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COSKILLER (コスキラー)―CKR(シクル)―  作者: 黒薔薇
男性コスプレイヤー失踪事件 
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15/54

消えたレイヤー



翌日

午前十時


CKRの事務所兼アトリエ


表向きはコスプレ衣装の制作やイベントスタッフ、

清掃業務を請け負うオフィスだ。


ミシンの並ぶ作業部屋に

壁一面に飾られたウィッグや撮影用の小道具


ここが裏社会で"CKR"と呼ばれる組織の拠点だとは、

誰も思わないだろう。


「まだかな?」


Jokerが壁時計を見上げると

Dollは湯気の立つ紅茶を六人分用意していた。


「緊張してるんじゃないかな?」


Knightが腕を組む。


「初めて裏社会に関わる人間なら当然だろ?」


Heroは窓際で外を眺めていた。


その時


コンコン…と


控えめなノックが響くと

Dollが玄関へ向かう。


「はい。」


ゆっくりと扉を開けると、

一人の少女が立っていた。


肩まで伸びた黒髪に

少し大きめのパーカーを着ているが

目元には何日も眠れていないような隈がある。


「……あの…」


震えた声で


「相談の連絡をした……

天宮美月(あまみやみつき)です。」


Dollは優しく微笑んだ。


「待ってたよ?

……どうぞ。」


美月は小さく頭を下げ、

部屋へ入る。


部屋を見渡した彼女は

少し驚いた表情を見せた。


「……コスプレスタジオ?」


Jokerが笑う。


「一応ね?

仕事場でもあるよ♪」


Mirageが椅子を引いた。


「座って」


美月は恐る恐る腰を下ろすと

Heroも向かいに座った。


「Heroだ。

今日は話を聞かせてほしい。」


美月は静かに頷いた。


「はい……」


Maskがノートパソコンを開く。


「依頼内容を確認します。」


画面に表示される文字


依頼人 

天宮美月(あまみやみつき) 十九歳


捜索対象者 

天宮奏斗(あまみやかなと) 二十四歳


Maskが顔を上げる。


「失踪したのは、お兄さんですね?」


「はい。」


「名前は?」


「天宮奏斗(あまみやかなと)」


少しだけ誇らしそうに笑う。


「コスプレイヤーです。」


Jokerが反応した。


「やっぱり…どれくらい有名?」


美月はスマートフォンを取り出す。


画面に映るのは、

一人の青年で

銀髪のウィッグを被り、

大剣を担いで笑っている。


別の写真では、スーツ姿だったり

また別の写真では、和装だったり

どのキャラクターも完成度が高い。


「コスプレネームは"KANA"(かな)で

フォロワーは二十万人くらい。」


Mirageが画面を見ながら呟く。


「知ってるわ…」


全員がMirageを見る。


「去年の大型イベントで

最優秀コスプレイヤー賞受賞した人よね?」


Knightも思い出したように頷く。


「確かに見たことがある。」


Jokerが口笛を吹く。


「人気者じゃん!」


美月は嬉しそうに笑った。


「兄は……

コスプレが大好きなんです。」


「子どもの頃からずっと…」


その笑顔は、すぐに曇る。


「でも……三日前から

イベントへ行ったまま帰ってきません。」


部屋が静まり返ると

Heroが静かに尋ねた。


「最後に連絡があったのは…いつ?」


「午後六時二十分です。

『今から帰る』って連絡してきて…

それだけです。」


Maskが入力する。


「スマートフォンは?」


「電源が切れているようで…

電話に出ません。」


「財布は?」


「家にあります。」


Knightが眉をひそめる。


「財布を置いて失踪?

それは…不自然だな…」


Mirageが続ける。


「恋人は?」


「いません」


「借金は?」


「ありません」


Dollが優しく聞く。


「最近、悩んでいる様子は?」


美月は首を横に振る。


「最初は何も……」


言いかけて止まるのを見て

Heroが気付く。


「何か思い出したか?」


美月は少し迷ったあと、

小さく頷いた。


「兄が…

イベントの前の日に言ってたんです。」


全員が耳を傾ける。


「最近……」


美月はゆっくり思い出すように話し始めた。


「コスプレ仲間が何人も急に姿を消してるって…」


沈黙。


「引退したって噂だけ流れて…

誰とも連絡が取れなくなるって…」


Jokerの笑顔が消えた。


「……何人め?」


「兄が知ってるだけで…」


美月は震える声で答えた。


「五人は…そうなってます。」


部屋の空気が一変すると

Maskの指が止まった。


「……待て?」


キーボードを叩く音だけが響く。


数十秒後

Maskがゆっくり顔を上げた。


「美月さん…」


「はい。」


「その話…」


そう言いながらMaskが

画面を全員へ向けると


そこには、

ここ一年で活動を停止した

人気コスプレイヤーたちの一覧が表示されていて

全員に共通する点が一つだけあった。


『イベントの帰りに行方不明になる』


それを見て

Heroの目が鋭くなる。


「偶然じゃない。」


誰も否定しなかった。


事件は、一人の失踪ではなく


人気コスプレイヤーばかりを狙う、

何者かがいるのを

六人はまだ知らない。


この事件が、

CKR結成以来最大の敵と

対峙する始まりになることを。


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