55 エピローグ
この章で本編は一区切りを迎えます。
ここから先のお話は、これまでに散りばめてきた伏線を回収しつつ、ルシオたちのその後を短編で書き上げます
宜しければ、そちらも読んで頂けるとありがたいです。
今日もルシオはテセロを連れ歩く。
あの日以来テセロもルシオから離れなくなった。
テセロの心の傷はどれくらい深いだろう――それはもう少し様子を見なければハッキリしない。
今日は、ソフィアの魔法学校の手伝いだ。
講義を一つ受け持っているルシオは定期的に教師として教壇に立っているがそれほど頻繁というわけでもない。
テセロを育てる上で、負担にならない程度だ。
ルシオが受け持つのは錬金術だ。
ルシオの他にも講義をしている魔導師がいるので、ルシオの担当は一ヶ月に二度ほどだ。
主にルシオが開発した魔道具に対しての理解を深めてもらう講義なので、希望者だけに講義をしている。
女性で錬金術に興味がある人は多くないようだった。
ソフィアは、魔法教育の制度を革新した。
まずは入学資格だが、魔力さえあれば入学出来る。初等科では文字を習わせ、文字が分かる者はすぐに進級させ、組分けをする。
魔力ごとに卒業課題が出され、終われば卒業できる。
その後仕事に就くことになるのだが、まだ職場の受け入れは十分整ってはいない。今後の課題だろう。
魔力が大きい者は必然的に上のクラスに進めるが、あくまで希望者のみだ。
その後、魔力が大きい者は、魔導師候補として仕分けられ、一気に光と闇の魔法を習わせる。
そして、魔導師になりたい者だけが、ブルホ大神殿へ赴き、大魔水晶の選別を受ける。
魔導師になりたくない者は、治癒院で治癒師となりそのまま就職できるのだ。
これは、ソフィアが言ったことだが、
「魔導師は忙しすぎる。神の仕事を受入れる者だけに選別の儀式をさせればいい」
ということだそうだ。
確かに、魔導師になってしまえば、錬金魔導師以外は各地に振り分けられ自由がなくなる。選べるならそうした方がいいだろう。
以前の魔導師達の殆どが、幼い内に売られてブルホで教育を受けたため、自分の希望は通らなかった。
これからは自分で神の選別を受ける、という選択をするのだそうだ。
魔法学校も、もう手を入れる必要が無くなったソフィアは、心に余裕ができつつあるようだ。
★
ルシオとテセロは、ブルホ大神殿へ来ていた。
神殿長に、今回の事を報告しなければならない。
「おや、テセロ君、少し大きくなりましたね、元気でしたか?」
優しく神殿長から声を掛けられテセロは、はにかむ。
「神殿長、折り入って報告があります」
「ふむ。テセロ君は、この叔父ちゃまと一緒にいて貰ってもいいかな?」
「……ウン」
テセロが、下位神官に連れて行かれ、ルシオは神殿長の異空間へと招き入れられた。
長々としたルシオの話が漸く終わり、神殿長は感慨深げにルシオを見つめた。
ここには、呼び出されて同席していたパブロ魔導師とミゲル魔導師の姿もある。
「相変わらず、お前は問題ごとに突っ込む……体質なのか?」
「好きで突っ込んではいません」
ムッとした表情で、ルシオはパブロ魔導師に答えた。
「まあまあ。しかし、本当にルシオ。下手をすれば命が危うかったのではないのか?」
「……今回ばかりは、僕も危ないかな……と思いました」
「魔法を封じる魔法。理が違う……世界は驚異に満ちておるようじゃの」
精霊という未知なる力を初めて聞き、魔導師達の中枢である彼らでさえ、心穏やかではないようだった。
ルシオは、これまで知り得た、エルフや水の民の伝承を語り聞かせた。
人族には知り得なかった”世界の真実の姿”を初めて知った、魔導師達は言葉を失った。
改めて、この世界は神が作りたもうたものだ、と再認識した。
「神は、創造者であると共に、破壊者でもあると……言うことか……」
どこかで鳴り響く鐘の音が辺りに響いた。
ここは異空間であるにもかかわらず……。




