選ばれる者
メインステージ前
コンテスト開始十分前
ステージを囲むように、
多くのレイヤーや観客が集まっていた。
スポットライトが点灯し、
司会者がリハーサルを始めている。
「人が多すぎる……」
Knightが周囲を見渡した。
「これじゃ犯人を見つけても追えない。」
Mirageも頷く。
「向こうもそれを分かって、
この場所を選んだのね?」
Heroはステージ全体を見回した。
「Mask
監視カメラは?」
「確認済みです。」
Maskはタブレットを操作する。
「この会場だけで二十八台
ただし、人混みが多く死角もあります。」
Jokerは苦笑した。
「完璧ってわけじゃないか…」
「ええ…」
Maskは頷く。
「でも、一つだけ気になることがあります。」
全員がMaskを見る。
「会場へ入ってから現在まで
白い女性は、
一度も同じ服装で監視カメラに映っていません。」
「全部違う姿です。」
Dollが驚く。
「そんなこと……」
Mirageは静かに呟いた。
「着替えてるのは複数衣装持ってきた人だけよ?
イベントだからこそ、不自然じゃない…」
Heroは小さく息を吐く。
「レイヤーを利用して身を隠している。」
Knightが低く笑った。
「厄介な相手だ。」
その時
「キャー!」
ステージ近くで歓声が上がる。
人気レイヤーが登場したらしい。
人の流れが一気に動く。
その隙だった。
コツン
誰かがJokerの肩へ軽くぶつかった。
「すみません。」
帽子を深く被った女性
すれ違ったのは一瞬だった。
「いえ。」
Jokerも気にせず歩き出そうとした。
しかし
数歩進んだところで違和感を覚える。
「……あれ?」
首元を触る。
「通信機がない!」
「何?」
Heroが振り返ると
Jokerは慌ててポケットを探す。
「さっきまであったのに!
帽子を深くかぶった女に盗られた!」
Knightの表情が変わる。
「さっきぶつかった女か!」
Heroが即座に指示を飛ばす。
「追え!」
六人が一斉に走り出す。
しかし
帽子の女性は人混みへ紛れ込み、
姿を消した。
「くそっ!」
Jokerが立ち止まる。
その時
Maskの通信だけが切れた。
「……Hero」
「どうした?」
「通信が乗っ取られました。」
「何?」
全員が息を呑む。
次の瞬間
全員のイヤホンから、
女性の笑い声が流れた。
『ふふ……。』
静かな声だった。
優しく
穏やかで
どこか嬉しそうな声。
『はじめまして』
六人が足を止める。
『CKRの皆さん』
Jokerが歯を食いしばる。
「この声……」
Heroは冷静に問い掛けた。
「お前がSnow Whiteか?」
数秒の沈黙。
そして
『違うわよ?』
女性は優しく笑った。
『その名前は、皆が勝手につけただけ』
『私は……ただ、純粋に
大好きなものを集めているだけよ♪』
Mirageの表情が険しくなる。
「人を物みたいに言うのね?」
『だって、美しいものは残したいでしょう?』
『人気が出て
みんなに愛されて
やがて忘れられていく。』
『そんなの、かわいそうでしょう?』
女性は少し寂しそうに笑う。
『だから私は
永遠にしてあげるの♡』
沈黙。
その言葉に、
美月の顔色が変わった。
「……お兄ちゃんは?」
震える声で問い掛ける。
「兄は無事なんですか!」
女性は少しだけ笑う。
『安心して?
奏斗くんは、とてもいい子で
毎日ちゃんと写真を撮らせてくれる。』
美月の瞳に涙が浮かぶ。
「返してください!」
『まだよ?』
女性は優しく答えた。
『だって、まだ完成してないもの…』
ブツッと
通信が切れる。
静まり返る会場の中
Heroはゆっくり拳を握り締めた。
その瞳には、
静かな怒りが宿っていた。
「……必ず止めるぞ!
もう誰一人、
あいつのコレクションにはさせない…」
その言葉に、
五人も静かに頷く。
しかし彼らはまだ知らない。
このやり取りすら、
犯人が仕掛けた"遊び"の一つに過ぎないことを
そして今この瞬間も、
犯人は会場のどこかからCKRを静かに見つめ、
次の「獲物」を選んでいた。




