Report69:空間を分離する結界と、作戦進捗。
作戦会議から2日。ようやく、我々は木都の所在のヒントを得た。きっかけは存外単純なことで、エルフを追跡しただけなのだが…
「本当に、ここなのですか?」
「…ああ。エルフは、ここの奥に歩いていったはずなんだが……」
そこにあるのは通常の森の様相。
エルフは、この先に進み、そして霧のように消えた。奥に見えるは世界樹。方向的に間違いはない…はずだが。進む。幾度となく進む。数時間がたっただろうか。たしかに世界樹に近づいているはずだが様相は一切変わらない。
「…これは本当に…進んでいるのかい?」
「目印をつけていますが、変化はありません。」
定期的に、森の木につけた焦げ目が後ろに続いて主張しており、確かな進路を物語っている。恐らく問題なく進んではいる…が、何かを見逃している。
「…む…何か、妙だ。何者かに見張られているような…」
フレイドが周りを見回した刹那。何もない空間から、巨石が飛来する。
「危ないっ!!」
クノムのフルスイングを受けて、巨石が砕け散り即座に陣形を取って警戒するが敵影はない。
次に飛んできたのは、水の槍。
「【水辺の女王】」
水の操作術で、槍を反転させるが、射出点をすり抜け奥の壁に当たる。
「透明…って言うわけじゃ無さそうだね。高速で回避しているのかもしれないけれど…」
「【フレイム・ギア】」
モノリスが周囲に火炎を撒き散らす。透明化にせよなんにせよ…これなら当たるはずの攻撃。結果としては手応えはない。が、陽炎に混じって見えた景色。
杖を向けるエルフと、自然に調和した住処。
こちらからは見えない、触れられない。されどそこにある。その様相を全員が捉えていた。
「ここは既に…木都の範囲内のようだね。」
「はい。熱による空間の歪みを通してのみ、観測が可能です。」
木都を結界の内側とすると内側から外側を一方的に打ち下ろせる結界。通常の結界なら有り得るだろうが、空間を分断するのではなく、2つを重ねる高度な結界でそのようなことが可能なのか。
否、事実として起きているのだから可能なんだろう。
ならそのロジック…は分かるわけもないか。
「対策や突破口分かればいいんだけどね…」
ほぼ全方位から射出される魔術をモノリスが出した多量の水を変形させ、ドームを作ることで防御する。
「ふん!!そのようなもの殴れば良いのだ!!」
「それで行けたら苦労はしない…」
フレイドがドームから飛び出し、先刻蜃気楼で景色が見えたところに拳を打ち込むと、拳は空を切り…少し、結界の向こうが見える。
「ほら見よ!!見えるぞ!」
「はしゃがない!!ハウス!」
お笑いみたいだが、理由があるはず。
クノム君のハンマーではダメ。試しに私も水の槍を振るってみるが意味はない。通ったものはモノリスちゃんの火と、フレイドの拳…
「ブレイド。君の拳って…火のエレメントはあるかい?」
「うむ!!」
「…火か。」
もしも、結界が自然のエレメントの側面や特性が強ければ…火には水。水には土。土には自然。自然には火。4すくみの法則が成り立つ。
「モノリスちゃん!!フレイド!一点突破で揺らぎを火で攻撃できるかい!?」
「無論!!」
「可能です。カウント5。4。3。2。1。」
フレイドが拳を貯め、空間を殴りつけると火のエレメントを伴う攻撃により、結界が揺らぎ、モノリスから放たれた直径10cm程の熱線がフレイドの殴り開けた揺らぎに放たれると、結界に初めて明確な穴が空く。
「拡張。円形。」
熱線が広がり、穴を拡張。人が通れる程度まで広がった穴。今なら、通れる。
「全員!穴に!」
鶴の一声。攻撃を避けながら飛び込んだ先は…
自然と完全調和した、神秘的空間。
「ここが…エルフの国。」
「侵入は察知されています。増援が来る前に隠れた方がいいかと。」
「うむ…そうであるな…」
とりあえず近くのボロ家の中に転がり込めば、外からはエルフの侵入者を探す声がチラホラと。
結局のところ侵入は過程であり、真の目的はまた別にある。
「後は過求くんの場所を探すだけだね。」
「…マスターの魔力を探知。方向は…あちらです。」
指さした先は、一際大きな巨木。世界樹。
周りには、城壁が敷かれ、家もほぼない。溢れ出した自然のエレメントは空中に緑の軌跡を描き、遠目にも国家の中枢施設および、ギアの所在であることは明白。
「あとは…どうやってあそこまで行くか。だね…」
4人の知らないタイムリミットは、刻々と迫っていた。




