白いカードの行方
休憩室に静寂が落ちる。
机の上に残された白いカード
それだけが、
犯人が確かにここにいた証拠だった。
Heroは手袋をしたままカードを持ち上げる。
「Mask…頼む。」
「了解。」
Maskはカードを受け取り、
携帯型のライトを当てながら慎重に観察を始めた。
Jokerは部屋を見回す。
「本当に何もないね?
生活感ゼロって感じだね…」
Knightは非常口を開けると
廊下には誰もいない。
「逃げ足も速いな…
数十秒の差だ。」
Mirageは机の表面へ視線を落とした。
「……待って!これ………」
机には薄く白い粉が残っていた。
Maskが綿棒で採取する。
「特殊メイク用のフェイスパウダーですね?
市販品ではありません。」
「少量ですが、ラメが混ざっています。」
Dollは辺りを見回す。
「変装するために
メイクを直しをしてから逃げたのね?」
Heroは小さく頷いた。
「やはり、会場内で姿を変え続けているんだな…」
その時だった。
「Hero」
美月が部屋の隅を指差した。
「これ……」
全員が振り向くと
床に、
小さな花びらが一枚落ちていた。
白く細長い花弁を
Mirageが拾い上げる。
「造花?」
Maskが首を振る。
「違います。
これ…本物の花です。」
「でも、
このイベント会場に使われている装飾には
ありません。」
Heroが尋ねる。
「何の花だ?」
Maskは写真を撮り、
すぐ検索を始める。
数秒後
「ユリですね…
正確には、カサブランカです。」
Mirageが静かに呟く。
「白いユリ……たしか
花言葉は"純粋"」
Jokerは苦笑した。
「全然純粋じゃないけどね?」
その空気を破るように、
Maskが再び口を開いた。
「もう一つはカードです。」
「何か分かったか?」
Heroが尋ねると
Maskはカードを裏返した。
ライトを当てると、
紙の表面にうっすらと浮かび上がる模様があった。
「透かし……で
紙の製造会社が入っています。」
Knightが身を乗り出す。
「追えるのか?
この紙は一般流通していません。」
「この素材は主に
舞台用の招待状や高級写真集に使われる特注品です。」
Mirageの表情が変わる。
「写真集……」
Dollも気付く。
「コレクション」
Maskは頷いた。
「発注先を調べれば、
購入者が分かるかもしれません。」
Heroは静かに笑った。
「ようやく尻尾を掴めそうだな?」
その時だった。
「失礼します!」
イベントスタッフの女性が部屋へ駆け込んできた。
「皆さん、こちらにいましたか!」
Heroが振り向く。
「何かあったのか?」
「忘れ物が届いたんです!」
スタッフは封筒を差し出す。
「さっき受付に置かれていました。」
「『KANAさんのご家族へ』って」
美月の表情が強張る。
「私に……?」
Heroは慎重に封筒を開いた。
中には一枚の写真と
そして、小さな鍵。
写真には奏斗が写っていた。
今度は目を開いていて
カメラへ向かって穏やかに笑っていたが、
その表情はどこか虚ろだった。
「お兄ちゃん……」
美月の目から涙がこぼれる。
写真の裏には短く書かれていた。
『元気です。心配しないでください』
Heroは首を横に振る。
「本人の字じゃない…」
Maskも確認する。
「筆跡が違いますね…
無理に安心させようとしている。」
その横で、Knightが小さな鍵を見つめていた。
「これは何の鍵だ?」
Jokerが受け取る。
「ロッカーじゃない?」
Maskは鍵の刻印を確認する。
「駅ではありませんよ?
貸し倉庫の鍵です。」
「貸し倉庫?」
Mirageが息を呑むと
Maskは鍵に刻まれた番号を読み上げた。
「S-214。」
「市内にあるレンタルストレージ会社の
管理番号と一致しました。」
Heroの目が鋭く光る。
「犯人がわざと置いていった可能性は?」
「十分あります。」
Maskは頷く。
「これは…罠かもしれません。」
Knightが拳を鳴らした。
「それでも行くしかない。」
Dollは美月の手を握る。
「怖い?」
美月は涙を拭き、
小さく微笑んだ。
「……怖いです。」
「でも…
兄に近づけるなら
私は逃げません。」
Heroは静かに頷いた。
「よし
イベント終了後、全員で貸し倉庫へ向かう。」
「ここから先は、本当の勝負だ。」
その頃――
誰もいないビルの一室
モニターには、
休憩室で動くCKRの姿が映し出されていた。
白い服の女性はソファに腰掛け、
画面を見つめながら満足そうに微笑む。
「来てくれるのね♪」
その腕の中には、黒いアルバム
最後の空白のページを優しく撫でる。
「あと一人♪
あと一人で完成する。」
その視線は、
画面の中で笑顔を見せるJokerへ
静かに向けられていた。




