ。
「違う……」
「違う!」
アルバムを強く抱き締める。
「私は間違ってない!」
突然、
非常ベルが鳴り響いた。
倉庫の奥に隠されていた扉が自動で開く。
「Hero!」
Dollが指差すと
その奥には、
小さな生活スペースがあった。
ベッドに机
そして
大量のコスプレ衣装。
そして――
「美月……!」
聞き覚えのある声
「お兄ちゃん!」
そこには、
少し痩せてはいたものの無事な奏斗がいた。
「奏斗さん!」
JokerとKnightが駆け寄り、
拘束を解く。
兄妹は強く抱き締め合った。
「ごめん……
怖かったよな?」
美月は涙を流しながら何度も頷いた。
その隙を見て、
女性は裏口へ走り出す。
「逃がすか!」
Knightが追おうとすると
Heroが手を上げた。
「俺が行く。」
倉庫の外
夕日が街を赤く染める。
女性は行き止まりで立ち止まった。
Heroがゆっくり歩み寄る。
「終わりだ。」
女性は笑った。
「終わらないわ…
また美しい人は現れる。」
Heroは首を横に振る。
「だから、お前は誰とも向き合えなかったんだな…
写真だけを見るだけで
本人を全く見ようとしなかっただろ?」
女性は言葉を失う。
その時、
遠くからサイレンが近付いてきた。
Maskが匿名で通報していたのだ。
女性はゆっくりアルバムを見つめる。
そして、
自ら地面へ置いた。
「……私の負けね…」
警察車両が到着し、
女性は抵抗することなく身柄を確保された。
事件は終わった。
数日後
失踪していた男性コスプレイヤーたちは
全員無事に保護された。
心には深い傷を負っていたが、
それぞれ家族の元へ帰ることができた。
CKRの事務所で
奏斗は深く頭を下げる。
「ありがとうございました。」
Heroは穏やかに答えた。
「礼はいらない。」
Jokerが笑う。
「でも、今度イベントで会ったら写真撮ってね?」
奏斗は思わず笑った。
「もちろんです!」
Dollが美月へ温かい紅茶を差し出すのを見た
Mirageは事件資料を静かに閉じる。
Knightは
「これで一件落着だな」と息をつく。
Maskの端末が、
小さく通知音を鳴らした。
ピロン
全員の視線が集まる。
Maskは画面を見て、
小さく笑う。
「……また匿名相談ですね…」
Heroは立ち上がる。
「内容は?」
Maskは静かに読み上げた。
「『どうか、私の話を聞いてください』」
Heroは五人を見渡し、
静かに頷く。
「行こう。」
六人は壁に掛けられた仮面を手に取る。
人は誰でも仮面を被って生きている。
だからこそ、
その仮面の向こうで助けを求める声がある限り――
CKRは、
今日も静かに動き出すのだった。




