白いレイヤー
コスモクロスフェスタの会場は、
朝から大勢の来場者で賑わっていた。
ステージではコスプレパフォーマンスが始まり、
企業ブースには長い列ができている。
「やっぱりイベントっていいね!」
Jokerが笑顔で辺りを見回すと
すぐに数人のレイヤーから声を掛けられた。
「すいません!
一緒に写真お願いしてもいいですか?」
「もちろん!」
軽快にポーズを決めるJoker
その姿は、捜査中とは思えないほど自然だった。
「相変わらず人気ねJoker?」
Mirageが通信機越しに呟く。
『仕事だからな?』
Jokerは笑いながら返した。
『目立つのも情報収集のうちさ♪』
一方、
HeroとKnightは企業ブース周辺を歩いていた。
「奏斗さんは、
この辺りで最後に目撃されています。」
Maskの声が通信機から聞こえる。
「防犯カメラの時間は午後六時十七分…」
Heroは静かに周囲を見渡した。
「何か違和感は?」
Knightが低く答える。
「決定的なのがある…
昨日のイベント写真を見たが……」
「人気男性レイヤーの写真には、
毎回同じ女が映っている。」
Heroは足を止めた。
「特徴は?」
「帽子やウィッグで顔を変えているが、
服装だけは似ている。」
「だけど…衣装は…
白いロングコートだけが同じだった」
「白か……」
Heroは短く呟いた。
---
その頃
Dollは美月と一緒に女性更衣室近くを歩いていた。
「懐かしい?」
優しく尋ねると
美月は少しだけ笑った。
「はい!
兄と毎回来ていたので……」
その時だった。
「美月ちゃん?」
後ろから女性の声が聞こえた。
振り向くと、
一人の女性レイヤーが立っていた。
長い栗色の髪で
白いドレス姿をしていて
美月は驚いた表情を浮かべる。
「彩乃さん!」
「久しぶりね!」
彩乃と呼ばれた女性は微笑んだ。
「奏斗くんは?」
その一言で、美月の表情が曇る。
「兄は……行方不明なんです。」
彩乃の笑顔が消えた。
「え……?そうなの?
私…知らなかったの…」
Dollが静かに口を開く。
「奏斗さんと親しかったんですか?」
「はい…
イベントでよく一緒になって行動していました。」
彩乃は少し考え込む。
「そういえば……
奏斗くん…
最近、誰かに付きまとわれてた気がします。」
美月が顔を上げる。
「付きまとわれてた?」
「はい…」
「女性だったのね?」
その言葉に、
Dollの表情が変わる。
「どんな人?」
彩乃は記憶を辿るように目を閉じた。
「いつも白いウィッグを被っていて……」
「すごく綺麗な人でした…」
「でも…なんだか目が怖かった。」
「いつも…こっそり無言で
奏斗くんの写真ばかり撮ってた。」
通信機の向こうで、Heroが静かに言う。
『……今の話…もう少ししてくれ…Doll
その女性について、もっと詳しく。』
彩乃はゆっくり頷く。
「名前までは知りません…
でも、一度だけ
奏斗くんが困った顔をして言ってたんです。」
『何て?』
美月が息を呑むと
彩乃は当時の会話を思い出しながら答えた。
「『あの人、毎回イベントにいるんだよな…』
『写真を撮るだけならいいんだけど……。』
『なんか、視線が怖いんだよな…』って。」
その瞬間
Maskの声が通信機に響く。
『Hero
一件ヒットしました。』
「何だ。」
『ここ一年、
人気男性レイヤーだけを
執拗に撮影しているアカウントがあります。』
『投稿者名は……』
Maskが画面を見つめたまま、
ゆっくり読み上げる。
『"Snow White"。』
Heroの目が鋭く細められた。
「英語で白雪姫か…
Mask追えるか?」
『ええ…
ただし、このアカウント…
イベント当日にしか更新されてませんよ?』
Heroは静かに会場を見渡す。
人混みの中
無数のレイヤーたちが行き交う。
そのどこかに──
"Snow White"がいる。
そして、その人物もまた
CKRの六人を、静かに観察していた。




