表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現実世界にダンジョンが現れたが、俺は誰にも従わない【長話版】  作者: HATENA 
第六部「上位判定」

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/15

第十一章「上位判定」

 「……次は“上”だな」


 そう口にした瞬間、空気が止まった。

 さっきまでの現実の浅さすら、そこで一枚剥がされたように感じた。

 風が止んだわけじゃない。


 「……っ?」


 何もしていない。


 だが、確かに変わる。


 「……違うな」


 感覚。空間の手触り。


 それら全部が、どこかへ“引かれて”いく。

 レオンが低く告げた。


 「……来るぞ」


 次の瞬間。


 空が、音もなく“開いた”。


 「……またか」


 神崎が顔をしかめる。

 だが、在真はすぐに首を振った。


 「……違う」


 今まで見てきた裂け目とは質が違う。


 「……軽すぎる」


 圧がない。存在感もない。なのに、皮膚の下だけが先に反応していた。


 「……いるな」


 そこに“何か”がいると分かる。

 神崎が眉をひそめる。


 「……なんも感じねぇぞ」


 「……だろうな」


 在真は目を細めた。


 「……下じゃない」


 「……上だ」


 その瞬間、“それ”が降りてきた。


 ゆっくり。静かに。人の形に見える。


 だが、見えるだけだ。


 「……人か?」


 神崎の声にも自信がない。

 在真は即座に否定した。


 「……違うな」


 存在が薄い。


 いや、薄いんじゃない。

 薄く見せているだけで、その裏に重なりがある。


 「……重ねてるな」


 複数。


 同時に存在している。


 神崎が固まる。


 「……は?」


 「……なんだよそれ」


 “それ”がこちらを見る。

 「……次元が違うな」


 レオンが初めて、はっきりと構えた。


 「……危険だ」


 だが——。


 「……いい」


 在真は口元だけで笑う。


 「……上が来たな」


 “それ”が口を開く。


 音はない。


 それでも意味だけが、直接頭の奥に流れ込んできた。


 『観測』


 静寂。


 「……観測か」


 短く返す。


 『異常個体確認』


 「……俺か」


 その言葉に肯定も否定もない。

 ただ、事実として置かれるだけの冷たさがあった。

 “それ”がわずかに動く。


 次の瞬間、空間が消えた。


 「……っ!?」


 何もない。

 “無”と呼ぶしかない場所で、呼吸の形だけが遅れて残った。


 神崎の声が遠くで歪む。


 「……やばいな」


 レオンの気配も急速に薄れる。


 「……切り離されたか」


 残ったのは、“それ”と在真だけ。

 隔離されたのだと、体の奥が先に分かった。

 だが、在真は剣を構える。


 「……いいな」


 ようやく向こうも、余計なものを挟まず直接来る気になった。


 「……上、か」


 “それ”が、もう一度こちらを見る。


 『排除判定開始』


 静かに、そう告げた。


 静寂。何もない空間。音もない。重さもない。


 前後左右の意味すら薄い。

 立っている感覚だけが、かろうじて自分の中に残っていた。

 少しでも気を抜くと、その感覚ごとほどけそうだった。


 「……切り離されたな」


 周囲を見る。


 だが、見るという行為自体にあまり意味がない。


 「……意味ねぇな」


 空間そのものが存在しない。

 立っているという感覚だけを、自分で辛うじて維持している。


 「……ここは」


 「……場じゃない」


 その瞬間、“それ”が動いた。


 だが——。


 「……見えねぇ」


 動きがない。変化も見えない。


 それでも、体の奥だけが先に反応した。


 「……来てる」


 回避。


 だが、その時点では何も起こらない。


 「……遅い?」


 違う。

 次の瞬間、——ドンッ。


 遅れて衝撃が来た。

 何もないはずの場所で、骨の内側だけがあとから殴られる。

 順番をずらされるのが気味悪い。


 「……時間ズレか」


 「……殴るより先に、消されるほうが面倒だな」


 流れ。ズレ。


 何もない空間の中で、ひとつだけ異物のように浮くタイミングがある。


 「……判定より先に動く」


 踏み込む。


 「——斬る!」


 ——スッ。当たらない。刃は空を切った。


 「……噛み合ってねぇな」


 “それ”がわずかに揺れる。


 『適応確認』


 「……だろうな」


 在真は息を吐く。


 「……じゃあ、外れる」


 踏み込む。


 時間のズレに合わせる。


 ほんの少し前。


 未来視で拾った断片へ、今の自分を重ねる。

 向こうの順番に入るんじゃない。判定の枠から半歩だけ外れたまま触りに行く。


 「……今だ」


 剣を振る。——ガキンッ。初めての衝突。


 乾いた手応えが、何もない空間に確かに残った。


 「……乗らなかったな」


 “それ”が止まる。


 一瞬だけ。


 『異常』


 その言葉と同時に、領域の質が変わる。


 「……次か」


 今度は“重さ”が戻った。

 だが普通の重力じゃない。

 骨の内側にまで沈み込んでくるような、異常に濃い圧だった。

 肩も膝も重いのに、それ以上に名前のついた自分が沈んでいく感じが嫌だった。


 「……重すぎるな」


 体が沈む。


 それでも膝はつかない。


 「……変えてくるな」


 “それ”がこちらを見る。


 『排除継続』


 「……鬱陶しい」


 口元だけで笑う。


 「……まだ落としきれねぇだろ」


 踏み込む。重さの中。


 筋肉じゃなく、存在の輪郭ごと押し上げる感覚で前へ出る。

 普通に踏ん張っているのに、別の場所で自分を持ち上げ直している感じがした。


 「……動けるな」


 問題ない。


 「——斬る!」


 ——ガキンッ!!


 再び衝突。今度は深い。


 さっきより確かに届いている。


 「……通るな」


 “それ”が初めて、わずかに下がった。

 倒したわけじゃない。

 こっちを、排除するだけの対象ではなく見直しただけだ。

 勝った感触じゃない。

 ようやく判定の外へ片足だけ出せた感じが残る。


 静寂。


 『……上昇確認』


 その言葉に、在真は短く息を吐く。


 「……ああ」


 口元だけで笑う。


 「……まだ入口だな」


 「……ここからだ」


 踏み込む。重力と時間、それに空間の手触り。


 判定領域の手触りが、今度は全部同時に変わる。


 「……全部来るな」


 “それ”が動く。見えない。


 だが、もうそれは欠点じゃなかった。


 「……分かる」


 未来視。感覚。


 その全部をまとめて使う。


 回避。——ドンッ。


 衝撃が遅れて来る。

 今度はさらに深い。

 時間がずれているだけじゃなく、存在の乗り方そのものが違う。


 「……合わせる」


 ズレに。時間に。


 向こうが基準にしているルール、その縁に。


 「……そこだ」


 踏み込む。


 「——斬る!」


 ——ガキンッ!!


 深い衝突。


 前より明らかに手応えが違う。


 「……入るな」


 “それ”が初めて大きく揺れた。


 『……異常増大』


 「……だろうな」


 在真は口元だけで笑う。


 「……届いてる」


 その瞬間、“それ”の気配が変わった。


 さらに上。


 判定を、もう一枚剥がしてくるような冷たさ。


 「……来るぞ」


 次の瞬間、空間が消えた。


 「……っ?」


 何もない。

 無、としか言えない。


 だが、それでも“それ”と自分が向き合っていることだけは分かる。


 「……存在だけか」


 残っているのは、そこに在るという事実だけ。

 “それ”が告げる。


 『最終判定』


 「……気味悪いな」


 息が漏れる。


 「……やるだけだ」


 踏み込む。


 だが、距離がない。


 位置もない。


 前へ出るという表現すら、もう半分くらい間違っている。


 「……形がねぇな」


 「……なら」


 剣を構える。


 「……こっちも、きれいには収まらねぇ」


 領域を広げる。さらに上へ。幸運。空間の手触り。時間。


 ここまで自分の中へ積んできたもの全部を、切り分けずに重ねる。

 勝つためじゃない。向こうの判定にきれいに収まらない形を作るために。


 「……混ぜる」


 「——斬る!」


 ——ガキィィィンッ!!


 正面からぶつかった。


 何もないはずの場所で、世界が一度だけ震えた気がした。


 「……ずれたな」


 “それ”が止まる。


 一瞬。


 『……同格認定』


 静寂。


 「……そうか」


 息を吐く。


 「……通っただけだな」


 “それ”がわずかに頷く。


 『排除中止』


 その瞬間、空間が戻った。


 重さ。音。


 判定領域の硬い静けさが少しずつほどけていく。


 「……止まったか」


 “それ”が言う。


 『資格取得』


 「……資格か」


 短く息を吐く。


 「……まだ人間側に戻れるか、怪しいな」


 音はない。


 だが、その言葉が落ちた瞬間、確実に何かが“変わる”。


 「……っ」


 感覚と視界、認識の幅。


 全部が一度に押し広げられる。


 「……見えるな」


 世界。いや——。


 「……裏か」


 空間の裏側にある流れが、皮膚の奥へ薄く触れてくる。


 今までただそこにあると思っていたものが、何枚も重なって見えた。


 「……見えすぎるな」


 “それ”が静かに立つ。


 『認識更新完了』


 「……そうか」


 軽く息を吐く。


 今までとの違いが、言葉にするより先に体へ入り込んでくる。


 「……触れるな」


 『干渉可能範囲解放』


 その瞬間、世界が“開く”。


 基地も、都市も、ダンジョンも。


 遠く離れているはずのものが、距離を失って同時に視界へ入ってくる。


 「……やりすぎだな」


 口元だけで笑う。


 「……全部触れる」


 “それ”が続ける。


 『制限あり』


 「……だろうな」


 その時だった。


 広がった視界の中に、ひとつだけ明らかな違和感が走る。


 「……なんだ」


 意識が細く引かれる。

 世界の外、さらにその外へ、視線だけが先に届きそうになる。


 今触れられる範囲より、もう一段遠い場所。


 「……まだ上があるな」


 “それ”がわずかに反応した。


 『未到達領域』


 「ああ」


 「……行く」


 迷いはない。


 “それ”が最後に告げる。


 『危険度:極大』


 「……いい」


 息だけで笑う。


 「……関係ねぇ」


 視線を上へ向ける。


 世界の外。さらに外。


 「……次だな」


 その時、視界が戻った。

 戻ったはずなのに、音だけが少し遅れて耳へ入ってくる。


 現実に戻る。

 基地があり、神崎とレオンがいる。


 「……戻ったか」

 人の声が一気に戻ってくる。

 だが、少し遠い。


 神崎がすぐ駆け寄る。


 「おい、大丈夫か!」


 「……問題ねぇ」


 レオンが静かにこちらを見る。


 「……変わったな」


 「……ああ」


 短く返す。


 「……見える」


 見えている景色の裏側に、まだ別の流れが貼りついている。

 それが目ではなく、皮膚の奥に引っかかった。

 神崎が苦笑する。


 「……もう人じゃねぇな」


 「……どうだろうな」


 口元だけで笑う。


 「……まだ上がある」


 視線を上へ向ける。


 世界の外、さらにその外。


 「……行く」


 意識を向ける。

 その瞬間、空間が“開く”。


 「……っ」


 裂け目ではない。もっと滑らかに。もっと自然に。


 まるで最初からそこへ繋がる道があって、自分が今ようやく見つけただけみたいに。


 「……繋がってるな」


 神崎が顔をしかめる。


 「おい、それ……」


 「……ああ」


 短く答える。


 「……上だ」


 レオンが静かに言う。


 「……戻れる保証はない」


 「……だろうな」


 「……関係ねぇ」


 踏み出そうとした時、ガルが当然のように隣へ並んだ。


 何も言わない。


 ただ、行くなら一緒だという顔だけをしている。

 神崎が舌打ちした。


 「……ほんと行くのかよ」


 「……来るか?」


 軽く聞く。


 神崎は一瞬だけ呆れた顔をして、それから笑った。


 「行くに決まってんだろ」


 レオンも小さく頷く。


 「……同行する」


 「……悪くねぇな」


 在真はそのまま踏み込んだ。


 世界の外へ。


 次の瞬間、視界が消える。


 音が消える。存在が薄れる。


 「……っ」


 感覚が抜ける。


 足場も呼吸も、自分の輪郭さえ曖昧になる。


 「……これ」


 「……やばいな」


 神崎の声も少しだけ掠れる。


 それでも——。


 「……問題ねぇ」


 在真は意識を固定する。

 ここで薄れて消えるなら、それまでだ。

 だが、消える気はなかった。

 次の瞬間、視界が戻る。

 戻った瞬間、胸の奥にあった冷えだけがまだ消えなかった。


 「……ここは」


 何もない。


 だが、それだけじゃない。


 「……違うな」


 “世界”じゃない。


 空間ですらない。


 「……層か」


 何かが何重にも重なっている。


 複数。同時に。


 「……見えるな」


 無数の世界。


 「……やりすぎだな」


 息が漏れた。


 その時、“気配”が来た。


 「……来るな」


 前方。何もない。だが——。


 「……いる」


 確実に。神崎が低く言う。


 「……これ、さっきのよりヤバいぞ」


 レオンも構えた。


 「……上位だ」


 その瞬間、“それ”が現れる。


 形はない。


 だが、在真は息を吐いた。


 「……重いな」


 存在そのものが違う。

 そこにあるだけで、こちらの輪郭を圧し潰してくる。


 「……いい」


 口元だけで笑う。


 「……上、か」


 “それ”がこちらを見る。

 その瞬間、すべてが止まった。


 思考すら。


 『侵入確認』

 その言葉が落ちる前から、こちらの輪郭を測られている感じがあった。


 意味だけが、直接流れ込む。


 「……ああ」


 短く返す。


 「……来た」


 剣を構える。


 静寂。何もない。だが——。


 「……全部あるな」


 空間の手触りと、時間と、輪郭。


 「……来るぞ」


 前方の“それ”。形はない。


 だが、その存在自体が圧になっていた。

 神崎が歯を食いしばる。


 「……息が重い」


 レオンが低く言う。


 「……干渉されている」


 「……だろうな」


 だが——。


 「……関係ねぇ」


 踏み込む。

 その瞬間、消える。


 「……っ?」


 視界が飛ぶ。存在が抜ける。


 自分という形が、一瞬だけ抜き取られたみたいな感覚だった。


 「……消されたか」


 だが、すぐに戻る。


 「……戻る」


 意識を固定する。


 自分が自分である場所へ、無理やり噛みつく。


 次の瞬間、復帰。


 「……効くな」


 「……でも、消えねぇ」


 “それ”がわずかに反応する。


 『保持確認』


 「……そうだ」


 在真は息を吐く。


 「……消えねぇ」


 踏み込む。距離がない。


 だが、ここまで来るとそんなことは問題にもならない。


 「……邪魔だな」


 斬る。


 「——斬る!」


 ——何も起きない。


 手応えがない。


 「……当たらねぇな」


 “それ”が動く。


 動きがないのに、確実に来ている。


 「……来てる」


 回避。——遅れて衝撃。


 さらに、在真の存在の端がわずかに削られた。


 「……時間ズレか」


 「……削ってくるな」


 神崎が叫ぶ。


 「これヤバいぞ! お前、輪郭薄れてる!」


 レオンが前に出る。


 「……触れるな」


 「……ああ」


 「……触れる」


 踏み込む。時間のズレ。存在の層。


 今見えているズレを、息ごと拾う。


 「……そこだ」


 剣を振る。——ガキンッ。初めての衝突。


 かすかながら、確実に相手へ届いた。


 「……触れたな」


 “それ”が揺れる。


 『干渉確認』


 「……だろうな」


 口元だけで笑う。


 「……まだいける」


 その瞬間、“それ”の気配が変わる。


 さらに上。


 今までよりも、もっと濃く、もっと深い圧。


 「……来るぞ」


 「……重いな」


 剣を構える。


 「……逃がさねぇ」


 「……全部来い」


 踏み込む。


 “それ”の圧が上がる。


 空間が歪む。時間がズレる。存在が薄れる。

 輪郭の端から、自分の形だけ先にこぼれていく。

 腕を上げたつもりなのに、感覚だけが少し遅れて戻ってくる。

 握っているはずの剣の重さも、一瞬だけ遠い。


 「……来るぞ」


 何も見えない。だが——。


 「……分かる」


 回避。——遅れて衝撃。


 それだけじゃない。

 在真の腕の輪郭が、わずかに薄くなっていた。

 見えているのに、そこに自分の腕がある実感だけが遅れる。

 指を動かす。動く。

 だが、自分のものだと感じるまでに変な間があった。


 「……削られてるな」


 「……これか」


 「……存在ごと削る」


 神崎が叫ぶ。


 「おい! それヤバいぞ!」


 レオンが低く言った。


 「……侵食だ」


 「……なるほどな」


 在真は口元だけで笑う。


 「……気味悪いな」


 踏み込む。


 「……削るなら」


 剣を構える。


 「……こっちもだ」


 斬る。


 「——斬る!」


 ——ガキンッ!!


 衝突。今度は違う。


 在真の刃が、“それ”の側の輪郭をわずかに削っていた。


 「……削れてるな」


 “それ”の一部が、薄く消える。


 『侵食確認』


 「……そうだ」


 息を吐く。


 「……なら通る」


 「……なら」


 踏み込む。


 「……速さ上げる」


 連続。


 呼吸も、未来視も、領域も、全部を一段上げる。


 「……重ねる」


 ——ガキンッ、ガキンッ、ガキンッ!!


 “それ”が揺れる。

 だが、次の瞬間、空間が閉じた。


 「……っ」


 動けない。


 見えない檻じゃない。

 前へ出るという結果だけを、途中で固定された感覚だった。

 足を出したつもりなのに、踏み込んだ先だけが消えている。

 体は前へ行こうとしているのに、結果だけがそこへ届かない。


 「……固定か」


 そのまま、存在が削られる。

 痛みというより、自分の端から順番に欠けていく寒気だった。

 指先から先に、自分じゃないものへ変えられていくみたいで嫌だった。


 「……来るな」


 だが——。


 「……遅い」


 無理やり動く。


 閉じた空間を、領域で押し割る。


 「——斬る!」


 ——バキィッ!!


 今度は大きく入った。


 「……入ったな」


 “それ”が初めてはっきり揺れる。


 『……異常』


 静寂。

 在真は息を吐く。


 「……効いてる」


 その瞬間、“それ”の気配がさらに変わった。

 神崎が顔をしかめる。


 「これ終わり見えねぇぞ!」


 レオンは首を横に振る。


 「……違う」


 「……変わる」


 “それ”が形を変える。

 今までより明確に。

 曖昧に重なっていたものが、ひとつの在り方へ収束し始める。

 空気の噛みつき方が変わる。

 次はもっと近いところから来る。

 そう分かるより先に、肌が嫌がった。


 「……出るな」


 まだ奥へ変わる。


 「……まだあるか」


 剣を構える。


 「……ここからだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ